後見、保佐、補助のおおまかな違いは
7条後見は「能力を欠く」
11条保佐は「能力が著しく不十分」
15条補助は「能力が不十分」
という、条文の微妙な言い回しの違いに着目すれば、能力を欠く、つまり無能力であれば後見、その他は保佐か補助になりますが、保佐は一定の判断能力があるものの、13条1項各号に列挙されている重要な法律行為について自分一人では適切に行うことができず、常に他人の援助を必要とする場合で、日常生活や買い物等は一人でできるが精神障がいで重要な法律行為を行うのに不安がある、という程度であれば補助、ということになります。
もっと端的に言うと、完全な植物状態にある重篤な患者はもちろん、日常生活を一人で営むことができなければ後見で、保佐と補助の境界は13条1項各号に列挙されている重要な法律行為を一人で行うことができるか否かで判断されます。
今まで、制限行為能力者本人の保護規定、それを支える人たちの役割と必要な事務手続きについて概観してきました。制限行為能力者の財産を守るため、制限行為能力者の法律行為は本人又はその代理人によって取消すことができますが、これを取引の相手側の立場で考えれば、この契約がいつ取消されるのかわからず不安定な状況になるため、相手側から制限行為能力者側に対して、契約を追認してくれるかどうかの判断を催促できる規定がありますが、その規定の説明の前に、「取消し」と「追認」という言葉について説明をしておきます。
取消された行為は、初めから無効であったものとみなします(121条本文)。これを取消しの遡及効といいます。つまり、一旦契約してしまっても取り消されれば契約前にさかのぼって、初めから無かったものとなります。これに対して追認は、取消しうる契約がそのまま有効に作用し、通常通り効果として義務と権利が発生しますが、取消しうる法律行為を一旦追認すれば、以後、取消すことはできません(122条本文)。
では、本題にもどります。
この規定は20条(制限行為能力者の相手方の催告権)にうたわれています。
20条1項
制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が能力者となった後、1カ月以上の期間を定めて、その期間内に確答を発しなければ追認したものとみなす。
20条2項
制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対して前項と同様の催告をした場合において、その者が期間内に確答を発しなければ追認したものとみなす。
20条4項
制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は13条1項に列挙される特定の法律行為の一部について補助人の同意を必要とする旨の審判を受けた被補助人に対して1カ月以上の期間内に追認をするかどうかの催告をすることができ、その者が期間内にその追認を得た旨の通知を発しなければ取消したものとみなす。
この条文の理解のポイントは相手方が誰に対して催告しているのかを把握することです。20条1項は能力者であり、20条2項は制限行為能力者の法定代理人、保佐人又は補助人です。これらの者はいずれも単独で回答できる立場にあるので取引の相手方を保護する規定になっています。つまり契約は有効です。それに対して20条4項は制限行為能力者本人です(成年被後見人は除く。成年被後見人は単独で単独では回答をなしえないから)。制限行為能力者は単独で回答できる立場にはなく、相手方に比べて弱い立場にあるため、制限行為能力者側を保護する規定になっています。つまり契約は遡及して無効となります。
では、次のようなケースはどうでしょうか。
18歳の高校生が、20歳だと偽って親に内緒でバイクの購入契約をしてしまったとしましょう。バイク屋が年齢確認をきちんとしなかったという過失を差し引いたとしても親や学校に隠れて嘘をついてバイク屋をだまし、購入契約を結んだ高校生を、未成年者だからといって保護の対象になるのでしょうか。つまり、取消すことができるのでしょうか。
否、この点、民法は抜け目なく厳しい態度を示しています。すなわち21条に、制限行為能力者が、能力者であると相手方を信じさせるために詐術を用いた時は、その行為を取消すことができない。と、あるからです。これは、制限行為能力者といえども背信的な行為をした以上は、取消しによって相手方に不利益を負わせるのは適当でないので、取引の安全を優先して契約を成立させる、という解釈です。