本をよむこども 4 | 菅原初代オフィシャルブログ「魔女菅原のブログ」

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グーちゃんがよいっしょっ、と、運んできた絵本の山。
そう、けっきょく菅たんは図書室で「50冊読破」をせざるを
えない羽目に陥っていた。


「菅たんは、どんどん読んで、3行感想をかいて。書名とか作者は
あたしも手伝うから」
グーちゃんは熱くなっているのであった。
そうして、熱くなっているグーちゃんを止めることは、誰にも出来ない。

「だって、Sなんかにあんなこと言わしておくわけ?
いいから、とにかくあたしのワガママだと思って、つきあってよ」
グーちゃんは、あたしに黙ってついてこい!と背中で語っていた。


こうして、50冊への道がはじまった。
グーちゃんは読みやすいだろうと思って、絵本ばっかり持ってくる。


ところが、菅たんは、本のない家に育ったので、「活字あたりの単価」
にシビアである。早い話が、誕生日やお正月、夏休み冬休み、クリスマス。
本をもらえそうな機会には、本をリクエストしてきたのだが、
絵本なんか、すぐに読めてしまうので、問題外だった。
絵本は、お金持ちの家の子が読む、非常にもったいないもの、だと菅たんは
信じていたんである。


(はーっ、ふつうの本が読みたい…)

絵本は、読みなれていない菅たんにとって、非常に読みづらい代物だったんである。
いつも、自分の好きな本をゆっくり選んでいたのに、今日は興味とか好みは無視して、
とにかく50冊読まなければならない。これも、想像以上の苦しさだった。


たまに、いくらか文字の多い物語があると、ひどくうれしかった。
積み上げられた本を、順に上から読んでいくので、あと、2冊読めば、
「字の多い本」だ、と思うと、それが本を読む原動力になっていた。
グーちゃんは菅たんが本を読んでいる間に、書名や作者名、出版社などを
だだだだだっ、と、ものすごいスピードで書いている。


グーちゃんのこういう、バイタリティというか、物事を進めていく力は
すごいと思う菅たんだった。今日中に50冊なんて、でも、無理。

それでも、気がつけば30冊ほどになっていた。


図書室閉館まで、どのくらいの時間があったのだろうか。

秋の夕日が図書室の後ろの窓からさし入ってきて、あたりがオレンジ色につつまれた。
図書室にいるのは、グーちゃんと菅たんだけだった。


「読んだよ。50冊」
最後の本のページを閉じると、ほうっとため息がでた。
「すごーい、すごいね!やっぱり菅たんは本をよむ天才だね!」
グーちゃんは飛び上がって喜んだ。


すごいすごい、と、菅たんを称賛するのだった。
「だって、絵本ばっかりだもん」
「でも、3行感想文もきちっと書いたじゃん。菅たんって、やっぱりすごい」

すごいのはグーちゃんの方だと思う菅たんだったが、それは言えなかった。
「読む前は無理だって思っていたし、べつにS君がなにを言っても、どうでも
いいや、と思っていたんだけど、今は、ちょっと違うことを考えてるよ」
「なになに、どんなこと?」


「なにごとも、やってみなければ分からないってことだよー」
と、菅たんは一呼吸おいて、
「あたし、実はグーちゃんがはりきるほど、50冊読んで賞状もらうのって、
そんなに興味なかったんだよね。

でも、やり遂げたら、すごい自信がついたんだよね。やればできるって。
あと、一人だったらできなかったと思うんだよね。」


「今日、よくしゃべるね。いつもそのくらいしゃべればいいのに」
「うん、なんかずっと黙って下を向いて本を読んでたから、反動」
「そっかーそうだよね」


二人はくすくす笑いながら、

階段をかけおりて、校庭に出た。
西の空は陽が完全に沈むまえの、明るい水色の空で、
夕日が隠れているせいで薔薇色にみえる雲がひろがっていた。(完)