18MHz帯ひし形(ダイヤモンド)ループアンテナ)の製作

 

 これまでに、10、14、18、21、28MHz帯用の倒立型デルタループ・アンテナ(給電点は下端で、水平偏波)を製作して来ました。このアンテナの長所は、
(1)すべてのループ・アンテナに共通ですが、給電部の地上高が低くても、打ち上げ角が小さく、利得も大きい。例えば、最近まで使っていた14MHz帯の場合、給電部の地上高はわずか3mですが、利得は、打ち上げ角30度で6.8 dBiもあります。ダイポール・アンテナの場合、地上高3mだと大部分を頭上に放射することになります。
(2)計算長よりも少し長めにワイヤーを切って設置すれば、アンテナの下端で2本のエレメント・ワイヤーを切り詰めるだけでSWR値の調整が可能で、かなり簡単です。
(3)二等辺三角形の底辺長を斜辺長よりも短くすることで、アンテナの入力インピーダンスを50オームに近づけることができます。給電ケーブル(50オーム)とのインピーダンス整合が不要です。
(4)2波長ループ・アンテナとしても同調します。例えば14MHz帯用に調整したアンテナは28MHz帯のアンテナとして無調整で利用でき、十分な利得が得られます。ちなみに、ダイポール・アンテナの場合、2波長では輻射波が打ち消し合うためダメですが、3波長としては可能です。つまり、10MHz帯のアンテナは28MHz帯でも使えます。
(5)各種ループ・アンテナの共通の特徴ですが、ノイズが少なく「静か」です。直流的にショートしているためかも知れません。
逆に短所は、
(1)HF帯用の場合、アンテナが大きく、設置が難しい。7MHz帯以下のローバンドでは巨大になり、実用的でありません。当局は、幸いにも15m高の白樺の木があるので14MHz帯以上のHF帯で利用してきました(10MHz帯の場合は、他の立木も同時に利用しました。)。
(2)倒立型の場合、三角形の底辺部が最も高い場所になります。つまり、最も長く、重いエレメントを最も高い所に設置することとなります。従って、立木の最上端には設置不能。
 さて、一般に、利得をできる限り大きくし、打ち上げ角を小さくするには、やはり給電点を高くすることに尽きます。そこで、デルタループ・アンテナを諦め、ひし形(ダイヤモンド)ループ・アンテナを検討することにしました。倒立型デルタループ・アンテナの底辺エレメントを高くするよりも、ひし形ループ・アンテナの頂点を高くする方が容易です。たとえば、立木の最上端にポール1本を追加して高く設置することが可能で、アンテナ全体を高くすることができ、その結果、給電点も高くできます。また、ひし形の幅を調整することによってアンテナの入力インピーダンスを50オームにすることが可能で、給電同軸ケーブル(50オーム)とのインピーダンス・マッチングが不要となります。
 アンテナのシュミレーション・アプリMMANA-GAL(現在、Windows版のみ入手可能でMacOSやLinux版は未発表のようです)を用い、中心周波数を18.10MHzとして、利得、打ち上げ角、アンテナの入力インピーダンスを留意しながら、エレメント長の最適化を行い、設置しました。
 

 

 上図にアンテナのサイズを示しています(赤線はエレメントケーブル、青線はグラスファイバー棒、下端の赤丸が給電点。ひし形の上方ケーブル長5.2m、下方ケーブル長3.6m)。アンテナの下方のケーブルを4mに切り出して設置し、アンテナ・アナライザーでアンテナのリアクタンス成分がゼロになるように切り込みました。その結果、図のように3.6mとなりました。当然ながら、この長さは設置条件によってわずかに変化します。完全な「ひし形」ではありませんが、分類上「ひし形アンテナ」としておきます。アンテナの入力インピーダンスのリアクタンス成分が測定できない場合は、単体のSWR計、またはアンテナをリグに仮に接続してリグ内臓のSWR計を用い、SWR値が最小になるようにアンテナ下方の2本のケーブルを切り込んで下さい。SWRの最小値とアンテナの共振周波数との関係を利用する場合は、例えば、SWR値が最小の周波数が17.7MHzだった場合、下方ケーブルをそれぞれ18cm切断します(9cm = 100kHzの2本分、でも実際は切り過ぎないようにするため、数cmずつ切り込んで下さい)。SWR値が最小になる周波数が18.1MHz付近に来るはずです。SWR値が2以下なら実用上問題ありません。
 コモンモード電流対策ですが、11cm径の塩ビパイプに同軸ケーブルRG-58U(3D2V相当)を7回巻いたチョークバランと、念のためにパッチンコアを5個、アンテナ直下の給電同軸ケーブルに追加しています。(実際、これらを付加したものがコモンモード電流に対してどの程度のインピーダンスを持つのか測定していませんが、今のところコモンモード電流による障害は発生していません。)完璧さを追求されるなら1:1バランをお勧めします。
 

 上図は、アンテナの調整後、アンテナ給電点でなく、給電ケーブルのリグ側で測定したアンテナのインピーダンス特性です。リアクタンス成分(X)がかなり残っていますが、SWR値が1.3程度でした。ATUなしで問題なく使えます。
 

 アンテナの設置環境でのアンテナ特性をMMANA-GALでシュミレーションした結果を上図に示しています。いわゆる8の字特性で、利得に関しては、アンテナの前後方向で最大、打ち上げ角20.7度で8.71dBi (= 6.56dBd)となりました。あくまでも計算値で、参考程度に。
 当局は主にデジタルモード、とくに最近はFT8モードを中心に運用していますが、良く「飛び」ます。EUなどは問題なくQSOできます(当局のQTHは米国東海岸)。このひし形ループ・アンテナ、すでに10MHz帯用と14MHz帯用も自作して運用していますが、DXに優れています。お勧めです。

 

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