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今日の労働判例
【セントラルインターナショナル事件】(東京高判R4.9.22労判1304.52)
この事案は、正社員Xが、会社Yに対し、①降格処分などの有効性と、②抑うつ病になったことへの損害賠償などを求めた事案です。
1審は、①は否定したものの、②は肯定しました。2審は、①②いずれも肯定しました。
1.降格処分(①)
Xには、取引先や会社に迷惑をかけるような言動がいくつかあり、1審はその点を指摘して、降格処分などを有効としました。
これに対して2審は、次の論点②との関係を重視しています。
すなわち、Xがメンタル的に普通でない状況にあったことを周囲も理解できた中での、Xの言動について、不利益処分の理由とできない、という趣旨の判断をしているのです。
労働法では、「合理性」「権利濫用」など、抽象度の高い基準が多く適用されますが、その際、より具体的な「判断基準」を設定して議論を整理します。整理解雇の4要素は、比較的有名ですが、これは、整理解雇の「合理性」を判断する際に、4つの判断基準で検討する、ということを意味します。
この観点からみると、本事案でも、降格処分の「合理性」について、1審では、会社側の事情(業務への悪影響など)が中心として評価されたのに対し、2審では、これだけでなく、従業員側の事情(メンタルに問題が生じていたこと)を考慮した、と評価できます。
2審の判断の方が、多様な事情を考慮する近時の多くの裁判例の傾向に合致しているように思われます。
2.実務上のポイント
Yから見ると、感情的で扱いにくい従業員Xに対し、できるだけの対応をした、ということでしょう。しかし、程度の差はあれ、1審・2審いずれも、Yの対応に問題があることを認めています。
本事案は、会社から見た場合、「このように対応すればよい」という意味では、参考になりませんが、「これではダメ」という意味で、参考になります。