14MHz帯用の、同軸ケーブルをアンテナ・エレメントとした、クロス給電による1波長ダイポール・アンテナの動作原理とその製作法

(1) はじめに
当局は、以前、アンテナの設置環境からHF帯用のアンテナとして『短縮アンテナ』に興味を持ち、いくつかのアンテナを自作しました。通常、アンテナ長の短縮には、放射エレメントへの延長コイルの挿入やリニア・ローディングによる給電法が用いられます。しかし、当局は同軸ケーブルを放射エレメントとして用い、その速度係数(波長短縮率)を利用して放射エレメントを短かくする方法に興味を持ちました。これまでに14、18、21MHz帯用の2段や3段のコーリニア・アレイ・アンテナや7、10MHz帯用のクロス給電による1/2波長ダイポール・アンテナを作成しました。そして、その集大成として24MHz帯用コーリニア・アレイ・ダイポール・アンテナを作成しました。以前のブログ『同軸ケーブルを使用したコーリニア・アレイ・ダイポール・アンテナの動作原理とその24MHz帯の製作』に、その作成法と動作原理を詳細に記述していますので御参照下さい。今回は、通常の1/2波長のダイポール・アンテナと同じような設置環境で、より利得が大きいアンテナ、つまり同軸ケーブルを放射エレメントとした、クロス給電による1波長ダイポール・アンテナを紹介したいと思います。
上図に、そのアンテナの構造を示しました。図中の赤線はアンテナの放射エレメントである50オームの同軸ケーブル、黄色丸は給電点、オレンジ線はアンテナのエレメントの両端を支えている紐、青線は『Qマッチング』用の300オームの平行フィーダー線です。

(2) アンテナの構造と動作原理
クロス給電による1波長ダイポール・アンテナとして、上図の図1Aと図1Bのような2種類の構造が考えられます。電気的長さ1/2波長や1/4波長の同軸ケーブルを直列につなぎ、そのつなぎ目で同軸ケーブルの芯線とシールド網線を交互につなぎ合わせたものです。これら2種類のアンテナの構造の相違は、放射エレメントである同軸ケーブルの両端をショートしているか(図1A)、オープンにしているか(図1B)です。ショートしている場合、一種のループ・アンテナになります。アンテナから同位相の電波が輻射される原理は、芯線から電波が輻射されず、シールド網線からのみ輻射されると仮定し、直列につながった各同軸ケーブルのシールド網線から同位相の電波が輻射されることに基づいています。
図1Aは、放射エレメントである1波長の同軸ケーブルの両端をショートした場合を示します。ここで、水平の2本線は、交互に繋ぎ合わせた同軸ケーブルのシールド網線と芯線を表し、太い黒色線はシールド網線を、細い灰色線は芯線を示します。青色線は輻射電流分布で、実線はエレメントから電波が輻射されることを、破線はエレメントから輻射されないことを表します。また、赤丸はそれぞれ両極の給電点を示します。水平の2本線の間隔は、実際にはエレメント長に比較して極小ですが、解説し易くするために間隔を広げて描写しています。なお、オレンジ色の縦線は同軸ケーブルの両端をショートしていることを示し、その長さに意味はありません。このアンテナの場合、電流腹からの給電となり、給電点から見たアンテナの入力インピーダンスは、並列に接続した2本の電気的長さ1/2波長の、ショート端の同軸ケーブルのインピーダンスの和に相当し、理論的には無限小となります(実際には、数オーム)。
図1Bは、放射エレメントである同軸ケーブルの両端をオープンにした場合です。エレメントの輻射電流分布ですが、同軸ケーブルの開放端は電流が流れないため、そのシールド網線と芯線の電流分布は必然的に図1B図の青色線のようになります。従って、電流腹からの給電となり、給電点から見たアンテナのインピーダンスは、並列に接続した2本の電気的長さ1/2波長の、開放端同軸ケーブルのインピーダンスの和に相当し、理論的には無限小となります(実際には、数オーム)。同軸ケーブルの芯線から電波が輻射されないと仮定した場合の電流の合算分布は図1B下のようになり、シールド網線から位相が揃った2つの1/2波長波が輻射されることになります。
1波長ダイポール・アンテナの利得を計算すると、単純に1/2波長のダイポール・アンテナの2倍とするならば、2 x 2.14 dBi = 4.28 dBiとなります。
参考のために、仮に、放射エレメントが通常の一本の銅線からなる1波長のダイポール・アンテナに給電した場合を考えましょう(図1C)。この場合、左右エレメントにそれぞれ180度位相がずれた1/2波長の電流が流れ、左右エレメントの輻射電流が互いに打ち消し合うことになり、アンテナ全体でトータルすると輻射されないことになります。半波長ダイポール・アンテナの場合(図1D)、このように打ち消し合うことがなく、1/2波長の電波が輻射されます。
さて、図1Aと図1B、どちらのアンテナを選ぶかですが、一種のループ・アンテナデアである前者(図1A)を選びました。これまでにも記述してきましたように、デジタル・モードには『静かな』ループ・アンテナが有利だからです。
(3) アンテナの作成、設置
上記の理由から、図1Aのアンテナを作成することにしました。アンテナの構造を上図Aに示します。アンテナ・エレメントですが、しばしば給電ケーブルとして用いられる50オームの同軸ケーブルを使用します。通常、HF帯用の給電ケーブルとして用いられる3D-2Vや5D-2Vは、波長短縮率が0.66程度でお勧めです。高周波用の3D-FBや5D-FB等のFB系は、その波長短縮率が0.88程度と大きく、アンテナのエレメントがそれほど短くなりません。たとえば、今回の14MHz帯の場合、2V系ならエレメントの全長が14m程度ですが、FB系なら18m程度となってしまいます。当局は、DX Engineering社のRG-58A/U(3D-2V相当)を用いました。波長短縮率を0.66として3.60mのケーブルを1本切り出します(計算上は3.51mですが余裕を持って)。その一方のケーブル端を短絡し、アンテナ・アナライザーで切り出した同軸ケーブルのインピーダンスを測定します。リアクタンス成分(X)がゼロとなるよう、少しずつ切り込んで完成です。その後、同じ長さの同軸ケーブルを3本切り出して下さい。リアクタンス(X)が測定できない場合は、3.51mのケーブルを4本切り出して下さい。給電点では同軸ケーブルの外皮の網線と芯線は他方の同軸ケーブルの外皮の網線と芯線とをそれぞれ接続します。一方、左右エレメントの中間部分の接続点では、同軸ケーブルの外皮の網線と他方の同軸ケーブルの芯線を互いに接続します。なお、左右エレメントの中間部分の接続点でのつなぎ目の強度を増すために、同軸ケーブルを直径10㎝程度のループ状にして結束バンド(ナイロン・ケーブル・タイ)で結んでいます。もちろん、つなぎ目は融着テープ等を用い、防水処理をして下さい。このつなぎ目部分の詳細は、以前のブログ『24MHz帯の傾斜型同軸ケーブル3段コーリニア・アーレイ・アンテナの製作』中の写真を御参照下さい。
アンテナの設置後、給電点でアンテナの入力インピーダンス(❘Z❘=R+X)を測定すると2.3-j5.0オームとなりました。LC回路によるマッチングをするため、Cパラレル回路で計算すると、L=0.17μHとC=1029.5pFとなり、スタブとして、それぞれ15㎝長の300オーム平行フィーダ線を、先端をショートして(L=0.17μH)、また3.10mの同軸ケーブルの先端をオープンにして(C=1029.5pF)、給電点と給電同軸ケーブルの間に繋ぎました。接続・設置完了後、給電同軸ケーブルのリグ側でSWR値を測定したところ、その値が2以上になってしまい、残念ながら、このままでは利用できませんでした。すでに報告されているように、アンテナ・アナライザーによるインピーダンスの測定値が、50オームから大きく外れると正確に測定できないためかも知れません。とくに、リアクタンス成分(X)が不正確になります。プロ用のアンテナ・アナライザーは、このような誤差は少ないのですが。
仕方なく、上図Bのアンテナに変更することにしました。再度、同軸ケーブルの切り出しです。波長短縮率を0.66として7.1mのケーブルを2本切り出し(計算上は7.03mですが余裕を持って)、ケーブル端を開放のまま、アンテナ・アナライザーで切り出した同軸ケーブルのインピーダンスを測定し、リアクタンス成分(X)がゼロとなるよう、少しずつ切り込んで完成です。リアクタンス(X)が測定できない場合は、7.03mのケーブルを2本切り出して下さい。給電点で同軸ケーブルの外皮の網線と他方の同軸ケーブルの芯線を互いに接続します。アンテナ・エレメントの両先端は解放のまま融着テープ等で防水処理をして下さい。なお、高いインピーダンス(理論的には無限大)の給電点と50オームの給電同軸ケーブルとのインピーダンスの整合のために『Qマッチング』を使用しました。つまり、上図Bに示しますように、1/4電気長に相当する300オームの平行フィーダー線をアンテナの給電点と給電同軸ケーブルとの間に挿入します。300オームの平行フィーダー線の速度定数は0.85でしたので5m程度を切り出し(計算上は4.68mですが余裕を持って)、アンテナの給電点に繋いだ後、給電同軸ケーブルを繋ぐ300オームの平行フィーダー線端を、リアクタンス成分(X)がゼロになるよう少しずつ切り込みました。最終的に300オームの平行フィーダー線端でのアンテナの入力インピーダンスは116-j1.2オームとなりました。このインダクタンス(R)値(116オーム)に基づき、巻き比3:2、つまり抵抗比 3²:2²=9:4(112.5オーム:50オーム)の電圧バランを自作することにしました。

上図に回路図を示しています。なお、回路図から分かるように、アンテナの2つの給電点(図中A)が給電同軸ケーブルの外皮(図中G、グラウンド)に対し同電位になっていないため、厳密には『バラン』でなく『アンアン』です。下の写真は、その『電圧アンアン』、Qマッチング用の300オームの平行フィーダー線端と給電同軸ケーブルの接続点を示しています。なお、これらは、防水のためにプラスチック・タッパー内にあり、写真は蓋を外した状態です。黄色矢印はQマッチング用の300オームの平行フィーダー線を、オレンジ色矢印は給電同軸ケーブルを示します。
(4)アンテナの輻射特性
上写真に完成後の測定結果を示しています。給電同軸ケーブルのリグ側で測定したアンテナの入力インピーダンスは14.08MHzで49.0-j7.8オーム、SWR値は1.17でした。アンテナの入力インピーダンスの周波数特性を上写真に示しています。黄色線はレジスタンス成分(R)、水色線はリアクタンス成分(X)です。帯域内でのSWR値(黄色線)も上写真に示しています。
なお、これまでの自作アンテナのブログ中で示してきたアンテナの輻射特性図ですが、現在のところ、MMANA-GALアプリでは、同軸ケーブルをアンテナ・エレメントとしたアンテナのシュミレーションが難しく、その輻射特性が得られません。具体的な利得やその打ち上げ角などが示せず、御容赦下さい。また、今回、設置環境の制約で、当局が設置したアンテナの高さが半波長(14MHz帯では約10m)よりも小さくなりました。この場合、ダイポール・アンテナでは、打ち上げ角が大きくなり、頭上や地表への輻射が多くなります。可能であるならば、是非、アンテナを半波長よりも高く設置して下さい。打ち上げ角が小さくなり、DXが良くなります。
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