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そりゃあ、温泉ですよー。
海外旅行や観光地への旅行は、「観光」しなきゃ、という
気持ちになってしまって、くつろげない気がする。
とにかく、見栄でいく旅行はもう卒業だ。
というわけで、鄙びた温泉旅館。
雪はあってもなくてもいい。寒いのはかなわないけど、
旅から帰る時のことを考えると、あんまり暖かすぎるのもねえ。
温泉からあがると、古いマンガや、雑誌が置いてあるんだ。
けっして、最新号なんかじゃない方がいい。あー、懐かしー、
と、パラパラやって。ビン牛乳なんか飲んじゃう。
部屋には、テレビはないけど、コタツはあるんだ。
コタツに入って、もってきた文庫本を読む。
読んでいるうちに、眠くなって、そのまま眠って。
29日あたりから、その旅館に泊まっているんだが、
部屋にテレビがなくて、大広間で紅白を見るの。
なぜか、火ばちがあって、お餅とかアタリメなんか、
炙っちゃうんだ。
マヨネーズ、つける?とか、知らないもの同士で
まわしたりしてさ。
意気投合して、メールアドレス交換、なんてことにもならない。
ただ、ひとときの連帯があるだけの、あっさりした交わり。
小ぶりな蜜柑が、なぜか箱でおいてあったりして、
紅白が終わったら、
二つ、三つもって、部屋に戻る。
「よいお年を」と、小声で挨拶しあって。
そんな、地味な、けれども、気持ちはのびのびする旅がしたいなー。