双幅の対照的なこと!
左の(上の)雄鶴の荒々しいタッチ。背景の松が、
禍々しささえ感じさせます。
唐突ですが、赤江瀑の小説に丹頂鶴フェチの美青年が
登場するものがあり、それを連想させます。
一方右の(下の)雌鶴は柔らかで春の陽光さえ感じさせます。
で、私はこれを最初、双鶴図だと思っていたのでしたが、
タイトルは
「松竹梅群鶴図」。
じつは、
近くにいた母娘づれの方が、
「あら、脚が三本あるみたいにみえるのね」
と突っ込みをいれて、
「ほんと。子供の鶴の脚なのね」
と話しあっていて、それであらためて気づいたんです。
でも、若冲のなかに、
三本脚の鶴への幻視を誘ってみようかな、という
ちゃめっけがあったのではないか、と考える方が楽しい。
ので、私の中ではそういうことになっています(笑)。
この鶴の絵から、それまでその見所がわからなかった水墨画が
非常に興味深く、いつまでも観ていたいものにがらりと変わってしまった
気がします。
水墨画すべてがすきになっているのかどうかは、
ほかの画家の水墨画展に行ってみないとわからないのですが、
若冲と言えばあの華やかな彩色の、というイメージがバッと
払われ、洒脱で自在で、のびやかで企みがあり、稚気がある若冲の
水墨画の世界が広がっていったのでした。