順路はとくに決まっていなかったのですが、
入り口でチケットを買って、傘をビニール袋にいれると、そこはすでに
仏教彫刻が展示されているのでした。
ここでいちばんすきになったのは、
如来立像。白い石(白大理石)で作られた、ほかの仏像たちとくらべて
だいぶ背の高い如来なのですが、
その表情はあどけないというか、無垢というか。
中国北斉時代、6世紀といいますから、
日本の飛鳥時代でしょうか
あと、木造彩色の
「帝釈天立像」も良かった。こちらも堂々たる体躯の立像です。
さて、展示の目玉である、「燕子花図屏風」ですが、
なぜか金ぴかのイメージだったので、あら、思ったよりくすんでいるのね、
と最初はそんなことを思ってしまったのですが、
なんども近寄ったり離れりしているうちに、
花びらがなんともふくよかで、重量感さえ感じられるようになってしまいました。
葉の重なり方も単一ではなく、少しずつ違ってみえます。
印象的だったのは、
「夏秋渓流図屏風」。
こちらは多くの人が足を止めて目を見張っていました。
あまりにも鮮やか過ぎるのです。作者は鈴木基一。
酒井抱一の実質的な後継者、と、以前見た美術展の図録にはあり、
私が鈴木基一というと連想するのは、「水辺家鴨図屏風」Jの、
雅でありながらユーモラスな雰囲気の絵でしたが、
目が覚めるような水の青と緑、松の木にはアメーバーみたいなたぶん、
苔が生えているのですが、
思わず若冲かと思いました。が、もっともっと、現代の作品ではと疑いたくなるくらい、
思い切って鮮やかな、現実ではない、空想の中の渓流なのでした。
もう一枚いいな、と思ったのは、
「桜下蹴鞠図屏風」
花見の余興ででもあったのでしょうか、公達が蹴鞠にうち興じています。
絵のかなり上端に、蹴鞠が半分だけ見えているという、構図の大胆さ。
みんなが上を見上げて、蹴鞠の行方を追っているのでした。
というと、なんの変哲もない長閑な春の一日を描いた作品ですが、
右隻の黒い塊はなんだったのでしょう。作者不詳らしいこの作品は、重要美術品でした。
だれかあの黒い塊についてご存じの方がおいででしたら、
ぜひ教えてくださいませ。
あとは、特別ケースに入っていた、宝飾時計のコレクションになぜか釘付け。
四角い箱型の宝飾時計は、保存状態がものすごくよく、金色の刻をきざむに
ふさわしい、豪奢なものでした。
根津美術館をひとことでいうなら、
美意識の結晶、
でしょうか。
しかし、その美意識の高さがショップのグッズの価格にも反映されていたとは
想定外であった(笑)。
最後まで迷ったんだけど、実物の記憶を編集してしまいそうで、
図録は買いませんでした。燕子花のフォルダと燕子花の懐紙。
あの燕子花図屏風については、もうすこしよくいろんな文献を読んで
自分なりに理解を深めたいと思います。
(見てから考えるタイプの私…)