ノエル――フォア・ハンズ 1 | 菅原初代オフィシャルブログ「魔女菅原のブログ」

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これは以前、公募に出した短篇小説です。
            
――十四歳のあの頃、どんな顔を私はしていたのだろうか。
教室に一歩足を踏み入れたとたんに、回遊魚のような女子が私を取り囲む。
軽く戯れの言葉を放ってやればいい。


深海魚のような、くすんだ生徒のグループには、後腐れのない挨拶を。
一通りの遊泳のあと、私は期待どおりの、特権的話題をふるまうのだ。
喰らいつく魚の群れ。すり抜けること、うまく遣りおおせること。
なめらかな球体として。


子どもらしい無邪気さを、どれだけ損ねられるか、
誰かが実験をしているような小学校時代だった。
クラスメートたちの邪悪な目。その青白い炎。春の泥にまみれた手袋。


 十四歳の私は、授業中に教師に軽くさからって、
クラスメートの人気を克ちえるわざを習得した。
冗談に紛らわして人を軽く傷つけるテクニックも。


この匙加減を、文字通り血の滲むような努力で身につけた。
背中にいれられた雪のかたまり。ムカデの入った上靴。
焼却炉に放り込まれたランドセル。
吐き気を笑いに代えて、私は泳ぎつづけていた。


 時期はずれの転校生が、このクラスに入ると聞いた時、
厭な予感がした。中二の三学期も終わりに近づいている、
いまこの時期に転校してくる……かつての私と同じように。


 ……女の子なんだって、もの凄くきれいな子らしいよ。
 ……死体と噂の転校生は、美人と相場が決まってるからな。

 転校生の噂ばなしは誰もが安心して乗る権利をもつ、
スクールバスに似ている。乗ってさえいれば、仲間として認められるのだから。


 教室の戸が開いた瞬間、異様などよめきが起こった。