どうしても嫌いな人 すーちゃんの決心 益田ミリ
幻冬舎 2010年
発行年月日をみたら8月25日でした。盛岡駅の
さわや書店で迷子の息子の手をむんずと
握りしめつつ買いました。
みなさんも「どうしても嫌いな人」と出逢ったことが
あるかと思います。
「すーちゃん」「結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日」
からすこしずつ時は経って、
すーちゃんはカフェの店長2年目になりました。
36歳。もっている資格調理師。趣味は料理。
店長としてのすーちゃんはアルバイトの女の子たちに
気持ちよくはたらいてもらおうと心を砕き、
くたくたになって帰宅し、
年下のいとこ・あかねちゃんに、こんなんじゃ出逢いなんてないでしょ、
と笑う生活です。
けれど半年前から、ただの疲れではなく、心を苦しくさせる人が
職場にあらわれたのでした。
向井さん。
「マキちゃん正社員にするって本当?」
と、すーちゃんが穏やかに尋ねると、
「あ~そうそう、おじさんに頼んでみるつもり」
としれっとして言う彼女は、この支店がいくつもある
らしい、カフェの社長の親戚。
物語のはじめから、つねに一言多いというか、
ひとの悪口(アルバイト、お客様を問わずつねに悪口をいうのが
癖になっているようです)ですーちゃんをうんざりさせてきたのでした。
向井さんも正社員ですが、店長はすーちゃんなのですから、
これは越権行為ですよね。
しかしすーちゃんがいちばん頭を抱えたのはそういうことじゃなくて、
ひとりのアルバイトをひいきにすることで職場の空気が悪くなってしまうということ。
ここは私にまかせて、と、マキちゃんと面談し、ほかのアルバイトの子たちとも
面談してから考えるね、とことを収めたすーちゃんに、
「これからマキちゃんと正社員になれなかった残念会」
とマキちゃんとふたりでどこかへ行く途中の向井さんがいい、すーちゃんが、
「そんな…」
と言いかけると、冗談冗談、と言って立ち去ります。
客商売なのに、これからは土日連休で休みにしてほしいといいだすチカちゃんにも、
向井さんが
「チカちゃん、土日休みにしたから」
と事後報告ですーちゃんに言います。この後始末もすーちゃんがやって、
そのあとチカちゃんと向井さんがべたべたするところを見て、
非常に不快な気持ちになるのでした。
この心理も非常によくわかりますよね。自分がきらいな人と仲良くするひとがいるのを
みると、もやもやするという…
すーちゃんは向井さんのいいところを考えようとしたり、
(でも嫌いなひとのいいところを考えること自体が、ものすごいストレスですぐに
やめてしまいます)
自分の気持ちを切り替えようと決意したり、
いろいろやってみるのですが…(つづく)