劇団このゆびとまれさんの「童謡忌譚」の感想です♪
盛岡劇場タウンホール、いつも開演5分前くらいにつくのですが、
なぜか!いつも前列がぼちぼち空いており、
今回も前列で見ることができました。
コンタクトレンズを装着するようになって、まえよりお芝居も
美術展も映画もくっきりはっきり楽しめるようになりましたが、
それでも前列がすきです。
盛岡劇場タウンホールはこじんまりとしているので、
後ろの席でも見づらいということはないと思いますが、
役者さんの裸足の足の裏の皺まで数えられるほど近い方が
私は断然すきです。
舞台セット、というか装置がおもしろい効果をあげていました。
私が連想したのは、ルネ・マグリットの「白紙委任状」。
最初、お芝居が始まる前の舞台には、森の中の背景が
ありました。
この森の背景は二枚のパネルで、場面に応じて両袖に
ぐーっと収納されるのですが、
森の背景のパネル2枚と、物語が進行するある田舎の
お屋敷の壁を表すこげ茶色の壁、
さらに主人公である少女(高校生くらいか?)の妹の
ベッドルームを表す、黒いカーテン。額縁のようでもあり、
幼い妹の覗いてはならない内面を暗示するようでもある…。
最初はテーブルに向かい合う、叔母と姪。
どうやら高校生らしい少女は妹とともに、
交通事故で両親を亡くして田舎の叔母さんの家に引き取られたのらしい。女学生らしい清楚な服装の姪は、しっかりした口調と礼儀正しい挙措から、裕福ない家の令嬢であったことが察せられるのだが、
その表情はどことなく固く、こわばっている。
上品で優しい叔母さんと、両親を亡くし、小さい妹を守らなければという意識で固く、緊張している姉娘、というふうに見えるのだが、じつは…。
妹のベッドルーム。そこにはおそらく10歳くらいの幼い、髪を長めのお河童にした女の子がぽつんと座っていた。手元には赤い函。そこに銀色の髪に狐のお面をかぶって、白拍子のなりをした、狐さんが遊びに来る。
妹は異形の世界が視えるので、両親がそれを恐れて小学校には通わせず、家に閉じ込めていたのだった。社の森の狐も、本来誰にも視えるものではないのだが、妹にだけは視え、姉にも叔母にも、狐がそばにいることは分からないのだった。
この狐さんと妹は無邪気に遊ぶのだが、やがて狐さんが姉娘のことを思っているのを知り、妹は姉を誰にも渡したくない、という強烈な独占欲から、ついに惨劇を呼んでしまう。
妹が時々口にする、「あの子」とは誰だったのか。
私はパターンすぎるだろうと言われればその通りだけど、妹は両親からの虐待によって、
多重人格になっていたんじゃないかなーと。
虐待のことは妹がキャラキャラ笑いながら狐さんに語るのですが、
小学校に通わせず、通わせてほしいと希うと暴力によって抑えつけられ、
ずっと家に閉じ込められていた…。
(問題の赤い函。タウンホールへの階段にありましたが、中にはあれが…)
赤い函に仕舞われたものは、姉の体の一カ所だった、と思うだけでいいのだろうか。
なんとなくもっといろんなものがおさめられていそうな、
魍魎の匣という気もします。
妹は誰にも渡したくないものをみな、函に封じ込めてきたのでしょう。
両親が彼女を封じ込めてきたように。
出演は狐さん(狐さんでいいのか?でもこの狐さんが社の森の主にしては
ラブリーなんですよ。仕草とか跳ね方とか)、姉、妹、叔母の4人なのですが、
舞台装置や音響、照明がこの奇譚ならぬ忌譚を引き立てていました。
どんなお話だったかというより、ひとつの場面、衣裳、音楽(わらべ歌)が
印象に残る舞台でした。
最後の場面で、妹の白い細い首にかけられた狐の腕と、森。
その一場面のためにこの物語はあったのではないかと思わせられるほど、
印象に残りました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
その後タウンホールから地上にあがったところで、
忘れず今朝電話で取っておいてもらった、
「あとは野となれ山となれ」のチケット購入。
さらに、ずっと見たかった、
もりげき八時の芝居小屋 第128回八時の芝居小屋制作委員会プロデュース なんだりかんだり読みがたり Vol.19 『土曜の午後の落ち葉掃き~上原隆の短編集より~』
の、DVDも借りてきました。
すべてではないと思いますが、見逃したお芝居のDVDがあれば、
1週間借りることができるので有り難いです。
もりげき八時の芝居小屋 をはじめて見に行ったのは去年の6月でしたが、
以来このはちしばは見逃さないぞ~と思っていたのに、
この時は春休みの大移動旅行に出かけて見られず残念でした。。。
というわけで、
お芝居をみて、
お芝居のチケットを購入し、
お芝居のDVDを借りる、
という盛岡劇場ひとり三役、も変だが、
そんな午後でした。



