「世界クッキー」 川上未映子 (文藝春秋)
川上未映子の文章は、小説とエッセイの間が
あまりないように感じます。
小説は面白いんだけど、エッセイはつまらない、という
タイプの作家もいるんだけど、それはなんの違いかと思うと、
やっぱり、文章にかかっている気がします。
川上さんは言葉の選び方がすごく丁寧。でありまた、
言葉について深く考えているひとだなあという感じがします。
芥川賞受賞の言葉は
子どもの頃、青いという字がちっとも青くないことに驚いた、
とはじまり、
「言葉とそれが指し示すものとのあいだに横たわる断絶のようなものに
いらいらするし、大変だし、それでもやっぱり何もかもがもうそれだけでいいと
思ってしまえるくらいにそれは時に鮮やかに発光するのだから、
言葉というものはたまらない。」
と、言葉への深い愛を告白し、
書く人読む人、そして書かれた文章のみっつが結ぼれる美しい場所へ
行きつくことへの決意で結ばれている。
ドラえもんに夢中でドラドラだった子ども時代について、甥っ子の言葉に就いて、
ヘルマン・ヘッセの「デミアン」、買い換えた携帯電話、スクーリングの思い出、
「竹くらべ」、太宰治、「個性」について、「選択」について…
ほんとうにエッセイ集のどこをとっても、その文章のひとつひとつが
川上未映子の文章以外ではお目にかかることのない、言葉の組み合わせであったり、
ものごとの見方なのでした。