ニュースで最近の学校の教師の行動を見て
疑問に思ったのでこういうカタチにしてみました
謝罪の連鎖
教室の窓から差し込む午後の光が、僕の机を照らしていた。
またノートが破られている。三回目だ。今週だけで。
「ごめんなさい」
加藤の声が教室に響く。
担任の山田先生の前で、彼は頭を下げた。
「わかればいいんだ。許してあげなさい」
山田先生は僕を見て微笑んだ。優しい笑顔。
でも、その笑顔が今日は氷のように冷たく感じられた。
僕は頷いた。何度目かもわからない。
放課後、また靴がなくなった。
昇降口で裸足のまま立ち尽くす僕を、
クラスメイトが避けるように通り過ぎていく。
翌日も、その翌日も、同じことが繰り返された。
「ごめんなさい」 「許してあげなさい」
その言葉が、呪文のように僕の頭の中で響き続けた。
それは金曜日の放課後だった。
教室には山田先生と僕だけ。
先生は書類整理をしていた。
僕は立ち上がり、先生の机に近づいた。
「先生」
「ん? どうした」
先生が顔を上げた瞬間、僕は先生の頬を殴った。
パンッという乾いた音。
先生は呆然としていた。
僕も自分の手が震えているのがわかった。
「……ごめんなさい」
僕は深く頭を下げた。
沈黙が流れた。十秒、二十秒、三十秒。
「……わかればいいんだ」
山田先生の声は震えていた。
でも、いつもの言葉を口にした。
僕は顔を上げ、もう一度先生の頬を殴った。
「ごめんなさい」
すぐに謝罪した。
「君、何を……」
「先生は、いつもそう言ってますよね。
謝ったら許すって」
三度目。
「ごめんなさい」
四度目。
「ごめんなさい」
先生の目から涙が溢れていた。
でも僕は止まらなかった。
五度目。六度目。七度目。
「やめてくれ……」
「謝りましたよ。
先生、許してくれないんですか?」
僕の声も涙で震えていた。
「僕は毎日、何度も何度も許してきました。
先生の言う通りに。でも何も変わらなかった。
先生、これがどういうことか、わかりますか?」
山田先生は床に座り込んでいた。
顔を覆って泣いていた。
僕も泣いていた。
「謝罪なんて、
痛みの前には何の意味もないんです」
翌週の月曜日、山田先生は学校を休んだ。
火曜日、先生は学校に来た。
でも、目つきが違っていた。
加藤がまた誰かの筆箱を隠したとき、
先生は初めて、本気で怒った。
「謝るだけでは済まない。
君がしたことの重さを、ちゃんと理解してもらう」
職員室に連れて行かれる加藤を見て、
クラスメイトたちはざわついた。
放課後、山田先生は僕を呼んだ。
「君のしたことは、許されることじゃない」
僕は頷いた。
「でも、先生も同じだった。
君に、みんなに、本当の意味で向き合ってこなかった」
先生は深く頭を下げた。
「本当にすみませんでした」
僕は何も言えなかった。
教室を出るとき、先生の声が聞こえた。
「ありがとう」
振り返ると、先生は泣きながら笑っていた。
僕も、初めて少しだけ、笑えた気がした。