今回の展示の中で、
ひときわ注目を集めていた作品です。
カタログでは、中央部がぽっかり…ですが、
ここに巨大な鏡がうめこまれています。
「ウミロフ・ミラー」 油彩ですが、丸い鏡の周りの金色の薔薇の花と莟と葉っぱの
縁どりまで、じっくりみつめてしまいました。
ミュシャの絵について、いままで、明るい、透明感のある
少女マンガに影響を与えた絵、と思っていましたが、
そして、少女マンガに影響を与えてていたよなあ、
という感想は変わりませんが、
色彩が実際に見ると、印刷されたものとはかなり違っていて、
スモーキーな翳りを帯びた色合いなのでした。
これが私にはけっこう発見で。
あとで、相当ながく立ち読みをしつついてしまったショップで
「ユリイカ」のミュシャ特集を読むのですが、
山本容子さんがミュシャはポスターのイメージで誤解されていると思う、
というようなことをおっしゃっていて、
それも同感なのですが、いや、ポスターですら、実際にみると、
印刷では出ない微妙なニュアンスの陰影があって、イメージが変わりましたから(笑)。
私は画集の撮影がヘタです。すみません。
でも、図録をみていても、違う、こうじゃない、もっと
複雑なニュアンスがあって…ともどかしくなってくるくらいで…
これは、「ローマの火災を見つめるネロ」。
展示のいちばん最初がこちらで、実際はもっと赤黒い、
暗い色調の絵でした。
ミュシャの絵は、以前もまとめて見たことがあったのですが、
リトグラフだったので、油彩ははじめてでした。
こちらは、墨と水彩で描かれた、
戴冠式:「ドイツ史の諸場面とエピソード」挿絵(下絵)。
ミュシャといえば、あのパステル調の洗練されたアールヌーボーの、
花と星の女性の髪がアラベスク模様を描いている…
と思ったら大間違い!となにものかに頬をひっぱたかれたような、
ショックがありました。
ミュシャの墨をつかった絵ははじめてみましたが、色を使わなくても、
こんなに繊細な表現ができるんだ…と見入ってしまうばかり。
商業ポスターの一つですが、女性のこの、伏し目がちの視線と、
どこかに矜持を感じさせる口元から顎…
この絵はグスタフ・クリムトの女性たちを思わせるのですが、
いかがでしょうか。
ところで、この記事でブログが8000件に達しました。
あやうく、忘れて8001件目を書くところですが、いやまてよ、
とたち戻れてよかったです(笑)。