革新的な兵器として列挙しましたが

数年後、十数年後には

現実に登場しているかもなぁ・・・

どこまで未来を想像出来るのかな?

 

 

# 新世代の盾

朝霞駐屯地の会議室に、
秋の陽射しが斜めに差し込んでいた。

「では、実弾デモンストレーションの
映像をご覧ください」

L'sコーポレーション日本支社の技術担当、
ケビン・チャンがリモコンを操作すると、
スクリーンに砂漠の試射場が映し出された。
陸上自衛隊の幹部たち
——一佐から三佐まで、
計八名——が一斉にスクリーンに視線を注ぐ。

画面の中央に据え付けられた
新型40mm自動擲弾銃が、滑らかに旋回を始めた。

「ご覧の通り、
ターレットは全周360度の旋回が可能です。
射角は上方90度まで対応しています」

ケビンの日本語は流暢だった。

「注目していただきたいのは、
左右に装着された二つのマガジンです」

映像が擲弾銃のクローズアップに切り替わる。
確かに、左右対称に配置されたマガジンが確認できた。

「右側には高性能炸薬弾、
左側には対ドローン用のエアバースト弾を
装填しています。
切り替えは車内のコントロールパネルから
瞬時に可能です」

画面の中で、擲弾銃が火を噴いた。
右マガジンから発射された弾頭が、
500メートル先の標的車両に着弾し、
鈍い爆発音とともに黒煙が上がる。
間髪入れず、左マガジンに切り替わり、
今度は空中で複数の小型ドローンを撃墜していく。

会議室に感嘆の息が漏れた。

「さらに」
とケビンは続けた。

「本システムはRWS
——リモートウェポンステーション——としてだけでなく、
センサーと連動したAPSとしても機能します」

「APS?」若手の三佐が確認するように尋ねた。

「アクティブ・プロテクション・システムです」

ケビンが振り返る。

「接近する対戦車ミサイルや砲弾を自動で迎撃します。
マガジン式のため、従来のAPSと比較して
迎撃可能回数が飛躍的に増加しました。
片側30発、両側で計60発の擲弾を搭載可能です」

映像が切り替わり、
今度は装甲車両に向かって飛来するロケット弾を、
擲弾銃が自動で迎撃する様子が映し出された。
センサーが脅威を検知し、瞬時に砲塔が旋回、
迎撃弾を発射する。
一連の動作は人間の反応速度をはるかに超えていた。

「防御から攻撃への切り替えもシームレスです」

ケビンがさらに説明を加える。

「ミサイルを迎撃した直後、
そのまま敵の発射地点に対して
高性能炸薬弾で反撃することも可能です」

一佐が腕を組んだまま口を開いた。

「L'sコーポレーションは、
確か多国籍企業でしたね。本社は米国?」

「はい。ワイオミング州ファーソンで創業し、
現在は航空宇宙、防衛、エネルギー、
AI技術など多岐にわたる事業を展開しております」

ケビンは資料のページをめくった。

「実は——」

彼は少し声を落とした。

「これまでも海上自衛隊とは
非公式に協力関係にありました」

室内の空気が微妙に変わった。

「C・ジャポニカス」
一佐が静かに呟いた。

ケビンは頷いた。

「秘匿潜水艦プロジェクトです。
公にはできませんが、東シナ海の情勢において
重要な役割を果たしていると理解しております」

「今回の40mm自動擲弾銃は」

ケビンは再び声のトーンを上げた。

「L'sコーポレーションとしては
日本の防衛省との公式な初の取引となります。
すでに日本支社も六本木に設立いたしました。
今後はドローン防衛システム、AI誘導兵器、
次世代装甲技術など、
幅広い分野で貢献させていただく予定です」

三佐が手を挙げた。

「価格は?」

「一基あたり、導入費用込みで
約2億円を想定しています。
量産効果により、さらなる価格低減も可能です」

会議室に沈黙が降りた。
決して安くはない。
だが、その性能を考えれば——。

一佐が立ち上がった。

「詳細な技術仕様書と、
実地でのデモンストレーションを改めて要請したい。
日本の地形、特に市街地や山岳地帯での
運用データも必要だ」

「もちろんです」

ケビンは深く頭を下げた。

「そして——」

彼は新しい資料を取り出した。

「本日ご紹介した40mm自動擲弾銃は、
あくまで第一段階の提案に過ぎません」

スクリーンが再び切り替わり、
新たな兵器システムの概要図が表示された。

「次世代長距離精密打撃システムです。
25mm擲弾銃をベースとした狙撃プラットフォームで、
偵察衛星やドローンのセンサーと直接リンクします」

ケビンの声に熱がこもる。

「有効射程は約10キロメートル。
衛星からのリアルタイムデータにより、
目視範囲外の目標に対して精密射撃が可能です」

二佐が身を乗り出した。

「10キロ? 擲弾で?」

「はい。弾道計算AI、気象データ補正、
GPS誘導技術の統合により実現しました。
狙撃手の技量に依存せず、
確実な長距離精密打撃を提供します」

画面が次のスライドに移る。
そこには、これまでのヘリコプターとは
明らかに異なる、重
厚な機体のシルエットが映し出されていた。

「そしてこちらが、
次世代攻撃ヘリコプターのコンセプトモデルです」

会議室がざわついた。

「従来の攻撃ヘリは軽量化と
機動性を重視していました。
しかし我々は逆の発想をしました
——低高度飛行に特化し、
戦車並みの重装甲を施したプラットフォームです」

ケビンはポインターでスクリーンを指し示す。

「機体下部に旋回式105mmライフル砲を装備。
地上の主力戦車と同等の火力を、空から投射できます。
重装甲により、小口径対空砲や
携行式対空ミサイルに対する
生存性が飛躍的に向上しました」

「重量は?」
一佐が鋭く問う。

「通常の攻撃ヘリの約2.5倍です。
その分、最高速度は犠牲になりますが、
低高度での制圧力は比類がありません。
市街戦や山岳地帯での運用を想定しています」

三佐が手を挙げた。

「エンジン出力は相当なものになりますね」

「ハイブリッド推進システムを採用しています。
ホバリング時の燃費も改善されました」
ケビンは自信に満ちた表情で答えた。

「そして当然ながら、この攻撃ヘリにも
先ほどご紹介したAPSを装備可能です」

「攻撃ヘリに?」
二佐が驚きの声を上げた。

「はい。機体各所に小型化した
APSモジュールを配置します。
接近する対空ミサイルを自動迎撃し、
生存性をさらに高めます」

ケビンは新しいスライドを表示した。
機体の前後左右に配置された
APSユニットが図示されている。

「重装甲とAPSの二重防御により、
従来の攻撃ヘリとは
次元の異なる耐久性を実現します」

一佐が鋭い視線を向けた。

「APSの弾数は限られる。継続的な防御は?」

「その点についても」

ケビンは期待していたかのように微笑んだ。

「次世代計画があります。
これらのAPSは、将来的にレーザー砲への
換装が可能な設計となっています」

会議室に静寂が訪れた。

「レーザー砲?」

三佐が反復する。

「はい。
現在、米国本社ファーソンの研究施設で開発中です。
高エネルギーレーザー兵器をAPSとして運用すれば、
弾数の制限がなくなります。
ハイブリッド推進システムの電力を利用し、
理論上は無制限の迎撃が可能になります」

ケビンは資料のページをめくった。

「そして、我が社のレーザー兵器の最大の特徴は——」

彼は声を強めた。
「少ない電力でも稼働できる点にあります」

二佐が身を乗り出した。

「少ない電力?」

「はい。従来のレーザー兵器は高出力電源が必要で、
システムの大型化が避けられませんでした。
しかし我々は独自の光増幅技術と
ビーム集束システムにより、
従来の十分の一の電力で同等の破壊力を
実現しています」

ケビンは誇らしげに続けた。

「これにより、システムサイズも
十分の一まで小型化することに成功しました」

「十分の一...」
三佐が呟いた。

「つまり」

ケビンはスクリーンに
小型レーザーユニットの概念図を表示した。

「攻撃ヘリだけでなく、装甲車両、艦艇、
さらには無人地上車両にまで搭載可能なサイズです。
ハイブリッド車両程度の電源容量があれば、
十分に運用できます」

一佐が鋭い質問を投げかけた。

「出力が下がれば、有効射程も短くなるのでは?」

「鋭いご指摘です」
ケビンは頷いた。

「確かに最大射程は従来型より若干短くなります。
しかし、APSとしての防御用途であれば、
数百メートルの射程で十分です。
むしろ小型化により、
複数のユニットを同時配置できることが
大きな利点となります」

彼は新しい図を表示した。ヘリコプターの機体に、複数の小型レーザーユニットが配置されている。

「一機の攻撃ヘリに、
前後左右それぞれにレーザーAPSを配置できます。
全方位からの同時多重攻撃にも対応可能です」

会議室に感嘆の息が漏れた。

「さらに」

ケビンは新しいデータを表示した。

「我が社のレーザーシステムは、
出力だけでなく圧力の増減も制御可能です」

「圧力?」

一佐が眉をひそめた。

「はい。レーザー光には運動量があり、
物体に圧力を加えることができます。
我々のシステムは、この圧力を精密に
制御する技術を確立しました」

ケビンは興奮を抑えきれない様子で説明を続けた。

「つまり、破壊が困難な目標に対しても、
レーザーで押し返したり、
軌道を逸らしたりすることが可能なのです」

三佐が驚きの声を上げた。

「迎撃ミサイルを破壊せずに、
逸らすということですか?」

「まさにその通りです。
高速で接近する対空ミサイルの弾頭部分に
持続的にレーザーを照射し、わ
ずかな軌道変更を加えるだけで、
目標から外すことができます」

ケビンはシミュレーション映像を再生した。

「破壊できなくても、跳ね返す、押し返す
——これが従来のレーザー兵器にはない、
我が社独自の技術です」

二佐が質問した。

「では、装甲の厚い目標に対しても有効だと?」

「はい。破壊力が不足する場合でも、
推進力を加えることで目標の姿勢を崩したり、
着弾点をずらしたりできます。
特にドローンのような軽量な目標に対しては、
文字通り空中で押し返すことも可能です」

一佐が腕を組んだまま、しばらく沈黙した。
そして、ゆっくりと口を開いた。

「革新的だ。
だが、実戦でどこまで機能するかは未知数だな」

「おっしゃる通りです」
ケビンは真摯に頷いた。

「だからこそ、段階的な導入と実証実験が必要です」

「実用化は5年以内を目標としています。
既存のAPSモジュールは、
ソフトウェアとハードウェアの更新のみで
レーザーシステムに対応できる設計です」

「ということは」

一佐がゆっくりと言葉を選んだ。

「今、APSを導入しておけば、
将来的にレーザー防御システムへの
アップグレードが可能だと?」

「まさにその通りです」
ケビンは力強く頷いた。

「L'sコーポレーションの兵器システムは、
常に将来の技術革新を見据えた
設計思想で開発されています。
今日お買い求めいただくものが、
明日には陳腐化する
——そのようなことは決してありません」

「プロトタイプは来年中に完成予定です」

一佐は腕を組んだまま、
しばらくスクリーンを見つめていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。

「L'sコーポレーションの技術は、確かに革新的だ。
だが」

彼は鋭い視線をケビンに向けた。

「これらの兵器が、本当に日本の防衛に
適合するかどうか、慎重な検証が必要になる」

「当然です」
ケビンは頷いた。

「我々は提案をするだけです。
最終的な判断は、この国を守る皆様にあります。
ただ一つ確信しているのは——」

彼は会議室全体を見回した。

「世界の軍事バランスは急速に変化しています。
L'sコーポレーションの技術が、
日本の防衛力を次の段階へと引き上げる
一助となれば、これ以上の光栄はありません」

窓の外では、演習場から訓練の号令が聞こえていた。
世界は確実に変わりつつある。
そして日本も、
その変化に備えなければならない時代に入っていた。

ケビンは資料を鞄にしまいながら、次の会議
——ドローン編隊制御システムと
無人地上車両のプレゼンテーション
——の準備を頭の中で始めていた。
ファーソンの本社から送られてきた
最新データを、もう一度確認しなければならない。