一条ゆかり、もりたじゅん、弓月光。
1967年に同期デビューした三人の45年。
対談はなく、ひとりひとりが高校、大学在学中にデビューしてから現在に至るまでの歩みを語りおろしています。
この三人の個性、漫画家としての生き方、個人としての生き方のバランスが絶妙で、
まるでオムニバス小説でも読んだような読後感を抱きました。
一条ゆかりの「デザイナー」(一条ゆかり25歳、わたしは11歳)はいまでもセリフのひとつひとつが蘇るほど印象的な作品だったので、
個人的に一条ゆかりが「デザイナー」をターニングポイントとして語っているのがうれしかった。
また、
陸奥A子を筆頭とするおとめちっく路線に、
その魅力が理解できなかった、とかたるもりたじゅんの正直さ。
もりたじゅんは本宮ひろ志夫人という立場でもあり、
多くのアシスタントとも関わってきたからか、
自分のマンガのことだけではなく、山岸凉子が編集部にけっして厚遇されてはいなかったことも、「アラベスク」を描く前の話も、
全体を包むような話もしていて、作風にあっている、と思いました。
もりたじゅんの絵もストーリーも、小学生だった私には大人っぽいな~という感じでしたが、
すきで読んでいました。一条ゆかりの大人っぽさともちがうんですが、
実際には一条ゆかり、弓月光と1つしか違わなかったんですね。
もりたじゅんが見た本宮ひろ志像は想像とは違っていたのですが、ほんとうにもりたじゅんはひとの本質を捉えるのがうまいなあと思いました。
弓月光もすきな漫画家でしたが、いちばんすきな作品が「エリート狂走曲」だったので、
作家本人がいちばんすきだと言ったのがやはりうれしかった。
あの主人公の哲也はまさしく弓月光だったんだなあと、むしろ、一条ゆかりが語っている弓月光像で思い当たったのでした。
一条ゆかりともりたじゅんの写真はみたことがあったのですが、
弓月光の写真ははじめてだったので、
三人の物語の最後に書斎に笑顔でたつ弓月光の写真があって、
思わず、
「はじめまして!」
と言いたくなりました。
現在、もりたじゅんは漫画家を引退し、夫・本宮ひろ志のサポートのほか、趣味を楽しんでいる生活、
一条ゆかりは漫画家としての一条ゆかりの奴隷だった自分を解放してあげているところ。
弓月光はマンガがすき、マンガを描き終わった瞬間がいちばん幸せでそれ以上の贅沢な時間はないんです、
と語っています。
全体の印象として、「仕事!」というインタビュー集も重ね合わせました。
少女漫画ファンのみならず、大人なら誰が読んでも響くところがある本だと思います。
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