日曜日という事でヒーローものを
それも昔は映画でよくあった
ヒーロー対ヒーローという作品にしました
まぁ昔の映画のは
結局 ヒーロー同士が共闘するのですが・・・
# 正義の衝突
緊急指令が鳴り響いた。
「レンジャー、出動せよ。
北部ダム建設現場に怪人出現。
軍隊の制圧失敗。直ちに鎮圧に向かえ」
国家機関の特別任務チーム
「レンジャー」の五人は、
専用装甲車に飛び乗った。
赤、青、黄、緑、桃。
それぞれの色を纏った戦士たちは、
正義の執行者として数々の脅威を退けてきた。
装甲車が山道を登り、ダム建設現場が見えてきた時、
彼らは息を呑んだ。
軍のトラックが横転し、
武装した兵士たちが地面に倒れ伏している。
その中心に、巨大な影が立っていた。
鋭い複眼を持ち、
強靭な脚を構えた緑色の怪人
——バッタ怪人だ。
「指揮官が危ない!」
青が叫んだ。軍の指揮官が瓦礫の陰で怯えている。
バッタ怪人の一跳びで届く距離だ。
「行くぞ!」
レンジャーは一斉に飛び出し、
指揮官の前に立ちはだかった。
赤が構えを取る。
「下がっていてください。ここは我々が」
指揮官は安堵の表情で後退した。
赤は一歩前に出た。
「国家の工事を妨害するな。
正義の鉄槌を食らわせてやる!」
「レンジャーアタック!」
五人は一斉にバッタ怪人に襲いかかった。
赤の拳がバッタ怪人の胸部を捉える。
青の蹴りが脚を狙う。
黄と桃が左右から挟み撃ちにし、
緑が後方から跳躍する。
だがバッタ怪人の動きは予想以上に速かった。
「ハァッ!」
バッタ怪人の強靭な脚が地を蹴り、
一瞬で十メートル上空へと跳躍した。
レンジャーたちの攻撃が空を切る。
「上だ!」
黄が叫んだ瞬間、バッタ怪人が急降下してきた。
その両脚が青と桃を直撃し、
二人は地面に叩きつけられた。
「くそっ!」
赤が銃を抜き、連射する。
火花が飛び散るが、
バッタ怪人の外骨格は弾丸を弾き返した。
「ならば近接戦闘だ!」
赤は格闘用の警棒を取り出し、
バッタ怪人に突進した。火花を散らしながら、
両者の武器がぶつかり合う。
バッタ怪人の腕から鋭い刃が伸び、
赤の警棒を受け止めた。
「何故だ! 何故国家に逆らう!」
赤が叫びながら連続攻撃を繰り出す。
だがバッタ怪人は一歩も引かない。
「貴様らこそ、何故だ!」
バッタ怪人の反撃が赤を吹き飛ばした。
赤は地面を転がり、すぐに立ち上がる。
黄が援護に入り、緑が側面から攻撃する。
三人がかりでバッタ怪人を追い詰めようとした。
轟音とともに拳と蹴りが交錯する。
土煙が舞い上がり、金属音が響き渡る。
その時——
「バッタ怪人、頑張れ!」
「負けるな!」
「あいつらを追い返せ!」
緑の耳に、奇妙な声が届いた。
遠巻きに見守る地元住民たちの声だ。
応援しているのは、倒すべき怪人の方だった。
緑は一瞬、動きを止めた。
老人、女性、子供
——住民たちの表情に恐怖はなく、
必死の祈りがあった。
「待て、これは……」
緑が叫んだ瞬間、
赤の猛攻がさらに激しくなった。
「黙れ怪人! 貴様のような悪を、
この世に存在させてはならない!」
赤は完全に我を忘れていた。
攻撃は徐々に殺意を帯び、
バッタ怪人を地面に押し倒そうとしている。
「赤、待て!」
黄が叫んだ。
「やめろ、赤!」
青が駆け寄る。
「何かおかしい! 話を聞くべきだ!」
緑が赤の腕を掴んだ。
「離せ! こいつは敵だ! 軍を倒した怪人だぞ!」
赤は振りほどこうとしたが、
桃も加わって赤を押さえつけた。
「落ち着け! 見ろ、住民たちの様子を!」
四人がかりで、ようやく赤の動きを止めた。
赤は荒い息をつきながら、
ゆっくりと周囲を見渡した。
住民たちは怯えながらも、
バッタ怪人の背後に集まっていた。
「……どういうことだ」
赤が呟いた。
バッタ怪人は攻撃を止め、
ゆっくりと立ち上がった。
「ようやく気づいたか」
バッタ怪人が言った。
「正義? お前たちの正義は一般人の、
それも子供にまで暴行を加えることなのか!
そんなことは、正義の名において許さない!」
その言葉に、レンジャーたちは凍りついた。
緑が指揮官に向き直った。
「どういうことだ?
我々は何も聞かされていない」
指揮官が苦々しい表情で口を開いた。
「村の住民が立ち退きを拒否したんだ。
話し合いは決裂した。
我々は命令に従い、強制排除を実行しただけだ」
「暴行の事実は?」
桃が詰め寄った。
「……一部の兵士が、抵抗する住民に対し、
必要以上の実力を行使したことは認める。
特に前任の指揮官が……強硬派でな」
レンジャーたちの間に重い沈黙が流れた。
赤は拳を震わせながら、バッタ怪人を見た。
「貴様は……」
「この村は、俺たちの先祖が
何代も守ってきた土地だ」
バッタ怪人が言った。
「国は一方的に決めた。話し合いは形だけだった。
そして拒めば、暴力で排除する。
子供が兵士に殴られ、老人が地面に
叩きつけられるのを見た。
これが正義か?
俺は、この村の人々を守るために立ち上がった。
それが俺の正義だ」
青が静かに言った。
「これは……国家間の戦争と同じなのかもしれない」
黄が頷いた。
「正義と悪の戦いではない。
正義と正義の衝突だ」
緑が続けた。
「どちらが正しいとか、
どちらが間違っているとか、そういう話じゃない。
一方の正義は、
もう一方にとっては悪でしかないんだ」
赤は警棒を下ろした。だが構えは解かなかった。
「ダム建設は治水のためだ。
完成すれば、下流域の何万という人々が
洪水から守られる」
「それは分かっている」
バッタ怪人が答えた。
「だが、そのために俺たちの故郷が沈む。
そして話し合いではなく暴力で排除される。
それでも従えというのか?」
レンジャーとバッタ怪人の睨み合いが続いた。
誰も武器を上げなかった。
だが、誰も引き下がらなかった。
住民たちは息を呑んで見守り、
倒れた兵士たちは呻き声を上げている。
この対峙の結果がどうなるのか、
まだ誰にも分からない。
ただ一つ確かなのは、ここには二つの正義があり、
両方とも譲れないということだけだった。
——終わり