距離はハーフマラソン
走れる選手は全員参加しろ、っていう一番ヶ瀬監督が言ったので、走る部員はみんな出場した
祐平は
とりあえず10位内で完走したいな
10位に入り、箱根へ向けての足掛かりにしたい、と考えていた
祐平は美香に言われた事を、約束を守ろうとしていた
レースが始まった
一時期祐徳30キロというレースも行われていたが、今はハーフマラソンとなっている
今年だけ11月にされる事になった
例年、2月に行われるのだが、鹿島市内の建設が大幅にされるので、11月に行われる
もう65年ほど続いている由緒ある大会である
5キロを過ぎてから、遅いペースにじれた聡が早々と集団から抜けて飛ばし始めた
それに新開と祐平と秀俊がついて行く
仮想箱根だ
先輩たちについて行ければ、練習の成果も現れる、と感じた祐平がついて行く
暴走する癖がついてしまった、聡は勝手について来いという感じだ
頼もしいな、彼らは
間違いなく日本の未来を明るくしてくれる
日本陸連の関係者もやってきていた
ハーフマラソンの世界記録は58分23秒
5キロまで遅いペースだったので、その記録には届かないが、聡は先頭を気持ち良く走っている
あの、高速スピードで最後まで押し切っちゃうから、聡、成長したよね
しかし、バカじゃないのかな、あいつ
端から見るとスピードは滅茶苦茶早いし
時々大丈夫かなって思っちゃう
鏡が呆れるようにモニターを見ている
監督も馬鹿だからよ
何かあるとすぐ、佐賀佐賀って来ちゃうし
あの子たちとかにうちの温泉に来ちゃうから、恥ずかしい
綾奈が吐露した
あの暴走癖は箱根走ってからね
かなり早いペースで前半持ちこたえたから自信になったのよ
秀俊もいたしね
あ、ウィントスくんよ、何で鳥栖のマスコットが来てるの?
写真撮ろうよ
綾奈と鏡はウィントスくんに近寄りに行った
ウィントスくんって佐賀とかにいる、かささぎなんでしょ
さっき、本物見たら可愛かったよ

レースは10キロを過ぎた
この間のスプリットは跳ね上がっている
祐平、何でお前ついて来たんだ?
大丈夫かよ
新開が横にいる祐平に尋ねた
僕の美香さんに対する気持です
何とか上に、くっついて走り監督にアピールするためです
美香さんは諦めません
秀俊が、それを聞いて、言った
お前、純な恋をしてるな
羨ましいよ
と、少し乱れた息で聞いた
聡はひたすら走っている
何も気にしていない
モニターを見ている一番ヶ瀬監督と赤水コーチは、少しびっくりしていた
何で、小栗が先頭集団にいるんだ?
練習の成果という事でしょうけど、ずいぶん耐えてますね
期待出来ますね
監督も赤水も、美香という女子の事は聞いてない
レースは前の4人が飛ばしたまま、5位集団にかなりの差をつけて走っていた