SNS等を見ていて思い付いたお話です
「仮想鋼鉄と現実の影」
バーチャルゲーム《アイアン・フロンティア》の中で、
少年たちは英雄だった。
各自が「最強」を信じるロボットを操り、
用意されたNPCを撃ち倒し、架空クレジットを稼ぐ。
脚部を軽くする者、火力に全てを注ぐ者、
見た目だけを誇る者
――戦い方も思想もばらばらだ。
だが問題はなかった。
NPCは決められた動きしかしない。
負けることは、なかった。
その日、空が歪んだ。
警告音も、イベント告知もなく、
現れたのは異様な兵器群だった。
無骨で無駄がなく、装飾も誇張もない。
弾道は正確で、反応は速く、
まるで“勝つためだけ”に
存在しているかのようだった。
「なんだよこれ、クソイベントか?」
「バランス壊れてるだろ!」
少年たちのロボットは次々に撃ち抜かれた。
これまで誇っていた最強装備は通用せず、
回避も読みも追いつかない。
敗北が続くにつれ、彼らは互いを責め始めた。
「お前が突っ込むからだろ!」
「支援しろって言っただろ!」
「足引っ張るならログアウトしろよ!」
罵声が飛び、連携はなく、誰も仲間を見なかった。
彼らはずっと、一人で戦ってきたのだ。
その時、通信が割り込んだ。
《君たちは、よく戦った》
画面に映ったのは、
現実的な装備を身に着けた大人たちだった。
疲れた目、抑えた声、だが確かな意志。
《その兵器は、君たちを倒すためのものじゃない》
《現実に戻ってきてもらうためのものだ》
少年たちは沈黙した。
彼らは知っていた。
ゲームに逃げた理由を。
学校、家庭、将来、失敗、他人の視線――
現実は痛く、重く、思い通りにならない。
「戻りたくない……」
誰かが呟いた。
「ここなら、強いんだ」
「ここなら、誰にも否定されない」
抵抗するように、彼らは再び出撃した。
だが今度は違った。
「……俺が前に出る。カバー頼む」
「了解。弾幕張る」
「右、来るぞ!」
初めて、互いを見た。
初めて、声を合わせた。
現実の兵器は、なお強かった。
だがその攻撃は、どこか抑えられていた。
倒しきらず、追い詰め、考えさせるように。
最後の一機が停止した時、通信が再び入る。
《君たちは、現実でも戦える》
《一人じゃなく、誰かと一緒になら》
画面が白くフェードアウトする。
ログアウト画面。
現実への帰還。
ヘッドセットを外した少年たちは、
しばらく動けなかった。
だが、誰もすぐには再ログインしなかった。
外は、まだ厳しいだろう。
だが今度は、独りではない。
バーチャルの鋼鉄は消え、
現実の一歩が、静かに始まった。