夜遅くになると停電が解消されたらしく、近くの店でロックバンドライブが始まり、ずっとうるさくてなかなか眠れなかった。深夜3時頃ふと目覚めて、読書灯をつけてみるが、また停電のようだ。ベッドから出て窓から街を見たが、見える範囲全てが真っ暗。これで首都なのかと思う。こんなんじゃ寝過ごしそうで心配になる。そのままうつらうつらしながら、4時に起きる。ローソクの灯でコンタクトレンズを入れてパッキングする。真っ暗の中、持参のヘッドライトで階段を恐る恐る降りると、兄ちゃん3人が、フロントのソファで雑魚寝している。一人を起して、ジーパンと本のデポジットを頼む。真っ暗の玄関先で迎えの車を待ち、5:30出発。今日はこのまま9時まで停電らしい。
空港内の国内線乗り場は、トレッキング客半分、ネパール人半分でちょっと混んでいる。ガイドのナビンが、チャイを買ってくれる。美味い。客一人当たりの手荷物量が決まっているらしく、ナビンの指示で、乗り合いのネパール人の荷物を分配される。なんか麻薬とか悪いもんじゃないだろうなと心配になるが、まあ仕方がない。SitaAirの2列20人乗りほどの小さな双発機で、8:30出発。すぐに山岳地帯に入り、30分ほどのフライトで、険しい山の中腹の崖に作られたLukla(ルクラ2840m)空港に降りる。今は、世界初登頂を果たしたテンジンとヒラリー卿にちなんで、テンジン・ヒラリー空港と名付けられている。世界一危険な空港と言われていて、崖のてっぺんに、へばりつくような、わずか100メートルほどの短い坂道の滑走路が作られている。空母の実物は見たことがないが、明らかに空母の滑走路より短い。着陸のときはその坂道の登りを利用して減速、離陸の時はその下りを利用して崖から落ちるように離陸するようだ。しかし、もしうまくいかなかった場合は、山にぶつかるか、崖下に落ちるしかないので、一発でおしまいだ。
降りてすぐに歩き出す。ナビンはLukla(2840m)の出身らしく、友人が多いようで、会うたびに世間話に付き合わされる。まあ慌てても仕方がない。ビスターレビスターレ(ネパール語でゆっくりゆっくりという意味らしい)。
日なたは暖かいが、日陰の水たまりは凍っている。しかし日差しが強く、すぐに汗をかき始め、コート、フリースを脱いて半袖で歩く。1時間ほどで、Ghadの村に。ナビンの知り合いの民家で昼食。ダルバードを食べる。ダルバードはネパールのソウルフードで、ご飯と漬物と豆スープ。漬物が怪しい感じだが美味い。しお茶(ソチャ-・シェルパ茶)を4杯ほど飲む。
道は石畳のようになっていて整備されているが、道中に牛(ヤク)が多く、糞も多い。ものすごい高い谷にかかる吊り橋を渡る。高所恐怖症にはかなりつらく、腰が引けるが、渡らないことにはどうしようもないわけで、頑張る。15時、Phakding(パクディン 2610m)に着く。家が5,6軒。オフシーズンのようで旅人もいない。HotelBeerGarden208号室。ウレタンマットのベッドのみで、デスクも椅子もトイレもない。夕食はまたダルバード。日が沈むとモーレツに寒く、持参のシェラフの上に廊下にあった毛布を掛けて寝る。今後が心配になるほどだ。
電気もないので、20時には就寝。4時頃目覚める。部屋の中でも息が白く、ヘッドライトで手を出して本を読もうとしたが、手がかじかんで、寝袋にこもる。6時半頃、のこのこと起きだしてパッキング。チャベタンブレッド(チベットパン)とゆで卵の朝食を食べて、8時出発。
石畳の急登道とものすごい高い吊り橋を繰り返す。タムセルク(6608m)とクルムカンガルーを見上げながら、汗だくになって歩く。綿のTシャツは汗をかくと冷える。日陰に入ると寒い。しかも昨夜洗濯したが、全く乾かず、朝には凍っていたのでそのまま着たが失敗。途中で、ユニクロのヒートテックシャツのみにすると快適。Tシャツはザックに括り付けて乾かす。
Monjoの国立公園事務所に寄って、TIMS許可証(Trekking Information Management System)を発行してもらう(1000Rp)。Jorsale(ジョルサーレ2804m)でランチ。炒飯を食べる。
JorsaleからNamcheまでが、高度差600mの坂道で、ガイドブックには高山病になりやすい4ポイントのひとつに挙げられている。確かにきつい。ゆっくりゆっくり。ナビンからもビスターレビスターレと繰り返される。ナンボツアンボ川とドウードウコシ川の合流部に差し掛かる。吊り橋は高さ300mくらいで、ゆらゆらと揺れて最高に怖い。途中、ついにエベレスト(Chomolungma チョモランマ8848m)山頂を見る。世界最高の山だが、サガルマータ国立公園内の山岳地帯の一番奥に位置するため、富士山のようにどこからでも見えるものではない。このビューポイントからはLhotze(ローツエ8516m, 南岳)とNuptse(ヌプチェ7879m, 西岳)の3岳が見られる最高のポイント。ここで初めて日本人トレッカーに会う。60歳くらいの夫婦と息子さん。Namcheまでのミニトレックの帰りだそうだ。ものすごく寒かったけど綺麗だったなあと感激している。やっぱり夜の寒さが心配。
ヘトヘトになって、Namche(ナムチェ3440m)に着く。一服してから街を散策する。かなり大きな街で、ロッジも30軒ほどあり、様々なレストランや土産物屋もあるが、やはりオフシーズンで休みになっており、トレッカーもほとんどいない。今日の宿は、Gongde View Lodge。その名の通り、部屋からは、Gongde Peakがよく見える。裏側からは、Thamserk(タムセルク6608m)やクルムカンガルーが夕日に映えている。ナビンにシェルパ休憩所に連れていかれ、チャイとモモ(ネパール風餃子)を食べる。辛いタレと相まって相当に美味い。ロッジに戻り、夕飯。チキンカレーとカーリックスープ、レモンティ。泊り客は自分ひとりのようで、ヤクの糞のストーブの周りに家族全員集まって談笑。と言ってもシェルパ語。親戚が長野で働いているらしい。ここは自家発電で電気がある。なんとなく頭痛を感じながら9時就寝。




