こちらの続きです。
コロナ禍にも慣れた頃には、遠出はできないものの凌亮とお泊まりデートの回数も増えてきた。
私の子どもたちは10代後半でお金は掛かるけど手は掛からない年頃。
母親としての役目も徐々に少なくなってきた。
私がしっかり働いてさえいれば、日々の生活や教育資金に困ることもないし(裏を返せばしっかり働かなければ家計は途端に火の車)、自由になる時間もお金もある程度は確保できた。
仕事も家のこともそつなくこなしていれば私の義務は果たしているという思いもある。
だから不倫をして良いわけではないのは重々わかってはいるけれど、全ての要因が私の生活を順調に回してくれているのは確かだった。
夫は私の自由を詮索することもなく、私が家を空けることに不機嫌になることもないのは気楽で良い。
これまで母親という役目が大きく、子どもに関することではいくつも荒波を乗り越えてきた。
ようやく子育ての終わりが見えた頃、家庭も安泰だし凌亮とも安定した関係が続いていて、私は『たただただ幸せ』と感じていた。
凌亮は相変わらず家庭の不満を言いつつも、だからこそなのか、
「唯といる時だけが心が安らぐよ」
「唯がいなかったら今自分がどうなっていたかわからない」
「いつもそばにいてくれてありがとね」
そう言って、そばにいるだけなのに感謝してくれていた。
その凌亮から、
「離婚して家を出る」
と宣言のような言葉が発せられたのは2021年の夏だった。
付き合い始めて10年の時が経っていた。
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