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BESPOKE

芸術をめぐる冒険と、最近思うこと、いろいろ。

女優。

初めて中谷さんの作品を観たのは
「リング」という映画だったと思う。
鈴木光司のホラー小説の映画化で、
当時大ヒットし、ホラーブームを巻き起こした。
今では大御所の出演陣の中で、
異質な光を放っていた。
日本人離れした美しさと、独特の雰囲気。
説明のできない、違和感。

彼女は、坂本龍一プロデュースで
アーティスト活動もしていた。
当時TKファミリーとビジュアル系バンド全盛期、
それもまた異質なオーラを放つ楽曲だった。
「砂の果実」という、彼女のヒット曲。
教授の娘、坂本美雨が歌う「THE OTHER SIDE OF LOVE」の日本語版。
売野雅勇氏の歌詞の美しさと、彼女のささやくような歌声、
教授のノスタルジックなピアノの旋律。
他のどれとも違う、彼女の世界観を表現していた。

そして「ケイゾク」。
堤幸彦監督、西荻弓江脚本のドラマ。
不思議なサスペンスを軸に、主人公達のコミカルな演技とシュールな演出は
トレンディードラマも飽きられてきた頃の
カウンターパンチとしては強烈な作品だった。
近年「ケイゾク」シリーズは「SPEC」として完結した。

彼女がバラエティ番組「アナザースカイ」で、
パリに住んでいたことや、
フランスの文化が大好きな事などを語っているのを見てなるほどと思った。
彼女が放つ独特な個性は、日本の文化とは異なるものから
インスピレーションを得ているのだと。
彼女が和の文化に関心があるのは
ベースがフランスやヨーロッパなどの文化をベースにしているからなのだ。

ファッションについても、当然のことながらこだわりがある。
彼女が音楽番組に出演した時の衣装は
全盛期のコムデギャルソンのコレクションラインで
パリコレでモデルが着ていたものだったし、
PV「天国より野蛮」で来ていたのは
マルタンマルジェラのトルソージャケットだ。
彼女の公言する大好きなブランド「LISIERE」も、
彼女がフランスに住んでいる時に出会った友人がデザイナーを務める。
エレガントで美しい仕立て、独特な美意識の上に浮かび上がるアヴァンギャルドさは
まさに彼女にふさわしい洋服だと思う。
また、マリオンコティヤールが「君と歩く世界」のプロモーションで来日した時に
ゲストとして登場した時の衣装は
エディスリマンが手掛けるSAINT LAURENTのスモーキングだった。
当然のことながら抜群に似合っていた。

彼女の書く文章も素晴らしい。
多くのエッセイを執筆しているのでそちらもお勧め。
パリはもちろん、インドなどを旅行して体験した数々の物語は、
稚拙な作家が描いた小説より断然面白い。
言葉使いの美しさも、感じ取れるはず。
彼女がトーク番組などで話す言葉の美しさや、立ち振る舞いは、
そういう全ての要素が絡み合って構成されているのであって、
付焼刃的なテクニックではない。
彼女の中にあるベース、培ってきた彼女自身の文化が否応なく放つ美しさなのだから。

まだ子供だった頃の自分にとって
中谷美紀という存在は、他の誰とも違う
オリジナリティを持った美しさを放つ表現者として
憧れだったように思う。
中身の空っぽな、薄っぺらいマネキンではなく、
内面から解き放つ美をもった人。
今なお、映画やドラマで活躍する彼女を見て
特別な思いが込み上げてきた。

そういう人になりたい。