『10歳の放浪記』 上條さなえ 講談社
たしか、麒麟の田村さんの『ホームレス中学生』と同じころに出版されたと
思います。そしてたぶん、田村さんの本ほどには売れなかったと思う…
それまで、図書館の児童室で名前は見知っていたけれども、
手に取ったことはなかった上條さなえさんに興味をもったのは、
この『10歳の放浪記』が紹介されていた読売新聞の記事を読んでからでした。
父親が保証人になっていたために、借金とりに追われる生活がはじまり、
一家離散。小学生の早苗ちゃんは、お父さんと一緒に放浪します。
小学生のランドセルをうらやましく見送って、自分はいつ学校に戻れるのだろうか、
と、暗澹とする10歳の少女。
お父さんは次第にやる気を失っていきます。早苗ちゃんはパチンコ屋さんに入って、
落ちていた玉をあつめて、10歳のパチプロに…いえ、台の後ろで事情を知るお兄さんが
玉が出るように細工してくれていたのですが。
この一年間の放浪ののち、早苗ちゃんは養護施設に行くことになります。
ひとりで、お父さんやお母さん、お姉さんと別れて。可哀そうな早苗ちゃん!
その養護施設では壮絶な苛めが待っていたと、あとがきにありました。
早苗ちゃんは、作者・上條さなえさんの小学生の頃の姿です。
…タイトルが『ホームレス小学生』だったら、売れたんじゃないかなー
などと考える私は、汚れているでしょうか。