耳障りの良い主張って
多くの人が騙されて乗りやすいけど
そういうものに限って
そういう風に仕組まれた
ものの可能性が高いですね
例えば大人の男性が主張するよりも
可愛い子供の女の子が主張した方が
多くの人が受け入れたり共感したりしますよね
世の中 子供が主張する時は
大抵 裏に何かを画策する大人がいますからね
# 目覚め
春の陽射しが大学のキャンパスに降り注ぐ中、
美咲は友人の誘いで
初めて平和団体の集会に参加した。
「戦争反対」
「平和を守ろう」
というスローガンに、純粋な心が反応した。
戦争なんて、誰も望んでいないはずだ。
平和であることは、当たり前の願いのはずだ。
美咲はすぐに活動にのめり込んでいった。
週末のデモ行進、署名活動、SNSでの情報発信。
やればやるほど、
自分が正しいことをしている
という確信が深まった。
「SNSで、
この活動は隣国の工作だって書かれてるよ」
ある日、
別の友人がスマホの画面を見せてきた。
美咲は首を横に振った。
「そんなの、デマだよ。
平和を願うことが工作なわけないじゃん」
活動仲間の多くは高齢者だった。
美咲のような若者は珍しく、
いつも「若い人が来てくれて嬉しい」
と歓迎された。
地方の集会に参加すると、
そこには意外と若い支持者もいた。
後から知ったことだが、
地方には共産主義のサークル活動が盛んな地域や、
宗教を元にした政治活動が
根付いている場所があった。
家族ぐるみで信仰し、
政治活動に参加している若者も多いのだという。
「我々と違って、
今の若い人は戦争を経験していないから無関心で……」
よく聞く嘆きの言葉だった。
美咲は、自分は違うと誇らしく思っていた。
しかし、ある日の昼休み、
大学の親友・絵里がふと疑問を口にした。
「ねえ、美咲。その高齢者の人たちって、
70代って言ってたよね?」
「うん、そうだけど」
「でも終戦って1945年でしょ。
終戦の年に生まれた人でも、もう80歳だよ。
70代の人は戦後生まれじゃない?」
美咲は言葉に詰まった。
確かに、計算が合わない。
それから美咲は、
活動を別の視点で観察するようになった。
デモ行進の列を歩きながら、周りを見渡す。
確かに、退職した高齢者や
自分のような若者が目立つ。
でも、少し後ろの目立たない場所には、
アジア系の人々が驚くほど多くいた。
お昼の休憩時間、無料のお弁当が配られる。
毎回、立派な弁当だ。
誰がスポンサーなんだろう。
帰りには交通費を受け取る人も多い。
全員ではないが、かなりの人数だ。
これを毎回続けるには、
相当な資金が必要なはずだ。
疑問が、美咲の心に少しずつ積み重なっていった。
「ねえ、美咲」
またも絵里が話しかけてきた。
「戦争反対活動をしている人の多くは、
昔この国が戦争したことに反対なんだよね。
それって、侵略戦争に反対ってことでしょ?
でも、あなたたちの要求している
『戦争反対』だと、
防衛戦争まで禁じることにならない?
攻められた時、誰がこの国を守るの?」
美咲は答えられなかった。
今まで、戦争のための武力は
全て必要ないと信じていた。
でもそれは、自分を守る術を
失うことでもあるのだろうか。
自分の信念が揺らぎ始めた。
あまり深く考えたくなくて、
いつもより早く活動本部に向かった。
ドアの前に立った時、中から話し声が聞こえた。
「もっと戦争反対の声を大きくしてください。
それによって、
この国の防衛手段をもっと小さくします」
美咲は息を呑んだ。
聞き覚えのない、低い男の声だった。
「それと並行して、
引き続き武力を使わない侵略を推し進めます。
この国の平和ボケな連中は、
武力を使わなければ侵略とは思いませんからね。
民主的と言えば何でも許されます。
反対する人にはヘイトだ、
差別だと言えば問題ありません」
別の声が笑った。
「政治家も、官僚も、企業家も、大学教授も、
マスコミも……金と女でこちらの言いなりです」
美咲は震えた。足が動かなかった。
自分は、コマに過ぎなかった。
何も考えずに、
この国を侵略するために協力していた。
絵里が教えてくれた話を思い出した。
ウイグルのこと。
日本のマスコミが絶賛する素早い臓器移植の裏側。
安い食料品の裏側。
便利でお得な通販商品の裏側。
そこには、誰かの犠牲で成り立つ構造があった。
美咲は静かにその場を離れた。
図書館に向かい、本を借りた。
国際関係、安全保障、歴史。
自分がいかに無知だったか、痛感した。
平和を願う心は間違っていない。
でも、平和を守るためには何が必要なのか。
本当の平和とは何なのか。
自分の頭で考えなければならない。
美咲は、勉強を始めた。
そして、変わることを決意した。
騙されていたことへの怒りではなく、
無知だった自分への反省を胸に。
本当の意味で、平和を守れる人間になるために。
**終わり**