偉大な哲学者 ニーチェについて | 我が名は狼 天は未来を見つめ 地は過去を見つめ 人は現在を見つめる

我が名は狼 天は未来を見つめ 地は過去を見つめ 人は現在を見つめる

詩人-我が名は狼の世界へようこそ 私は、詩を書き続けて 約15

年以上を経つでしょうか? 言葉と文字に触れ合い そして 学ぶ

ことが沢山ありました。 これからもまだまだ 言葉と文字を心で

感じながら 詩を書いていきます。 


ドイツの哲学者ニーチェは十九世紀の後半に生き、二十世紀の曙を前に没した

(1844~1900年)24歳でスイスのバーゼル大学教授となったが、教職にあったのは

わずか10年ほどで、その後は病気療養のためにヨ-ロッパ各地を旅しながら独特の著述と思索を

続けた。 

ニーチェの著作の中で最(もっと)も広くタイトルを知られているのは

「ツァラトゥストラはかく語りき」だろう。この書名を知らない人でも、

リヒャルト・シュトラウスが作曲した「ツァラトゥストラはかく語りき」の旋律は聞いているかも

知れない。この曲は 映画「二〇〇一年宇宙の旅」のテーマソングともなっている。


ニーチェは哲学者だったとは言うものの、いわゆる難解で抽象的な事柄を思案して

理論を説いた人ではなかった。 

彼は当時のキリスト教道徳をあまりにもあの世的だと批判し、この世における

真理・善・道徳こそ大切だと強く唱(とな)えた。つまり、今生きている人間のための哲学を

打ち出したのだった。


ニーチェの名が今なお世界的に知られているのは、彼の洞察力が鋭いからである。

急所を突くような鋭い視点・力強い生気・不屈の魂・高みを目指す意思が新しい名文句とも

言える短文で発せられるから、多くの人の耳と心に残るのである。

その特徴は主に短い警句と断章に発揮されている。ニーチェの哲学というか独特な思想は

カントやヘーゲルのように壮大な体系を目指してまとめあげたものではない

情熱的な文章で綴られた断片や断章が多い。

断片といえども、ニーチェの発想には魅力がある。

たとえば、「人間の肉体は大きな理性であり 精神と呼ばれているものは小さな理性なのだ」

などと述(の)べているのだ

こうゆう大胆な発想には 確かに 芸術的な魅力があるといわざるを得ないだろう。

カントのような実直な哲学者ならば、自説の理由を述べて哲学の骨子とするのだが

ニーチェはその発想をそっけなくポンと置いたままなのだ。その点で、哲学者であるよりは芸術家に

近いといえよう。

昔から、ニーチェについての流言飛語や誤解はすくないくない。ナチスの思想の土台となった

ニヒリズムの哲学を流布させた、反ユダヤ主義だった、等々。


ニーチェの思想がヒトラーやナチズムの思想に影響を与えたというのは悪質なデマだ。

ヒトラーとナチズムは自分たちの空虚さを埋めつつ虚勢を張るために、さまざまな分野の既存の

思想を勝手に曲解して取り入れることを恥じなかった。

また、ニーチェの妹がナチズムに接近して手を貸し、ハンガリーのマルクス主義哲学者ルカーチが

ニーチェをナチズムの先駆けと主張したことで誤解が大きく広まったという経緯もある。


ニーチェは反ユダヤ主義かといえば、これもそうではない。むしろ反宗教と言うべきだろう。

ニーチェは宗教の何を嫌ったのか。おしなべて宗教というものが彼岸に

すなわち神とかあの世とか無限性に道徳の尺度を求める幾度を押し付けようとするからだ。

そうではなく、もっとこの世に生きている人間の道徳が必要だとニーチェは考えたのだ。

よって、ニーチェの思想は「生の哲学」と呼ばれることになった。

ニーチェはニヒリズムの哲学者ではない。むしろ、ニヒリズムを批判したのがニーチェだった。

ニヒリズムという用語は日本語では虚無主義と訳されていることが多い。

ニヒルはラテン語で無という意味であり、絶対価値や真理などないという立場がニヒリズムだ。

現代は価値の相対化によって絶対価値がないという状態だから、ニヒリズムの時代とも言える。

しかし実際には、現代人の絶対価値は金銭と利潤である。人間はどこかに絶対価値を見出して

いないと不安で耐えられないのだ。

十九世紀までの西欧での絶対価値と真理はキリスト教道徳だった。しかしニーチェは

キリスト教道徳はありもしない価値を信じ込ませる宗教だと解釈したのだ。その道徳は

本物ではない、生きている人間のためではないと考えた。

では、近代の金銭や利潤は現代の新しい現代価値だろうか。ニーチェは、これを神の

代替物としての価値だとした。つまり、ニヒリズムから逃げるための新しいニヒリズムだと

批判したのである。

「我々は永遠の無の中を漂っているのではないだろうか」

ニーチェは「ツァラトゥストラはかく語りひき」で書いている。

また、遺稿をまとめた「力の意思」では

『今の道徳への疑いが世界を席巻するようになるだろう」と書いている。まさに現代の状況を予言

しているかのようである。

ニーチェの哲学は決して難しくない。少し読んでみれば、興奮を覚えるだろう。

ニーチェの文章が読者を興奮させるのではなく、自分の頭で考えるという生々しさに読者が

刺激とインスパイアを受けるからだ。そこにニーチェの最大の魅力がある。