18MHz帯の2エレのワイヤー垂直八木アンテナの製作


(1)18MHz帯の魅力
 当たり前ですが、14MHz帯と21MHz帯の中間のようなバンドです。14MHz帯では、季節や太陽黒点の周期にそれほど左右されずDXが楽しめます。反面、難点もあります。例えば、CQ局を呼ぼうとします。原理上、そのCQ局が入感している局数が他バンドに比べてあまりにも多く、競争が激化、呼んでも取ってもらえないことになります。もちろん、大きなタワー上の多素子八木アンテナでKWターであれば、問題なくQSOできますが、ほとんどの局はそうはいきません。それでも、多くの局が根気強く呼び続づけています。当局は、太陽黒点サイクル24でDXCCを稼ぐために、倒立型のデルタ・ループアンテナで長らく14MHz帯に出ていました。サイクルが終わるまでに何とかDXCC150を達成しましたが、これも14MHz帯であったことと、打ち上げ角が低く、ほどほどに飛んだアンテナのお陰です。一方、21MHz帯は、当然ながらDXは季節に影響されますし、太陽黒点のサイクルの底では全く使い物になりません。現在は、太陽黒点サイクル25の始まりで、かなり太陽黒点数(SSN)も上がり、春、夏のシーズンではDXが楽しめます。先のサイクル24のピーク時にJポールアンテナでJAとQSOできました。以上のことから、18MHz帯は、両バンドの中間的な性質を持っているので、サイクルによる影響が少なく、年中DXを楽しむには最適ですし、込み具合はそれほど気になりません。JAの3級以上のライセンスをお持ちの方は、是非、この18MHz帯でQSOして下さい。主なコンテストでは、このバンドは含まれませんが、14MHz帯や21MHz帯とは一味も二味も違います。

(2)なぜ、八木アンテナか?
  これまでに製作した18MHz帯用のアンテナをたどってみますと、6種類。3段コーリニア・アンテナから始まり、四角形ループ・アンテナ、ダイアモンド(ひし形)ループ・アンテナ、ZLスぺシアル・アンテナ、スリム・デルタ・ループ・アンテナ、そして現在の2エレの垂直ワイヤー八木アンテナ。特に、ZLスぺシアル・アンテナ(HB9CVと同様の位相差給電アンテナ)は構造が複雑ですが、八木アンテナの一種ですから良く飛びました。四角形やひし形ループ・アンテナは、構造が簡単な割には打ち上げ角が低く、DXには最適です。大地に垂直に設置したコーリニア・アンテナは、打ち上げ角がほとんどゼロの水平に飛ぶアンテナで、その特性からUHFのリピーターのアンテナとして用いられています。HFに用いることは珍しいのですが、アンテナの設置環境から、このアンテナを選択しました。このように、たくさんの種類のアンテナを試して来ましたが、結局のところ、たどり着いたのは、笑わないで下さいね、『八木アンテナ』、日本が誇るあの八木ー宇田アンテナです。頭上へ波を飛ばさず、ある方向にだけ集中して電波を飛ばすことができれば、利得はそれほど問題なさそうです。八木アンテナ、恐るべし!


(3) アンテナの製作
 木立に垂直に縛り付けるのであまり大きくできず、2エレとなりました。利得の前後比(F/B比)を良くするため3エレを考えたのですが、全長が5m強となり、今回は諦めました。2エレはそれぞれ輻射エレメントと反射エレメントとしました。輻射エレメントと導波エレメントのセットも選択可能ですが、利得や利得の前後比(F/B比)で劣るようです。
 さて、いつものように、MMANA-GALアンテナ・シミュレーション・アプリでエレメント長やその間隔を最適化しました。条件は、中心周波数をデジタルモードの18.100MHzとし、アンテナの入力インピーダンスを給電同軸ケーブルのインピーダンスに合わせ50オームとする、利得の前後比(F/B比)をできる限り大きくする、の3点。これらの条件をアプリに設定すると自動で最適化をしてくれます。その結果、上図のようなアンテナの構造になりました。給電点は黄色い丸の所で、当局の場合、地上高8mです。設置条件(エレメントの材質や地上高など)での計算値は、最大利得が打ち上げ角14度で5.0dBi(=2.85dBd)で、前後比(F/B比)は10dBでした。下図にその輻射特性を示しています。
 

 水平の青い棒は、2m程度のグラスファイバー棒(雪国用の積雪時の道路端のマーカー)を2本、ステンレス製のホースクランプ(ホースバンド)で束ねて、それを繋ぎ合わせて3mとしました。非金属性であればなんでも構いません。反射エレメント8.22mと上下の輻射エレメントを2本、計算値は3.91mですが4m程度の少し長めに切り出します。当局は、エレメントとして塩ビ皮膜の銅線(直径0.8㎜程度)を使いました。アンテナを立木に設置後、2本の輻射エレメントを給電点で少しずつ切り詰めて(もちろん、毎回上下エレメントを同じ長さだけ切って下さい)、アンテナ・アナライザーでアンテナのリアクタンス成分がゼロになるようにしました。SWR計をお持ちの場合、もしくはリグにSWR計が備わっている場合はSWR値を1に近づけて下さい。SWR値が2以下であれば十分です。なお、自作の1:1バランを給電部に入れています。市販品でももちろん構いません。注意点とし、給電ケーブルの取り回しですが、10m程度離れた隣の木から水平に給電ケーブルを繋いでいます(アンテナ面に対して垂直になるように)。くれぐれも、アンテナ真下から垂直に給電ケーブルを上げないようにして下さい。エレメントと給電ケーブルの外皮線が平行となり、誘電電流が生じるため、互いに干渉してSWR値が下がらず、また電波の輻射特性が期待されたようになりません。
 

 上写真に完成後の測定結果を示しています。給電ケーブルのリグ側で測定したアンテナのインピーダンスの周波数特性を左写真に示しています。黄色線はレジスタンス成分、青色線はリアクタンス成分です。18.100MHzでのアンテナのインピーダンスは|Z| = 60.47+j5.52 Ωでした。右写真にはすべてのパラメーターが示されています。インピーダンスが先の値とわずかに異なりますが、SWR値は1.18でした。
 なお、アンテナを設置した後にエレメントを切り込む作業は高所で危険ですので、図にある寸法でエレメントを切り出して設置して見て下さい。アンテナの地上高などの設置環境に依存しますが、それほどSWR値が大きくならず、リグ内臓のATUや市販のアンテナ・チューナーで対応できると思います。MMANA-GALシミュレーターによって得られた値に基づき作られたアンテナは、特に八木アンテナの場合、かなり再現性が良いように思います。

(4) アンテナの『飛び』と『受け』
 アンテナは北向きです。同時に比較できるアンテナがないので具体的には表せません。しかし、感覚的には良く飛びます。2022年5月初旬現在、毎朝アジアがオープンしていて、JAはもちろん、HL、VR、BY、YBとQSOできました。EUや東ヨーロッパ、ロシアは常時入感し、QSOできます。中東やアフリカは入感しますが、不安定です。日中は中南米が中心となり、信号は弱いですが問題なくQSOできます、アンテナの後方なんですがね。夕刻は、リグの前に座るチャンスが少ないので状況は分かりませんが、後日追記します。

 最後に、何とか3エレにしてアンテナの前後比(F/B比)を良くしたいのですが(20dBに改善予想)、現在検討中!

de WJ2T