「志望動機と自己PRをお願いします。」
「どういうファッションが好きですか?」
「洋服を買う時、店員の意見を聞きますか?」
「デニムははきますか?」
やや広めの小部屋に
シンプルなテーブルと椅子が置かれた空間で
淡々と面接は進んでいった。
他に無駄なものが何もない部屋。
黒いフローリングと白い壁。
終始川久保氏の表情が高揚することはなかった。
きっと自分の事に興味を持ってくれていなかったのだろう。
時が進むにつれ、
質問は一般的な企業とは違ってきた。
川久保氏が私の事をどう思っていたのかは
良くわからなかったが、私にはとても楽しい時間だった。
世界で活躍するデザイナーと
こうやって御話ができるのだから。
遅刻していなかったらどんなに良かったろうか。
どこかあきらめも含めて
楽しむ余裕があったのかもしれない。
どんな状況であれ自分の人生にとって
とても大きな瞬間だった事は間違いない。
終わった後のなんとも言えない気持ちは
二度と思いだしたくない。
受付の社員さんに
「交通費請求できますよ。」と言われたが
「大丈夫です」としか答えられなかった。
交通費をもらうために来たのではないのだから。