商店街に行けば何でも揃う…
私が子供の頃、都内の城南地区には駅を中心に大なり小なりの商店街があり、夕方には買い物をする人で溢れていた。
しかし、時は流れ大店舗が出来たりすると、商店街からは徐々に人の姿が消え、あちこちにシャッターを閉めたままの店舗が増えてしまった。
「今日は鰹がお買い得だよ!」
そんなやり取りをしながら買ったことがない人も増えたらしい。
私が幼少ならば、その頃の店主たちはすでに鬼籍入りした者も多い。
子供の世代が将来を悲観し跡を継がなかった気持ちも判らなくもない。
先日のことだ。
赤子の頃から私を知り、見るたびに「おい!ヤス坊!」と呼んでくれる老夫婦が経営する小さな八百屋が今月一杯で店じまいすると聞いた。
やはり近くに出来たスーパーにより売り上げが減り、隠居しようと決めたのだと言う。
寂しい話だが、年齢を鑑みれば致し方もない。
時代も波もあるし、消費者のニーズも常に変化する。
相撲も歌舞伎も文化であるが、国の手厚い保護下にあるのに比べ、食文化を底辺で支えてきた名もなき商店に、国の誰が目を配ったのだろうか?
相撲や歌舞伎は観なくても死なぬ。
しかし、人は食べなくては死ぬ。
偉い人にはそれが解らないらしい。