第五十一弾の続きです

別の視点に変えてみました

 

 

 

# 暗殺阻止 —— 公安外事四課の焦燥

警視庁公安部外事第四課の尾形達也は、
オフィスのデスクで額に手を当てた。
焦燥感が全身を駆け巡る。

C国による日本初の女性総理大臣暗殺計画
——外事第二課からの通達は、衝撃的な内容だった。
しかも、既に陸上自衛隊指揮通信システム
・情報部と在日米軍情報部が
合同調査に着手しているという。
完全な出遅れだ。

尾形の脳裏に、あの忌まわしい事件が蘇る。
某県警がC国と内通して実行した元総理大臣暗殺事件。
外事四課は未然に防ぐことができず、
真相は闇に葬られた。
結果、世間には宗教法人絡みの事件として
公表せざるを得なかった。
あの屈辱を、二度と味わうわけにはいかない。

だが、調査は一向に進展しなかった。

万が一を考えて、尾形は自宅に帰らず、
新宿の雑居ビルの上にある安ホテルに泊まることにした。
夕食時、ホテル近くの定食屋に入る。
店内はそこそこ混んでおり、店員に相席を頼まれた。

「構いません」

尾形が頷くと、目の前の席に
三十代くらいの女性が座った。
黒いスーツに身を包んだ、
涼しげな目元が印象的な美人だ。

尾形は鯖の味噌煮定食を黙々と食べ、
会計を済ませて立ち上がった。
その瞬間、女性の顔が不意に近づいた。

「情報、欲しいですか?」

低く、静かな声。尾形の心臓が跳ねる。
だが、表情には一切出さなかった。

「何の事です?」

尾形は冷静を装って聞き返す。

女性は微笑んだ。「久我さんの件です」

久我——陸上自衛隊指揮通信システム
・情報部部長の久我将補。
なぜこの女性がその名を知っている?

「もし興味がありましたら、連絡下さい」

女性は名刺を差し出した。尾形はそれを受け取る。

**エイキュー警備保障**  
**企画第三課課長**  
**石田莉佳子**

公的機関ではない。
多国籍企業L'sコーポレーション傘下の民間警備会社だ。
尾形の頭が疑問符で埋め尽くされる。

民間企業が、なぜこの件に? 
久我将補と何の関係が? 
そもそも、どうして自分だと分かった?

帰り際、石田莉佳子は不敵な笑みを浮かべていた。

尾形はホテルの部屋に戻り、名刺を見つめる。
連絡すべきか。罠かもしれない。
だが、手掛かりのない今、
これは唯一の糸口かもしれなかった。

彼は深く息を吐き、スマートフォンを手に取った。