10MHz帯ひし形(ダイヤモンド)ループアンテナの製作
現在、使用しているアンテナは2種類、10MHz帯のダイアモンド・ループアンテナと18MHz帯の2エレの垂直ワイヤー八木アンテナです。ともに同じ14m高の白樺の木に設置しています。もちろん、互いの干渉をできる限り抑えるために、放射エレメントは、上空から見れば互いに直角に設置されています。今回は、10MHz帯のダイアモンド・ループアンテナの製作方法を紹介します。18MHz帯の2エレの垂直ワイヤー八木アンテナの紹介は後日!
(1)10MHz帯のダイアモンド・ループアンテナは、2019年の4月中旬に設置しました。もうすでに3年間使っていることになります。長きに渡り風雨に曝されていますが、ほとんど補修することもなく、今日に至っています。ただ、白樺の木に葉が付いている時期(春から夏過ぎ)と落葉後の枝だけの季節(晩秋から早春)でアンテナの共振周波数にズレが見られます。たとえば、葉が生い茂った夏にアンテナの共振周波数を調整すると、落葉した晩秋には共振周波数が下がります。もちろん、大きなシフトでなく、ATUを使えば問題ないレベルのシフトです。恐らく、葉内の水分によってエレメント近傍に容量成分が加わり、一種の短縮アンテナになったと考えられます。同じ木に設置した18MHz帯の2エレ垂直八木アンテナでは、このような事象はありません。
さて、いつものように、MMANA-GALアンテナ・シミュレーション・アプリでエレメント長や構造の最適化をしました。最適化条件は、アンテナの入力インピーダンスを給電同軸ケーブルのインピーダンスに合わせ50オームとする、地上高をできるだけ高くする、打ち上げ角を低くする、の以上3点。その結果、下の図(上側)のようなアンテナの構造になりました。全長31.4mの長いアンテナです。給電点は黄色い丸の所で、当局の場合、地上高3mでした。計算上は、最大利得が打ち上げ角33度で6.22dBi(= 4.08dBd)でした。もちろん、アンテナの前後方向の8の字特性です。
(2)エレメントとして塩ビ皮膜の銅線(直径1㎜)を使いました。当局は幸いにも100フィート強(約33m)のケーブルが入手できたため、継ぎ目はありませんが、ループの頂点で繋いだ15m x 2でも問題ないと思います。どうしても斜辺の途中で継ぐ場合は『引っ張り強度』を考慮して下さい。木立の頂点付近の青い縦棒は、アンテナの頂点をできる限り高くするために設置したものです。当局は、グラスファイバー製伸縮式の『鯉のぼり用の支柱』を使いました。もちろん、金属製は干渉しますのでお勧めできません。問題は、6.8mもある水平の棒です。当局は2m程度のグラスファイバー棒(雪国用の積雪時の道路端のマーカー)を12本程度購入し、数本をステンレス製のホースクランプ(ホースバンド)で束ねて、それを繋ぎ合わせて6.8mとしました。この手間が大変なのですが、この方法を避けたい場合、上の図(下側)を参照下さい。立木の周りに十分な空間がある場合、非常に設置が簡単です。オレンジ色は強度のある紐を示しています(もちろん、金属製はだめです)。この場合、アンテナの幅(6.8m)を決めるために、先の水平棒の代わりに紐を追加しています。この幅は、アンテナのインピーダンスに影響し、最悪、SWRが落ちなくなります。なお、エレメントの切り出し時、SWRの調整のために、下方のエレメントワイヤーを少し長めに8m程度に切り出して下さい。
アンテナの下方の2本のケーブルを8mに切り出して設置し、アンテナ・アナライザーでアンテナのリアクタンス成分がゼロになるように切り込みました。その結果、図のように7.78mとなりました。なお、コモンモード電流対策として、自作の1:1強制バラン(フェライト・トロイダル・コア、FT240-43、直径6cm程度あります)を入れています。上の給電部の写真(画像が横向きになっています)でも示していますように、1:1強制バラン以外に7個のパッチンコア(防水のために透明なプラチューブで覆っています)と同じタイプのフェライト・トロイダル・コアに同軸ケーブルを10回程度巻いたフロートバランも追加しています。ただし、少しでも損失を避けるために1:1の強制バランだけでコモンモード電流対策は十分です。市販の1:1バランももちろんOKです。なお、避雷の目的で、木の根元付近での給電ケーブルにアンテナ同軸ケーブル用の避雷器(アレスター)の設置をお勧めします。
(3) 下図に完成後の測定結果を示しています。給電ケーブルのリグ側で測定したアンテナのインピーダンスの周波数特性を下の写真左に示しています。黄色線はレジスタンス成分、空色線はリアクタンス成分です。10.136MHzで|Z| = 39.73-j3.75 Ωでした。右写真にはすべてのパラメーターを表示しています。インピーダンスが先の値とほんのわずかに異なりますが、SWR値は1.24でした。リアクタンスが40オーム程度となりました。もう少しアンテナの幅(6.8m)を広くした方が良いようですが、実用的には問題ありません。次回メインテナンス時に水平棒を少し長くしようと思います。
(4) 当局は現在デジタルのFT8モードが中心ですが、10MHz帯は、当初、例えばPSKやJT65モードが流行り始めた頃はバンド内は閑散としていました。しかし、ここ数年、FT8モードが開発されて以降、この10MHz帯も人気が急上昇、現在では、狭い帯域(10.136から10.139MHzの3KHzの間)に通常30以上の局が犇めいています。ほぼ3年程度このアンテナを使っていますが、良く飛びます。アンテナは南北の8の字特性。早朝の運用が多いですが、北極圏越えでEUや東ヨーロッパなどは季節に関係なくQSOできます。南向きはVKやZLとの相性が良く、FBです。もちろん、春や秋にはJA、HL、YBやVRなどアジア局とのQSOもあります。
(5) ループアンテナは、その給電点が低くても打ち上げ角が小さいと言う特徴があるため、これまでループアンテナに拘って来ました。ループアンテナには三角形や四角形などいろいろな形がありますが、形はともかくその大きさから、この10MHz帯がループアンテナの設置下限周波数帯かも知れません。当局の夢として7MHz帯のループアンテナを設置したいのですが、難しいですね。20m程度の立木が必要になります。ローバンドはどうしても短縮アンテナにならざる負えません。もちろん、無短縮の、半波長高のダイポールアンテナなら問題ないですが。
de WJ2T