これは水魔王の番外編なのですが

異世界転生モノの

テンプレみたいなお話になったので

載せるかどうか迷っていたのですが

第四十七弾が番外編みたいになっちゃったので

先に作ったこっちも載せる事にしました

 

因みにリオとその仲間たちは

この後に国に因縁を付けられ

茶番な裁判の結果 国から追放されました

 

 

# 水の魔法使いリオ 番外編:冒険者として

## プロローグ

光明寺の鐘が、朝を告げる。

リオは質素な僧服を脱ぎ、街着に着替えた。

「リオ、本当に行くのか?」

養父である僧侶が心配そうに尋ねる。

「はい。寺の費用も必要ですし、何より——」

リオは窓の外、街を見た。

「この街で暮らすには、お金が必要です」

アクアリア共和国では、
孤児院出身者への風当たりは強い。
まともな職に就くことさえ難しい。

だが、冒険者ならば
——実力さえあれば、誰でもなれる。

「気をつけてな」

「大丈夫ですよ」

リオは微笑んで、冒険者ギルドへと向かった。

## 第一章 最下位からの始まり

冒険者ギルド。

荒くれ者たちが酒を飲み、大声で笑う場所。

リオが入ると、何人かが振り返った。

「なんだ、ガキか」

「しかも、あの光明寺の孤児だろ?」

嘲笑が聞こえる。

リオは気にせず、受付へと向かった。

「冒険者登録をお願いします」

受付嬢が書類を差し出す。

「はい。登録料は銀貨三枚です。
ランクはFからのスタートになります」

「分かりました」

リオは登録を済ませた。

こうして、彼は最下位のFランク冒険者となった。

***

Fランクに与えられる依頼は、
単純なものばかりだった。

**依頼:薬草採取**

「薬草ねぇ……」

リオは森へと向かった。

普通の冒険者なら、一日かけて袋一つ分を集める。

だが、リオは違った。

「水よ、教えてくれ」

彼は水魔法で地下の水脈を感知する。

水脈が豊富な場所
——そこには、良質な薬草が育つ。

さらに、水魔法で土壌の湿度を調整し、
薬草の成長を促進させた。

結果——

「な、なんだこれは!」

ギルドの薬剤師が驚愕した。

リオが持ち帰ったのは、通常の十倍の量。
しかも、品質は最高級。

「こんな短時間で……しかもこの品質……」

***

**依頼:小型動物の捕獲**

街の貴族が、珍しい小鳥を欲しがっていた。

普通なら、罠を仕掛けて数日待つ。

だが、リオは水魔法で空気中の水分を操作し、
特定の場所に霧を発生させた。

霧に誘導された小鳥たちが、
リオの作った水の檻に自ら入ってくる。

「……十羽も捕まえたのか? 
しかも、一羽も傷ついていない?」

依頼主は目を丸くした。

***

**依頼:街の清掃**

「清掃か……」

リオは街の水路を見た。

汚れ、詰まり、悪臭を放っている。

彼は水魔法で水路全体の水を操作した。

汚れは全て浄化され、
詰まりは解消され、水は透き通った。

「一人で……街全体の水路を……一日で?」

街の行政官が呆然とした。

***

こうして、わずか一週間で——

リオはFランクの全ての依頼で、
従来の記録を大きく更新した。

## 第二章 特例のランクアップ

「リオ君、ちょっといいかな」

ギルド長が、リオを個室に呼んだ。

「君の働きぶり、見させてもらった」

白髪の老人
——元Sランク冒険者だったギルド長は、
険しい顔をしていた。

「率直に言おう。君は、Fランクではない」

「……はい」

「そこで、特例でのランクアップを提示したい」

ギルド長は書類を差し出した。

「Dランクへの昇格だ」

「Dランクですか……」

リオは少し考えた。

通常、FからDへは、E、Dと段階を踏む。
それを飛び越すのは異例中の異例だ。

「ただし、条件がある」

ギルド長は立ち上がった。

「私と、模擬戦をしてもらう」

「……模擬戦?」

「そうだ。君の実力を、この目で確かめたい」

***

ギルドの訓練場に、人だかりができていた。

「おい、Fランクの新人が、ギルド長と戦うらしいぞ」

「馬鹿な。ギルド長は元Sランクだぞ」

「どうせ、一瞬で終わるだろうな」

野次馬たちの視線の中、
リオとギルド長が向き合った。

「始め!」

審判の声とともに——

ギルド長が剣を抜き、突進してくる。

その速度、Sランクの実力。

だが、リオは動じなかった。

「水流」

リオの足元から水が湧き出し、
ギルド長の足を絡め取った。

「なに!」

ギルド長が体勢を崩す。

その隙に、リオは水の鞭を放った。

ギルド長の剣を弾き飛ばす。

「氷結」

水の鞭が瞬時に凍り、
ギルド長の体を縛り上げた。

開始から、わずか三秒。

「……勝負あり」

審判が呆然と宣言した。

訓練場が、静まり返った。

元Sランク冒険者が——新人に、一瞬で敗北した。

「……参ったよ」

ギルド長は笑った。

「君は、本物だ」

***

その日、リオはDランクに昇格した。

だが——

「納得いかねえ!」

ギルドに、怒号が響いた。



## 第三章 Aランクの驕り

「たかが孤児院出身の小僧が、Dランクだと?」

声を荒げたのは、五人組の冒険者パーティー。

この街で唯一のAランク冒険者パーティー
「蒼炎の騎士団」だった。

リーダーの名はヴィクター。
アクアリア共和国の有力議員の息子だ。

「ギルド長、これは不公平だ」

ヴィクターは傲慢に言った。

「我々は命をかけて、Aランクまで上り詰めた」

「それを、孤児上がりの小僧が、特例で昇格だと?」

「ヴィクター、君は見ていなかったのか?」

ギルド長が冷静に答える。

「リオ君は、私に勝った」

「……まぐれだろう」

ヴィクターは鼻で笑った。

「所詮、孤児は孤児だ」

彼はリオを睨みつけた。

「いいか、小僧。
お前のような下賤な出自の者が、
冒険者として成功するなど——片腹痛いわ」

「……」

リオは何も言わなかった。

怒りを感じないわけではない。

だが、千年を生きた魂は、
こんな小物の挑発に動じなかった。

「黙りか。やはり孤児は孤児だな」

ヴィクターは嘲笑して去っていった。

***

その夜、リオは一人、星空を見上げていた。

「エリナ……」

彼は呟いた。

「人は、変わらないな」

千年前も、今も。

出自で人を差別し、力で弱者を踏みつける。

「でも、いいんだ」

リオは拳を握った。

「私は、私のやるべきことをやる」

「それだけだ」

## 第四章 ゴブリン軍団

数日後——

街に、緊急の報せが入った。

「ゴブリンの軍団だ!」

「数は……数千!」

「街のすぐ近くまで来ている!」

ギルドは騒然となった。

「蒼炎の騎士団、出動してくれ!」

ギルド長が頼む。

「当然だ」

ヴィクターは自信満々に答えた。

「我々Aランクの力、見せてやろう」

***

だが——

半日後、
蒼炎の騎士団は、血まみれで帰還した。

「ゴブリンジェネラルが……いた……」

ヴィクターは息も絶え絶えに言った。

「さらに……ゴブリンキングまで……」

「何だと!」

ゴブリンジェネラルは、
通常のゴブリンの百倍の力を持つ。

ゴブリンキングは、
さらにその上——Sランクの魔物だ。

「無理だ……俺たちじゃ……勝てない……」

蒼炎の騎士団は、全員が重傷を負っていた。

再度の討伐は不可能だった。

***

「誰か……誰か行ける者は……」

ギルド長が呼びかけるが——

「無理だ。Aランクが負けたんだぞ」

「俺たちが行っても、死ぬだけだ」

誰も手を挙げなかった。

その時——

「私が行きます」

リオが前に出た。

「リオ君……」

ギルド長は複雑な表情をした。

「だが、君はまだDランクだ。Aランクでさえ……」

「大丈夫です」

リオは静かに言った。

「任せてください」

***

「待て」

ヴィクターが、ベッドから起き上がった。

「貴様に……何ができる……」

「俺たちが……負けたんだぞ……」

「貴様ごとき……孤児が……」

リオは振り返った。

その目には——憐れみがあった。

「……休んでいてください」

リオは静かに言った。

「すぐに、戻ります」

## 第五章 絶対零度

リオは、ゴブリン軍団のいる平原へと向かった。

そこには——

「……これは」

リオは息を呑んだ。

数千、
いや、おそらく一万を超えるゴブリンの群れ。

その中央に、巨大な個体が二体。

ゴブリンジェネラルと、ゴブリンキング。

「これは……確かに、Aランクでは厳しい」

だが、リオには——

千年前、一つの国を建国した力がある。

「仕方ない」

リオは深呼吸した。

「本気を出すか」

彼は両手を地面につけた。

「氷よ、大地を覆え」

魔力が放出される。

地面から、猛烈な冷気が立ち上った。

ゴブリンたちが気づく。

「ゴブッ!」

だが、遅かった。

冷気は瞬く間に広がり——

東京23区ほどの広大な土地が、一瞬で凍りついた。

「ギャアアアッ!」

ゴブリンたちが悲鳴を上げる。

だが、その悲鳴も——一瞬で途切れた。

全てのゴブリンが、凍結した。

ゴブリンジェネラルも。

ゴブリンキングも。

例外なく。

そして——

パキン、パキン、パキン——

凍りついたゴブリンたちの体が、バラバラになった。

リオが放った冷気は、絶対零度
——いや、それ以下。

物質の運動が完全に停止する温度。

そこでは、全てが脆くなり、砕け散る。

***

リオは立ち上がった。

眼前には、氷と破片だけが広がる静寂の世界。

数万のゴブリン軍団が——跡形もなく消滅した。

「……終わった」

リオは静かに呟いた。

## 終章 畏怖

翌日、リオが街に戻ると——

ギルドは、異様な静けさに包まれていた。

***

「リオ君……」

ギルド長が、震える声で尋ねる。

「ゴブリンは……?」

「全滅しました」

リオは淡々と答えた。

「ゴブリンジェネラルも、ゴブリンキングも、全て」

「……全て?」

「はい。一体残らず」

沈黙。

誰も、何も言えなかった。

Aランク冒険者が命からがら逃げ帰った相手を——

Dランクの新人が、全滅させた。

「どうやって……」

「凍らせました」

リオは簡潔に答えた。

「広範囲を一瞬で凍結させ、全て砕きました」

ギルド長の顔から、血の気が引いた。

彼は理解した。

この少年は——

次元が違う。

「リオ君……」

ギルド長は、畏怖を込めて尋ねた。

「君は……どれほどの力を持っているんだ?」

「さあ」

リオは首を傾げた。

「試したことがないので、分かりません」

その言葉が、さらに恐ろしかった。

つまり——まだ、全力ではないということ。

(この少年に逆らえば……)

ギルド長は確信した。

(国の一つや二つ、簡単に滅ぼされる)

それは、誇張ではない。

東京23区ほどの土地を一瞬で凍結させる力——

それを都市に向ければ、国家すら消滅する。

「リオ君」

ギルド長は、深々と頭を下げた。

「今後とも、よろしく頼む」

それは、敬意ではなく——畏怖だった。

***

その瞬間、ギルド内にいた冒険者たち全員が——

一斉に頭を下げた。

「「「よろしくお願いします!」」」

***

ギルドの片隅で、Cランク冒険者のグレッグが呟いた。

「昨日まで……俺、あいつのこと
『孤児のガキ』って笑ってたんだよな……」

彼の顔は青ざめていた。

「もし、あいつが怒ってたら……俺、今頃……」

「俺もだ……」

隣のBランク冒険者、マルコが震えながら言った。

「『孤児院育ちが調子に乗るな』
って、陰で言ってた……」

「バカだった……本当にバカだった……」

二人は顔を見合わせた。

「あれは……人間じゃない」

「神か……悪魔か……」

***

受付嬢のエリカは、
カウンターの下で膝を抱えていた。

「私……あの人に、冷たく接してた……」

彼女は思い出す。

リオが初めて登録に来た時、
孤児院出身と知って、明らかに態度が冷たかった。

「孤児なんて、どうせすぐ辞めるわ」

そう思っていた。

「もし……もし、あの人が私を恨んでいたら……」

エリカは震えた。

一瞬で街を凍らせる力——

それが自分に向けられたら。

「謝らなきゃ……ちゃんと謝らなきゃ……」

***

Dランク冒険者のトニーは、仲間たちと固まっていた。

「なあ……あいつ、Dランクなんだぜ?」

「俺たちと同じランク……」

「同じわけねえだろ!」

別の冒険者が叫んだ。

「俺たち、ゴブリン十体倒すのに必死だぞ?」

「あいつは一万体を……一瞬で……」

「もう……比べるのも失礼だ」

トニーは拳を握った。

「昨日、俺、あいつに『Dランクの新人』
って呼んだんだ。馬鹿にした口調で」

「……お前、生きてて良かったな」

「本当に……」

***

そして、ヴィクター。

ベッドの上で、彼は震えていた。

「孤児が……孤児が……」

自分が嘲笑した少年。

見下した少年。

「下賤な出自」と罵った少年。

その少年が
——自分たちAランクパーティー全員が
束になっても敵わない、規格外の存在だった。

「俺は……何をしていたんだ……」

ヴィクターの仲間たちも、同じように青ざめていた。

「リーダー……俺たち、
あの人を怒らせてる……よな?」

「……ああ」

「どうする? 謝った方がいいのか?」

「謝って……許してもらえるのか?」

沈黙。

誰も答えられなかった。

ヴィクターは思い出す。

リオの目——

最後に振り返った時の、あの目。

憐れみ。

「……俺たちは、虫けらだったんだ」

ヴィクターは呟いた。

「最初から、相手にすらされていなかった」

彼のプライドは、完全に砕け散った。

***

翌日、ギルドの掲示板に、
リオの名前が貼り出された。

**臨時昇格:リオ → Sランク**

それを見た冒険者たちは、誰も異論を唱えなかった。

いや、唱えられなかった。

「当然だ」

「むしろ、Sでも足りない」

「あれは……Sランクを超えている」

***

その日から、ギルドでのリオへの扱いは一変した。

彼が入ってくると——

「リオ様!」

「お疲れ様です!」

冒険者たちが一斉に頭を下げる。

受付嬢は、最高の笑顔で迎える。

「リオ様、本日はどのような御用でしょうか!」

依頼の報酬は、必ず多めに支払われる。

「いえ、規定通りで……」

「お受け取りください! 
これは街からの感謝です!」

酒場では、冒険者たちが
リオに酒を奢ろうと競い合う。

「リオ様、一杯どうですか!」

「いや、俺が奢る!」

「俺が!」

リオは困惑していた。

***

ある日、Cランク冒険者のグレッグが、
震えながらリオに近づいてきた。

「り、リオ様……」

「はい?」

「あ、あの……以前、失礼なことを……」

グレッグは土下座した。

「本当に申し訳ありませんでした!」

「え? 何のことですか?」

リオは本気で分かっていなかった。

「い、いえ! 孤児のガキって……」

「ああ」

リオは微笑んだ。

「気にしていませんよ。事実ですし」

「あ、ありがとうございます! 
ありがとうございます!」

グレッグは涙を流して去っていった。

***

受付嬢のエリカも、
ある日、勇気を出して謝罪した。

「リオ様……最初、冷たい態度で接してしまって
……本当にごめんなさい!」

「え? そうでしたっけ?」

リオは首を傾げた。

本当に、気づいていなかった。

「許してください!」

「いや、その……別に怒ってないですけど……」

エリカは安堵の涙を流した。

***

そして、ヴィクター。

彼は三日三晩悩んだ末、リオの前に現れた。

「……リオ」

「はい?」

「俺は……お前に、酷いことを言った」

ヴィクターは震える声で続けた。

「孤児だと馬鹿にし、下賤だと罵った」

「でも、お前は……
俺たちなんかより、遥かに強く、遥かに優れていた」

彼は深々と頭を下げた。

「すまなかった」

リオは、少し驚いた顔をした。

そして——微笑んだ。

「気にしないでください」

「え……?」

「確かに、私は孤児院出身です。それは事実です」

リオは穏やかに言った。

「でも、それで何かが決まるわけじゃない」

「大切なのは、今、そしてこれからです」

ヴィクターは、その言葉に——泣いた。

「お前は……優しいんだな……」

「本当に……優しい……」

彼は自分の小ささを、心から恥じた。

***

その日から、街の冒険者たち、
そして住民たちの、リオへの評価は確定した。

畏怖すべき力を持ちながら——

決して驕らず、誰にでも優しく、謙虚な少年。

「リオ様は、本物の英雄だ」

「力だけじゃない。心も、本物だ」

人々は、心からそう思った。

そして同時に——

「あの人を、二度と怒らせてはいけない」

それもまた、真実だった。

***

リオは、変わらず光明寺に戻った。

夕暮れ時。

寺の門をくぐると——

「リオ!」

「お帰り!」

「リオ兄ちゃん!」

大勢の声が響いた。

驚いて顔を上げると、そこには——

養父である僧侶だけでなく、
多くの孤児たちが待っていた。

リオが街で出会い、助けた浮浪者たち。

孤児院で一緒に育った仲間たち。

行き場のない人々。

みんなが、リオを迎えてくれていた。

「みんな……」

「リオ、聞いたよ! すごいことしたんだって!」

幼い少女が駆け寄ってくる。

「ゴブリンを全部やっつけたって!」

「街を救ったんだろ?」

少年たちが目を輝かせる。

「おかえり、リオ」

養父が、温かく微笑んだ。

「ただいま」

リオも、微笑み返した。

***

その夜、寺の中庭で、みんなで食事をした。

質素だが、温かい食事。

リオが稼いだお金で買った食材を、みんなで調理した。

「美味しい!」

「こんなに食べられるなんて!」

子供たちが笑顔で食べている。

浮浪者だった老人が、涙を流していた。

「こんな……温かい食事……何年ぶりだろう……」

「たくさん食べてください」

リオは優しく言った。

「ここには、十分な食べ物があります」

***

食事の後、子供たちがリオの周りに集まった。

「リオ兄ちゃん、話聞かせて!」

「ゴブリンとの戦い、どうだったの?」

リオは少し考えて、話し始めた。

ただし、戦いの話ではなく——

「みんな、大切なことを教えるよ」

子供たちが真剣な顔で聞く。

「力は、何のためにあると思う?」

「悪いやつをやっつけるため!」

一人の少年が答えた。

「それもあるね」

リオは頷いた。

「でも、本当に大切なのは——守るためだよ」

「守る?」

「そう。大切な人を守る。大切な場所を守る」

リオは子供たちの頭を撫でた。

「力は、誰かを傷つけるためじゃない。
誰かを守るためにあるんだ」

子供たちは、真剣に頷いた。

***

夜が更けて、子供たちが眠った後。

リオは一人、中庭の縁側に座っていた。

養父が隣に座る。

「リオ、お前は本当に強くなったな」

「……そうですね」

「でも、変わらない」

養父は微笑んだ。

「お前の優しさは、昔のままだ」

「それは……あなたが、そう育ててくれたからです」

リオは頭を下げた。

「ありがとうございます」

「礼を言うのは、私の方だよ」

養父は空を見上げた。

「お前がいてくれるから、この寺には笑顔がある」

「お前が稼いでくれるから、
子供たちは空腹に苦しまない」

「お前が守ってくれるから、みんな安心して眠れる」

「……」

「これからも、頼むよ」

養父は、リオの肩を叩いた。

「ああ、この子たちを——この場所を、守ってくれ」

***

リオは、眠っている子供たちを見た。

穏やかな寝息。

安心しきった顔。

ここには、争いがない。

奪い合いがない。

差別がない。

ただ、互いを思いやり、助け合う人々がいる。

貧しいかもしれない。

質素かもしれない。

でも——

ここには、笑顔がある。

温かさがある。

優しさがある。

「エリナ……」

リオは心の中で呟いた。

「これが、あなたが望んだ世界だよね」

エリナが幼いリオを抱きしめてくれた時のように。

エリナが優しく微笑んでくれた時のように。

今、リオもまた——子供たちを守っている。

「私は、これを守りたい」

リオは拳を握った。

「この場所を」

「この笑顔を」

「この優しい世界を」

彼は立ち上がった。

「どんな力を持っていても——」

「どんなに強くなっても——」

「私がすべきことは、変わらない」

リオは夜空を見上げた。

星が瞬いている。

まるで、エリナが微笑んでいるかのように。

「私は、弱い者の味方でいる」

「理不尽に苦しむ者を、助ける」

「そして——」

リオは光明寺を振り返った。

灯りが優しく灯る寺。

そこで眠る、大切な人々。

「この場所を、守り続ける」

「ここにいる、みんなの笑顔を守る」

「これが——」

リオは微笑んだ。

「私の使命だ」

風が、優しく吹いた。

リオの髪を撫で、寺を包み込む。

まるで、世界が彼の決意を祝福しているかのように。

***

翌朝。

「リオ兄ちゃん、起きて!」

子供たちの元気な声で、リオは目を覚ました。

「おはよう」

「おはよう! 今日は何する?」

「今日は、みんなで畑を耕そうか」

「やったあ!」

子供たちが駆けていく。

その後ろ姿を見て、リオは微笑んだ。

ここには、未来がある。

希望がある。

そして——愛がある。

「さあ、始めよう」

リオは立ち上がった。

「今日も、みんなで」

光明寺の鐘が鳴る。

新しい一日の始まり。

水の魔法使いリオは——

今日も、大切な人々を守るために歩き出す。

強大な力を持ちながら。

決して驕らず。

ただ、優しく。

それが、リオの生き方だった。

そして——

それは、これからも変わらない。

***

(エリナ、見ていてください)

(私は、あなたの望んだ世界を——)

(ここに、作り続けます)

(未来永劫)

空が、青く晴れ渡っていた。

**【番外編・完】**