ユリイカ 2009年9月号 アルフォンス・ミュシャー没後70年記念特集
やはり自分の目でみた作品や画家のことは、
他人事ではありませぬ。
いや、他人は他人なんですが、
旅人・たかのてるこさんが自分が旅した国の地震ニュースに
胸が波立つというのと同じで、
実際にみた絵というのは、画集で見た絵とは根本的に違う気がします。
さて、ミュシャ展で私がふと思ったのは、ミュシャのあるタイプの画に、どうしたって
ウィーン分離派であるクリムトの絵が二重写しになって見える、ということ。
だれかその辺をかゆいところに手が届くように書いてくれているひとはいないかと
思っていたら、
千足伸行さんの「ミュシャとクリムト」という評論が目に入りました。
同時代に生きたふたりの共通する点は、時代全体を覆っていた装飾への意思であるとしながらも、
クリムトが生粋のウィーンっ子であったのにたいし、
ミュシャはスラブ民族としての血をつよく意識した作品が多くなっていき、
私も美術展でその年譜をみてギクッとしたのは、最晩年にナチスの尋問を受け、
それから亡くなっているということ。尋問のさなかに落命したわけではありませんが、
当時計画されたミュシャの国葬でさえ、ナチスの妨害にあって実現しなかった、という
事実を初めて知りました。
また、
小林頼子さんの「ミュシャとフェルメール」も興味深かったです。