
008 一転(2)
「はい、あたしたちの横浜への旅行資金」
実南は約20万円の札束を秀俊に渡した
「お前、この金どうしたんだ?」
「あんたの預金を全額おろしたの」
「何だって?せっかくバイトやお年玉で貯めてたのに…!お前の肥後ファミリー銀行の預金と2人で折半しろよ、この…」
「あ、バス来た来た、これ乗ろう」
2人は辛島の日本最大級バスターミナルから各停バスに乗った
ご乗車ありがとうございます
このバスは荒尾行き普通バスです
「おい、お前、このバス荒尾に行っちゃうぞ。何で天神行き高速バスに乗らないんだ」
「いいやん、のんびりして、少し眠ろうよ」
そう言われ秀俊も少し休んだ
翌朝
、2人は佐賀のバスセンターにいた
「ひでえなあ、佐賀来ちゃったぞ」
「ここから天神行き出てるってよ。あそこから乗るんだって」
佐賀から西鉄バスに乗り、福岡天神バスターミナルへ行き、そこから深夜に走る東京行きのバスに乗れば良い
約20分置きに天神行きが出ている
バスがやって来て2人とも乗った
そして最後方の席に座った
天神行きが基山サービスエリアを過ぎた時、前方に座っていたお客が立ち上がった
「おい、運転手さんよ、ちょいと名古屋まで行け。行かないと腹に巻いたダイナマイトに火つけるぞ!お前たちは黙ってろ!」
と、上着の中に隠したダイナマイトの束とライターをちらつかせた
秀俊はまたか、と泣きそうな気分になった