「第二章 初期作ー模索の時代」のなかで
いちばん印象に残っているのが、
「鶏図押絵貼屏風」でした。
二曲一双、それぞれ139.4×62.4㎝というのですから、
襖よりちょい小さめのサイズなのですが、
サイズを超越した、圧倒的な存在感がありました。
なかでも惹きつけられたのが、この魚麟をおもわせる
羽の雄鶏ですよ。
解説には、「オセロ」と表現してあり、将に!と
膝を叩いたわけです(笑)。
異形。異形の中の美。あるいは、美の中の異形。
そんなことを思ってしまいました。
この、垂直にそらしたポーズ。
おまえは鯱鉾か、と言いたくなるようですが、
これは空想のポーズではなく、
若冲が実際に庭に飼って観察と写生を続けるなかで
捕らえた一瞬です。
まえにテレビで(たぶん、日曜美術館)ほかの画について、
実際にこんなポーズをすることがあるのか、動物の解剖学を
専門にしているひとに聞いたら、
骨格的にありえるポーズだ、というのが証明されたのでした。
若冲の画は、写実的なようで幻想的で、想像で描いたのかと
思えば超リアルだったりして、
そこにめまいのようなおもしろさを感じます。