7MHz帯用同軸ケーブルをエレメントにしたクロス給電によるダイポールアンテナ (クロス・フォールデット・ダイポールアンテナ)の製作
米国のFCC免許を取得後、WAS(米国全州交信)アワードを獲得するために、JA2AZZ局によって提唱された『(同軸ケーブルを放射エレメントとした)クロス給電方式ダイポール・アンテナ』、別名『クロス・フォールデット・ダイポール・アンテナ』を自作し、主に7MHz帯で運用していました(14MHz帯用としてデルタループ・アンテナを常設していますが)。WASアワード取得後、18、24や28MHz帯を中心にアンテナを自作し、第24太陽黒点サークルを楽しんで来ました。最近、7MHz帯に戻るに際し、どのようなアンテナにするべきか考えていたのですが、どうも良い案が浮かびませんでした。設置環境が悪く、垂直系アンテナに限られることがネックとなっていました。また、今回は、国内よりもDXを狙いたいので、打ち上げ角の低いアンテナを考えていました。結局、元のアンテナ、クロス給電方式ダイポール・アンテナを再度設置することにしました。
さて、このアンテナの詳細はJA2AZZ局やJA2AEP局によって紹介されていますし、動作原理は、当局がすでに古いブログ(同軸ケーブルを使用したコーリニア・アレイ・ダイポール・アンテナの動作原理とその24MHz帯アンテナの製作)で解説しています。御参照下さい。
以前、設置していたものは10MHz帯用に改造したため、新規に作成する必要があります。運用中心周波数を7.070MHzとし、同軸ケーブルの速度係数を0.66として7.1mのケーブルを2本切り出し(計算上は7.00mですが余裕を持って)、アンテナ・アナライザーでリアクタンスがゼロとなるよう、少しずつ切り込んで完成です。切り出したアンテナのエレメントは両先端をショート(図中の赤い線)して設置するので、それぞれ切り出したエレメント用同軸ケーブルは、給電点から見ればインピーダンスが無限大となります。給電点では、同軸ケーブルの外皮の網線と他方のケーブルの芯線を互いに接続します。高いインピーダンスの給電点と50オームの給電同軸ケーブルとのインピーダンスの整合のために、JA2AEP局が提唱したQマッチングを使用しました。つまり、1/4電気長に相当する300オームの平行フィーダー線をアンテナの給電点と50オームの給電同軸ケーブルとの間に繋ぎました。300オームの平行フィーダー線の速度定数は0.88でしたので、9.5m程度を切り出し(計算上は9.32mですが余裕を持って)、リアクタンスがゼロになるよう、少しずつ切り込みました。アンテナエレメントである50オームの同軸ケーブル(L1)とQマッチング部の300オームの平行フィーダー線(L2)の寸法を上図に示しています。それぞれの長さは、使用する同軸ケーブルや平行フィーダー線の速度係数(波長短縮率)に依存します。メーカー名とケーブルの型番が分かれば、ネットで調べることが可能です。たとえば、藤倉電線(フジクラ)社製などでは、カタログに明記されています。
さて、高さ15m程度の白樺の木に垂直に設置し、給電同軸ケーブル端でSWRを測定すると、なんと12でした。前回、自作したときは、一発で上手くできたのですが、困りました。
普通のアンテナの場合、このような高いSWRが得られた場合は、断線や接続ミスが考えられますが、どうしたものか。まずは、1つずつ確認作業です。給電ケーブルのコネクターの接触不良(コネクターの芯線の半田がしばしば外れる)や各接続点の半田溶接の確認、以上すべてOKでした。次に、2本の同軸ケーブルエレメントの接続を給電点で外し、上下それぞれの同軸ケーブルエレメントのインピーダンスを測定しました。この状態では、それぞれの先端がショートされているので、正常であれば、給電点で測定したインピーダンスは無限大を示すはずです。上部のエレメントは3800オーム程度を示す(測定限界)のですが、下部のエレメントは1500オーム程度を示します。恐らく、エレメントの下端と地面との距離が1m程度しかなく、その影響を受けていると思われます。つまり、アンテナ動作時は、下部のエレメントは、先端をショートした1/4波長のケーブルと同等ですから、先端で最も大きな電流が流れ、地面の影響が大きくなると思われます。仕方なくケーブルを延長し(大きな電流が流れる部分でケーブルを付加することは良くないのですが、仕方ありません)、再度切り込んでインピーダンスが3000オーム以上になるようにしました(当然ながら、水平にアンテナを設置した場合、このような問題は発生しないと思います)。再度、Qマッチング用の300オームの平行フィーダー線を繋いでSWRを測定しますと、それでもSWRが8程度を示します。300オームの平行フィーダー線と50オームの給電同軸ケーブルとの間でアンテナのインピーダンスを計って見ますと、レジスタンスが大きく(250オーム程度)、リアクタンスも大きなマイナス値(-j200オーム程度)を示します。結局、Qマッチング用の300オームの平行フィーダー線を切り込んで、50オームに整合させる方法しかなさそうです。最終的に、リアクタンスをゼロにするとレジスタンスが70オーム程度になり、SWRは7.070MHzで1.4程度に下がりました。実用的には問題ありません。なお、11cm径の上下水道用塩ビパイプに同軸ケーブルRG-58U(3D2V相当)を7回巻いたチョークバランと、念のためにパッチンコアを5個、給電同軸ケーブルに追加し、コモンモード電流対策を講じています(実際、これで有効か確認ができていませんが)。Qマッチング用の300オームの平行フィーダー線を含めた給電ケーブルは、放射エレメントとの干渉を避けるために、10m程度離れた隣の木から水平に設置されています。ちなみに、リグ側の給電ケーブル端で測定した最低SWRは7.16MHzで1.0、7MHz帯の両端では、7.00MHzで2.0、7.30MHzで1.8でした(米国での7MHz帯)。下の写真はアンテナのインピーダンスを示しています。実線はレジスタンス成分、破線はリアクタンス成分です。今回使用した放射エレメント用の同軸ケーブルはRG-213/Uです。直径が1cm程度で、8D2V程度の太さがあります。細いものを使うと工作が楽ですが、帯域が狭くなるかも知れません。
このアンテナは一種の短縮アンテナです。通常の7MHz帯用ダイポール・アンテナなら20m程度ですが、このアンテナの全長はわずかに14mです。短縮アンテナは、短縮率が大きいほどアンテナの性能が低下する傾向があります。しかし、このアンテナの場合、垂直に設置することで利点が生まれます。すなわち、エレメントの両端に最大の輻射電流が流れるため、エレメントの中央に最大の輻射電流が流れる、通常のダイポールアンテナに比べて、最大輻射点を高くすることができます。(上端は良いが、下端の効果はどうなのか??自問です!)ボトムローディングやセンターローディングアンテナよりもトップローディングアンテナの方が最大輻射点を高くできることと類似しています。
入力インピーダンスが極端に大きなアンテナの場合、50オームの給電同軸ケーブルとのマッチングが難しく、その自作は上級者向きです。また、リアクタンスが測定可能なアンテナ・アナライザーが必須です(高いインピーダンスを正確に測定することはプロ用でない限り難しいのですが)。7MHz帯用として、初心者、中級者用としては、やはり半波長高の水平ダイポール・アンテナが最も良いのかも知れません。しかし、そのサイズから考えると、残念ながら、限られた局だけが設置可能でしょう。
実際に、このアンテナで運用した結果ですが、まだ数週間ですがFBです。デジタルモード(JT65AやJT9-1)が中心ですが、EUとの交信も安定していますし、交換したQSTに大きな差がありません。VKやZL局が入感していますし、JAとのQSOも楽しみです(当局のQTHは米国東海岸で、オープンしない限りJAとは容易でないのですが。せめて当局が西海岸や中西部であったなら)。
<<2016年1月6日作成掲示>> de WJ2T