28MHz帯のダブル・デルタループ・アンテナ

(10m Band Double Delta-Loop Antenna)の製作


(1) デルタループアンテナ
  すでに、いろいろなデルタループ・アンテナを作成して来ました。とくに、正三角形でなく、二等辺三角形のものを重点的に検討して来ました。その理由は、アンテナの入力インピーダンスが正三角形タイプ(120オーム程度)よりも小さくなり、給電ケーブルの抵抗値の50オームに近づけることが可能だからです。詳細は、これまでのブログを御参照下さい。だだし、二等辺三角形の頂点から給電する場合、底辺の長さを斜辺の長さに比べてかなり小さくしないと給電ケーブルの抵抗値50オームにマッチさせることはできません(JA7RKB局が、すでにモービルハム誌で報告)。つまり、細長の二等辺三角形となり、背の高いアンテナとなります。また、水平偏波の輻射電流が流れるエレメント(二等辺三角形の底辺)の長さが短く、効率が悪いような気がします(MMANA-GALでアンテナのシュミュレーションをすると、正三角形のものとは遜色ないのですが、実際、スリム化すると性能が少し劣るようです)。そこで、正三角形のデルタループ・アンテナに近い構造とし、しかもアンテナの入力インピーダンスが給電ケーブルの抵抗値の50オームに近くなるアンテナを試行錯誤した結果、二等辺三角形の頂点から給電するデルタループ・アンテナを2つ並列結合したデルタループ・アンテナを思い付きました。と言っても、このアンテナ、すでに『ダブル・デルタループ・アンテナ』として報告されているので、珍しくもないのですが、今回は、垂直に接地し、打ち上げ角をできる限り低くしました。
 いつもながら、15m程度の白樺の木立にアンテナを結わい付けるので、サイズを考えると28MHz帯となりました。ちなみに、ループアンテナは、意外にも、他の周波数帯にATUを使えばQRVできるので(当局のもう1つのアンテナ、14MHz帯の倒立型スリム・デルタループ・アンテナは、7、10、18、21、24、28MHzで波が出せます。特に28MHz帯は2波長デルタループとしてATUなしで良く飛びます。7、10、21MHz帯は、頭上に向かって波を出しているのか、ローカルにしか飛びませんが)、別途検討するつもりです。
 構造上、バタフライ・アンテナと類似していますが、給電方法(給電点)が異なります。バタフライ・アンテナは、分類上、フォールディド(折り返し)型のダイポール・アンテナです。ちなみに、バタフライ・アンテナでは、たとえば、上の二等辺三角形の左斜辺と下の二等辺三角形の左斜辺に給電します。

 


(2) アンテナの製作
 あらかじめアンテナ・シュミレーター・アプリのMMANA-GALを用い、寸法の最適化を行い、上図のようなサイズとなりました。最適化に際し、給電点は中央の赤丸点とし、二等辺三角形の底辺は、2本のグラスファイバー棒の長さとして3.4mに固定、二等辺三角形の高さのみを変化させて、最良点を決定しました。
 エレメントは、直径0.8mmの塩ビ皮膜銅線で、前回までは耐圧1000Vを使いましたが、今回は入手できず、300Vのものを用いました。RTTYでベアフット(200W)で波を出しても大丈夫かどうか心配ですが! 3.4mの二等辺三角形の底辺の水平のエレメントは、それぞれグラスファイバー棒にプラスチック・タイで縛り付け、斜辺のエレメントと半田付けしました。もちろん、融着テープによる防水も忘れずに。二等辺三角形の斜辺のエレメントは約4mとし、実際に木立に設置したのち、アンテナ・アナライザーでアンテナのリアクタンス成分(X)を測定しながら、4本の斜辺のエレメントを給電点で上下左右等しく切り込んで(当局は10cm刻み、共振周波数がほぼ300kHzずつ上昇)ゼロに追い込みました(共振周波数を希望周波数、28.075MHzに合わせる)。最終的に、アンテナの給電点での入力インピーダンス(Z)は、48 - j5.2オームでした(アンテナの最低地上高は4m)。レジスタンス成分(R)が50オームから大きく外れる場合(30や70オームとか)は、3.4mのエレメントを伸ばすか、短くしないといけませんが、ATUでカバーできる範囲でしょうから、そのままに!
 ちなみに、ループ・アンテナでは、理論的にコモンモード電流は生じないと言うことですが、念のために給電点直下の給電同軸ケーブルに5個のパッチン・コアを数珠繋ぎにし、また同軸ケーブルを12㎝径の上下水道用塩ビパイプに7回巻いて作ったチョークバラン(フロートバラン)も挿入しています。
 垂直にアンテナを設置していますから、給電ケーブルの取り回しがたいへんです。当局は、10m程度はなれた隣の木から水平に給電ケーブルを繋いでいます。くれぐれも、アンテナの真下から垂直に給電ケーブルを上げないように。干渉してSWR値が下がらず、また電波の輻射特性が期待されたようになりません。ちなみに、このアンテナ、MMANA-GALによりますと、水平に接地しても、打ち上げ角が少し大きくなる(19度から25度へ)程度です。最大利得はそれほど変わりません。(HFで水平にアンテナを設置する場所があれば良いのですが、なかなか難しい。UHFの場合、サイズをそのまま縮小して下さい。アンテナの水平設置で垂直偏波となります。)
 リグ側給電ケーブル端で、アンテナ・アナライザー(RigExpert AA-30)で測定したSWR値は、28.0MHzから29.7MHzのバンドの両端がそれぞれ1.4と1.8でした。ループ・アンテナの特徴の1つですが、帯域がとても広いです。28.076MHzにおいてリグ内臓のSWR計では、針が1に張り付いて動きません。リグの回路設計でSWR値の精度を甘くしているのかな、ヤエスさん?(笑)

(3) アンテナの飛び、受けは?

 アンテナの設置後、それほど時間が経っていないので、詳細は分かりませんが、14MHz帯の倒立型スリム・デルタループ・アンテナ(二等辺三角形の底辺4.3m、斜辺8.2m、給電点地上高3m)を2波長デルタ・ループとして使用した場合と比較しました(打上角13度と50度でGain = 6.4 dBi  、一方、今回作成のツイン・デルタループ・アンテナは、打上角19度でGain = 10 dBi: 両アンテナとも最大輻射ローブは南北方向。上記計算はMMANA-GALによる)。南米や北極越えEUを聞き比べて見たところ、大きな差はなさそうです。カスカスのシグナルで差が出て来るのではないかと期待しています。今後、「飛び」に関しては、デジタルのJT9-1モード、もしくはJT65モードでCQを出し、そのときの各局の受信強度をhttp://hamspots.netで収集して比較したいと思います。

 

<<2014年 4月16日作成掲示、2025年5月12日改訂>> de WJ2T