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芸術をめぐる冒険と、最近思うこと、いろいろ。

当時ギャルソンは新卒の応募を公式に行っておりませんでした。
一部の大手専門学校などには求人表を出していたみたいですが、
いつ応募開始で、締め切りはいつで、
いつ面接かなど全く情報がなかったのです。

今でこそホームページがありますが、
当時は店舗情報ですら公表しておらず、
謎に包まれたブランドでした。
そこがギャルソンの魅力の一つでもありました。
こちらから積極的にアプローチしないと
何も解らないようになっていましたし、
本店である青山店はブランドロゴすらなかった。
コムデギャルソンというブランドは
だれにでもウェルカムという姿勢はとっていなかったんです。
店員さんも、客によってはまったく声をかけないし
商品の問い合わせをしてもまともに取り合ってくれない。
常連になって初めて、
「こんにちは」と言ってもらえたのです。

なので、ありったけの勇気を振り絞り、
本社へ電話をかけ、
人事の方に新卒の募集を確認しました。
「はい、ギャルソンです。」
「あの、新卒の募集要項についてお聞きしたいのですが…」
「おまちください。」
こんな感じてすごくそっけない対応。
「とりあえず履歴書送ってください。」
ガチャ、みたいな…。
住所も宛ても何も教えてくれません。

なので本社の電話番号を教えてくれた
青山店の店員さんに住所を教えてもらい、
やっと履歴書を送ることが出来ました。
ここまでくるのにもだいぶ苦労しました。
何も知らない子供だった私には、簡単なことですらハードルが高かったのです。
自分はコムデギャルソンを受験する質の人間ではありませんでした。
自分の確固たる意思があり、
自分の表現方法を解っていて、
自分に根拠のある自信がある人間。
そして圧倒的なセンスがある人が
初めてその門をたたける
会社だったのですから。
スタートラインにも立てていなかったのだと
後に気付かされました。

どこにでもあるような、
なくなっても誰も困らないような、
誰が働いていようとも成り立つような、
ブランドではないのです。
世界に影響力を持ち、
世界のデザイナーに影響を与え、
世界のブランド達と戦えるのは、
日本の中で、コムデギャルソンしかないのです。

面接をしていただいただけでもありがたいと
今では思っています。

そのお話は、この次に…。