それまでにも大きな挫折はあった。
私は学習の力がないのか、人生失敗ばかりで、
しなくてもいい事ばかりしては
絶望と後悔の繰り返し。
それは今も同じだ。
あの頃と変わっていない。
沢山のファッションの企業へ応募し、
面接を受けたが、そんな心持では受かるはずもなく、
ただただ時間ばかりが過ぎていった。
見た目も美しくないし、性格もよくない。
何の才能も、取り柄もなかった。
周りからはよくこう言われた、
「自分の好きな事が解っているなんて、幸せな事だよ。」と。
でも、彼等はわかっていない。
好きな事が解っているのに、それが出来ない事が
どれだけ不幸なのかを。
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川久保氏の面接以来、
コムデギャルソンは少しづつ着なくなっていった。
しばらくは、どうしてもギャルソンが
気になってしょうがなかった。
今期のコレクションのテーマは何かなとか、
JUNYAやTAOがギャルソンを継いだらどうなるかなとか、
ギャルソン内の新しいブランドやショップ形態についてとか。
雑誌だってギャルソンの特集だったら買っていたし、
高価な関連書籍も買っていた。
でもある事がきっかけで、完全に離れることとなった。
私は結局どこにも採用されず、
ただフラフラしている日々で、
世間の新卒はついに入社し、新社会人の扉を開く頃になっていた。
そんな時、青山店に遊びに行くと
見慣れない顔の店員がいた。
奇抜なセンスと抜群の着こなしに見とれた。
何より御顔立ちが、ギャルソンの雰囲気に抜群にマッチしていた。
仲の良かった店員さんに話を聞いたところ、
彼は新卒入社の子なのだそうだ。
しかも、あの川久保氏本人がスカウトしてきた
期待の新人だそうだ。
それを聞いた時、本格的に自分の中の何かが崩壊したように思う。
自分には見抜きもしなかった川久保氏が
自ら見つけてきた逸材との差をまじまじと見せつけられた。
彼はまさにコムデギャルソンで働くべき
容姿と、才能を持っていた。
一方自分はこのありさま。
才能なしの烙印を押されたのにもかかわらず、
未練がましく毎週青山の本店に通う日々。
せっかく貯めたバイト代も使い果たし、
何の実りもない生活。
就職先だって決まっていないのに、
平気生きている。
本当に自分が嫌になった。
居ても居なくてもいい存在だ。
それは自分が忌み嫌っていた
コムデギャルソン以外の洋服たちと同じだった。
同じようなデザインに、同じような素材。
海外のビックメゾンのパクリ。
総合的な粗悪品。
なくたって誰も困らない、
だって代わりはいくらでもあるのだから。
それは自分自身だった。
でもコムデギャルソンは、なくなったら
代わりなどない。
彼もそうだろう。
だから世界一のデザイナーに見出されたのだ。