
君は 楓 が名前だったので、ここから楓と呼ぶ。
楓は よく笑い、元気が良かった。
楓とゲーセンに行った。
楓とクイズのゲームをしてみたら、楓の方が 良い成績だった。
楓は、
「お兄ちゃん、楓に負けた」
と また笑って見せた。
僕は悔しかったが、反面喜びもあった。
楓という女性は、そういうことを受け入れきれる子だ。
楓には 何をされても許せる部分があった。
「ソウルに戻ったら、一緒に住む部屋 探してみようっと」
楓は 僕の肩に頭を寄せて甘えながら言って、僕の手を握っていた。
こんな所は、まだ少女と呼んだ方が相応しい。
楓は 甘えん坊だ。
楓は、僕に依存していたのかも知れない。
楓がソウルに行く前にバッグを整理していた。
「お兄ちゃんと離れ離れしたくない…」
楓は 淋しそうな顔をして、涙を流し始めた。
僕は 楓の傍へ行き、楓の身体に腕を回した。
楓の目からは、透明な涙が溢れていた。
僕と楓は しばらくその姿勢を崩さず、互いの身体を抱きしめたままで座っていた。
やがて楓の顔は 優しい顔になった。