26 東京での夏休み | camouflage

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いつもの通り




君は 楓 が名前だったので、ここから楓と呼ぶ。



楓は よく笑い、元気が良かった。



楓とゲーセンに行った。



楓とクイズのゲームをしてみたら、楓の方が 良い成績だった。



楓は、



「お兄ちゃん、楓に負けた」



と また笑って見せた。



僕は悔しかったが、反面喜びもあった。



楓という女性は、そういうことを受け入れきれる子だ。



楓には 何をされても許せる部分があった。



「ソウルに戻ったら、一緒に住む部屋 探してみようっと」



楓は 僕の肩に頭を寄せて甘えながら言って、僕の手を握っていた。



こんな所は、まだ少女と呼んだ方が相応しい。



楓は 甘えん坊だ。



楓は、僕に依存していたのかも知れない。



楓がソウルに行く前にバッグを整理していた。



「お兄ちゃんと離れ離れしたくない…」



楓は 淋しそうな顔をして、涙を流し始めた。



僕は 楓の傍へ行き、楓の身体に腕を回した。



楓の目からは、透明な涙が溢れていた。



僕と楓は しばらくその姿勢を崩さず、互いの身体を抱きしめたままで座っていた。




やがて楓の顔は 優しい顔になった。