見てきましたあ(・∀・)
私も実際にカンパーニュを発酵籠から出してクープを入れたり、
パンをオーブンにほいさっ、ていれているので(もちろん、巨大な杓子じゃなくてダンボールにオーブンペーパーですが)、
大泉洋さん演じる水縞くんがパンをこねているところが、見ていて気持ちよかった。
帰りのエレベーターで映画をみた40歳前後のカップルが、あー本屋さん行きたい、それかパン屋さんだな、
と言っていましたが、
私も数日ぶりにこねこねしたい(笑)。
絵本の世界なんだと思いました。
焼きたての湯気があがったパンをたべて、生きる希望を見つけるおばあさん、
焼きたてのりんごパンに蜂蜜をたっぷりかけてうっとりする常連客。
謎の人物でアコーディオンをいきなり弾いたりするのですが、
何度も出てくる焼きたてのおいしいパンに内心、
ちょっとぉー!
と思ってはその度に落ち着け落ち着け、これは童話なんだ、と。
パンは発酵食品です。焼きたてより、冷めてからの方が味が出てきます。
焙煎珈琲豆のお店でも、ローストしたての豆より、1、2日置いた方がいいと伺いました。
米も炊きたてより、ぬるくなったときが美味い。
と子供の頃から訴え続けていますが、出来たてウマー説にいつも負けています。
麺類や餅は茹でたて、搗きたが好きですが、
ものによって適温、食べごろはちがうんだあーーー。
カンパーニュ、二つ山の山食、バゲット。
ストーリーと共に出てくるパンがどれもこれもおいしそうで、見ていて気持ちよかった。
「恋するベーカリー」、タイトルにつられて見に行って、パンがパン オ ショコラ(チョコレートクロワッサン)ぐらいしか印象に残らなくて残念だった。
でもこの映画はパンが期待を裏切らない。
沖縄旅行をドタキャンされて北海道にきたデパートガール。
なにか吐き出したいものがある彼女にワインのともに勧めたドライトマトとフレッシュバジルのプレーンなピザ。
ドライトマトも薪を焚くオーブンで作って、摘みたてのバジルの葉っぱがつやつやしていて、気持ちいい。
おいしいパンに地元のワイン。
ドタキャンの彼について未練ったらしく愚痴ったり、同席していた若者にからんだりして、
その夜、自分のみっともなさをすべて吐き出し、
彼女は翌日から少しずつ変わっていきます。
近所の農家の夫婦。そのパラダイス的な野菜や果物を選んでいる場面もよかった。
北海道のSAで買ったゼブラ(紫に白の入り混じった皮)や白いナスが出てきたんですが、
ナスがエッグプラントと呼ばれるのは、白くて小さいナスからつけられたというエピソードを思い出しました。
その彼女の誕生日に焼いたココア生地との渦巻きパン、
クグロフにオレンジ色のきれいなロウソクを一本立てたバースディケーキ、
いやーよかったなあ。
大泉洋さんも原田知世さんも、大きな窓から月と湖がみえる、
マーニに溶け合うようでした。
両親が離婚して、頑なになってしまった女の子がお父さんと分け合って食べる、フォンデュ。
フランスパンのひとつで双子のパンですが、この場面によくあっていました。
吹雪の夜にやってきた老夫婦。どこかおっとりと上品な銀髪の女性と、思いつめた様子の男性。
パンがきらいな老婦人のために、水縞くんは隣の農家に車を走らせ、
りえさんにふたりを見ていて、と託します。いやな予感がしたのです。
果たしてふたりが吹雪の中を外に出ようとした時、
水縞くんが戻り、
月はうちの大きな窓からみえますよ、と大きな声で必死にとめます。
別れた両親の間で苦しむ少女と父親のエピソードでは周りからすすり泣きが漏れたのですが、
私が泣きそうになったのはここですね。
絶望に向かうひとを救う場面ではいつも泣きたくなります。
全然違うけど、「大奥」で綱吉が密かに死を覚悟した時に、
あなたは私がいなくなったら死ぬおつもりやから、私はここから下がりません、
と、逆転大奥ですから、大奥総取締役は男性なのですが、彼が必死に綱吉に生きていてほしいと語るんです。
水縞くんも必死で止めて、ふたりはマーニの温かい食卓につきます。
りえさんのポトフと陶器の鍋で炊いたごはん。
その時、老婦人が立ち上がり、きらいなはずの豆のパンに手を延ばし、
いままでのぼんやりした雰囲気が嘘のように生命力をみせてパンをもふもふとたべて、
あしたもこのパンをたべたい(死ぬのはやめたい)、
と傍の夫に言うんですね。食べる場面のむさぼるような演技はちょっとやりすぎな感じもしましたが、
この老夫婦の場面がいちばん心に残りました。
ふたりが滞在している間に一緒に焼いたツォップ。
元もとは葬儀で使われていたようですが、一緒にパンを作りながら、
水縞くんが旦那さんの方に、
コンパニオンとカンパニーについて、話をするんです。
あっ!
生活を変えた食べ物たち、
この本にも出てきたあれだ。
カンパニーとコンパニオンは、ラテン語のコム(ともに、とかいっしょに、の意味)と「パニス」(パン)の意味からはじまっている。
カンパニーがパンを分け合う意味なのは間違いない、パンにはお金という意味もあるのだから、
と本書にはあり、
水縞くんとりえさんが、良いことがあったらガラス瓶に小銭を入れていたことを重ねました。
語りての幼い少女の声は、最後に誰だったかわかるのですが、
大島弓子のいくつかのマンガを思い出せました。
淡い水色やベージュで描かれた絵本のような映画でした。
リアル人間の私はお客さんたちにパンを送る場面でも、
ありえねーーーっ、
と思いましたが、ええ、童話です。
大小様々な雑貨屋さん仕様のボックスのメッセージとともにそっと入れられたパンたち。
絵本の美しさです。
エンドロールまで手を抜かない可愛らしさで、
なかに江別製粉とよつ葉乳業があったのに感激だ。
(マニアックなので、そこに感激してしまう)
福音館書店の名前もあって、うれしい。
童話や絵本の世界を甘い、現実はそんなもんじゃない、
と思うひとには苦手な映画かもしれませんが、とにかく色彩がきれいで、パンが主役なのがいい。添え物じゃないんです。
そんな感想でした☆
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