まずは先日の事故で命を落とした役者さんの御冥福をお祈り申し上げます

殺陣の世界に20年いる我々にも、絶対降りかからない事はない事故だけに、身も心もいっそう引き締めて稽古、指導にあたりたいと思います

以降、このような事故を撲滅するため、一件でも少なくする為、今回の事故を考証させて頂きます

まずはニュースから

『台東区のスタジオにて、殺陣の稽古中、ある役者さんが謝って転んで、模造刀を腹に刺して、病院に搬送されたが死亡した』

というニュースだった

まず、これを聞いて怒りと、どうしようもないやるせなさがこみ上げ、口に出た言葉は
『なぜ、誰も止めなかったのか』
でした

最近の若い団体さんは指導、本番が終わると『自分達で』稽古を始めてしまう方が多い

うるさく言われるのがいやなのか、リーダーや指導者を決めず、若いノリでワイワイやりたいのか
そういう団体さんは、決まって言います

『小松さん呼ぶほどでも~』
『小松さん呼ぶなら、キチンとした金額が~』

金額気にするなら、安い金額でなんかやってません!

大事なのはキチンとした『方法論』です

その1つは『怪我をしない』事なんです

まず稽古に『模造刀』を使用していること

我々は舞台の中で『献上品』や『証拠物件』の小道具として『鉄身』を使う事があっても、殺陣に使う事はありません!

ちなみに模造刀の様な刀を我々は『鉄身』と呼びます
大衆演劇や竹光に購入のツテがない方に『ジュラ』『アルミ』と呼ばれる、ジュラルミンやアルミニウムの刀を使う場合がある
そして、高い観賞用の模造刀
当然重く、殺陣で使う事はあり得ない

もしかしたらこの中のどれかを『模造刀』と報道したのかもしれない

そこも考慮したい

なぜ、適切な小道具を『体制側』が用意しないのか

我々は竹光の所持、製作、使用、レンタルが可能なので、そういう部分でも重宝される

というか殺陣やってて、ツテがないのはあまり聞かない話です

以前、変な演出家さんが『役者に緊張感がない!鉄身を持たせろ!』
と言われた時に、猛反対したことがあります

試しに持ってみる
くらいなら結構ですが、竹光を持って『本物のように見せる』のも殺陣の技術の内、演技の内だからです

また、鉄身は明らかに『重さ』が違います
木刀や竹光と比べて、どんな人間でも軌道や、力のかかるポイントが違ってくるんです
なので『事故』が起きます

危ないから止める!
『鉄だから』という安易な事を言わない!って大事なんです!

キチンと『止める』人を置かなかったのも原因の1つでもあったのかもしれません
自分で強硬したのかも知れません

以前、稽古の休憩中、私がトイレに行ってる間に、いきなりジャンプの練習して足を折ったメンバーがいました

これも私の『責任』です

気をつけていても、事故は起きてしまう事もある
ただこの時、もっと厳しく言っておけば
そう後悔が残っただけでした

ここでニュースの第二報道が知り合い達から入った

その稽古スタジオが、以前使ったことのある場所である事
そして、故人が教え子の知り合いだった事

最後に『バク転』らしき事をした事

アクロバットの可能性も考慮した

我々も、私自身も『トンボ』という宙返りのような『やられかた』をする場合がある

しかし、鉄身を持ってやるというのはあり得ない
可能不可能ではなく、シチュエーション的に『ない』のである

これは小道具の観点からもそうなのですが、脇道に入るので、言及は避けます

この世界にいると練習でできても、再考するってくらい舞台には慎重になりますし

ただバク転では刺さる体制に疑問があった
もしかしたら別の技を『バク転のような』と説明したのかもしれない

そして、次に入って来たのは

本人は持ってなくて、バク転した故人が刀を持っている方の下に落ちてきて
という事でした

やるせなくなってきますが、なぜアクロバットという単体でも事故を起こす可能性のある状態の付近に鉄身を置いたのか



『演出家にも監督にもダメなものはダメ!』と言え!
そう言った我が師、剣友会の岡田さんの言葉が思い出される

指導者としてこういう事態を鑑み、殺陣とはアクションその物ではなく、所作を含めた全体の管理、指導を心掛けるように致します


小松雅樹 拝