三宅智子さんと私 第31回  | 菅原初代オフィシャルブログ「魔女菅原のブログ」

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「ない!」


バリのホテルに着いたのは、真夜中だった。

さらに、各自の部屋へと案内されて、ほっとしたのは、

確実に零時を回っていたと思う。


荷物を解いて、あしたの支度とバスタイム、洗濯もしないと。

でも、すこしでも眠っておかないと。


やることを頭の右にリストアップして、頭の左に生えた手で、

やった順に消していく。菅原はやらなきゃならないこと、で、

パンパンに膨れ上がってくると、そんなイメージを持つことがあった。


この夜も、一個ずつリストを消していたのだが。


あれ?


財布がない。


そんなばかな。

ええと。空港で両替をしたときは、あったはず。

少し多めに、と、2万円を両替したのだ。


空港からホテルに向かうバスの中で、

明日は8時ロビー集合、と言われたことや、

1000円が約80,000ルピア、とか、、

生水は絶対飲まないように、と言われたことなどが

蘇る。


だが。


どこで財布を?


空港で菅原はずっとバタバタしていた。

4歳の息子がとにかくせわしなくあちこち動き回るのである。

スーツケースのほかに、肩掛けカバンがひとつ、その肩掛けカバンに、

財布が入っていたはずなのに。


もしやスーツケースに入れて、そのことを忘れているのかと、

スーツケースもすべてひっくり返してみた。

スーツケースの、あらゆるファスナーをあけて、何度も何度も、

狂ったように確かめて、そして数刻。菅原は悟った。


(財布、失くしちゃった…)


子どもは長旅と空港で暴れたのが効いて、寝かしつけなくても、

風呂からあがるとすぐ、ぐったりと眠ってしまった。
気がつけば、もう午前3時を回っている。


だめだ。


いくら探したってないんだから、やるべきことを先にやらなきゃ。

菅原は、ホテルの、濃い花の香りのするシャボンで洗った下着やTシャツ、子どもの

服などを、外へ干しに出た。


広いバルコニーには、白いペンキ塗りの椅子がおいてあり、ベランダから外を見ると、

すでに白々と夜があけている。

熱帯らしい、大きな葉の木々が植えられているが、その木を駆け上がるのは、リスかと思ったら、

尾の長い、猿だった。南国らしい、鳥の啼き声もする。


ああ。

もう朝なんだ。一睡もできなかった…。

だめだ。一時間でも寝なきゃ。バスの中で気持ち悪くなる…


重い気持ちのまま、ベッドに倒れこむようにして、菅原は

僅かな眠りに入った。瞼の奥がチリチリするような不快な眠りだった。


7時。

1時間半は眠れたんだ。菅原は、まったく眠れなかったわけじゃない、

ということに、なんとか縋ろうと思った。


今日は「胃袋の休息日」と、予め云われていた。

街中の撮影や、海辺の撮影はあるから、と。


(どうしよう。子ども連れですでに迷惑をかけているのに、

財布を落とした、なんて。でも言わなきゃ、もっと大変なことになる…)


財布の中には、クレジットカードや保険証まで入っていたのだった。

悪用されているかもしれない。そしたら、財布に入っていた日本円、ルピア合わせて6万円
を失くした上に、もっと痛いことになってしまう。


朝食はバイキングだった。解放感のある、海辺の砂浜が続いているような食堂での朝食。

果物をふんだんにつかった、フレッシュジュースやスムージー、南国の、ふだんみたこともない果物。

ふっくらしたパンケーキ。ハムやソーセージもあるけれど、全体に果物や乳製品が多く、見ているだけで清々しい感じだった

朝の光をうけて、キラキラ輝いている白い皿。菅原は先に来ていた実桜ちゃんを認めた。


一緒に朝食を食べながら、菅原は実桜ちゃんがフォークとナイフをじつに綺麗に扱うのに、

一驚した。お箸より、フォークとナイフの方が上手に持てるなんて。


初めの撮影は、街中のちょっとゴタゴタしたところを、歩く。

バイクがサンダルか下駄みたいな感じで、気やすくあちこちに出現する。どう考えても交通事故になりそうな狭い場所も、

平気で二人乗りのバイクが通って行く。

ホテルでもそうだったが、街中のあらゆるところにも、石像があって、おそらく、神話の神々を

模したものなのだろう、その耳には、白い花が挿されているのだった。


それから、バスは海へむかった。


ところで、番組を見ている人は、

赤阪さんがいつ登場するのか、ずっと、待っているだろうと思われるが。

じつは赤阪さんは、成田ですでに一緒だったんである。


ディレクターの小口さんから、

「はい、あの方は赤阪さんじゃありませんよー。あの方は大阪岸和田の
おばちゃんですからねー」

という注意勧告が入る。


赤阪さんの登場シーンまで、

赤阪さんの存在を忘れていてくれ、登場のシーンでは、驚いてくれよ、という
メッセージなのである。


あらかじめもらった「元祖!大食い王決定戦 本選大会 ご案内」には、
「日除け対策として帽子」とあった。


また、「ご案内」には、

「海外に行った際に、泳ぐ可能性があるので水着or濡れても良い服装」とも、
注意書きがある。


そうですか。


「番組推薦:2名 未定」の、未定の人間だった菅原は、水着を用意したらツキがなくなる、
というゲン担ぎで、なんにも持ってきていない。

どころか、下着だって靴下だって、毎日洗わないとならないんだ。


まさか、「未定」がここまで来ちゃうとはなあ。

「9月1日は、勝負は無い胃袋休息日です。しかし、観光スポット巡りの撮影有り」


そうですか。

観光スポットですかー。


なにを聞いても見ても、失くした財布のことでどよんと沈んでいる菅原だった。
子どもは窓の外をキョロキョロ眺めては、はしゃいでいる。
海が近づいたのだ。白田さんと山本さんが、水着を買わないと、と言っているのが聞こえる。


(いーなあ。お金があって)


バスを降りて、少しだけ歩く。すぐに白い砂浜が見えてきた。
駆け出す白田さん、山本さん、泉さん。

菅原は子どもの手を握って、砂浜へ向かった。駆け出す元気はなかったが、
子どもにひさしぶりに海を見せられたのは、やはり嬉しかった。


はじめに、バナナボートの撮影。


子連れの菅原と、腰を痛めている曽根さんは、居残りで海を眺めていた。
実桜ちゃんの黄色いカーディガンが、ひらひらしている。


(いーなあ。財布がある人たちは)


…すべて財布。菅原はかなり気がおかしくなっていたようだ。

その時。

曽根さんが近づいてきた。
なんとなく、気まずい。財布とは関係なく。


実桜ちゃんと一緒にいて、曽根さんとはほとんど口を利いていないということもあったし、
納豆で勝った、ということもある。それ以上に、いつも主役をやっていた曽根さんが、
浜辺に残されていることが、気まずい理由だった。


つい、逃げる形になった。
だが子どもは曽根さんに寄っていってしまうのだ。そりゃそうでしょう。
テレビで見ている人気者のお姉さんだ。


4歳の子どもだから、もしかしたらタレントさんという認識はないかもしれないが、

子どもは自分に少しでも近い年齢の人に近づこうとする習性がある生物なのだ。

(あー、困ったなー。そっちに行くなよー)


とはいくらなんでも言えないから、菅原はただただ困惑していた。
寝不足で頭の回転がいつも以上にトロい。

「菅原さん」。
曽根さんが、切り出した…。(つづく)



あー。間に合わなかっただ。今日になっちゃった。しかも、まだ豚の丸焼きに至っていない。
とほほ。いつになったら。いつになったらー。

年内に、バリから帰りたい今日この頃。



とろ、なんとかならないか、考え考え日が暮れる
とろ、なんとかならないか、考え考え日が暮れる♪(「とろ」中島みゆき)


ではコメントよろしくお願いしますー