三宅智子さんと私 第十二回 | 菅原初代オフィシャルブログ「魔女菅原のブログ」

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菅原は、まずキャベツとご飯から攻める作戦だった。

醤油とソースが滴り、しんなりしたキャベツ。


そうなのだ。


スタート前に、三宅さんが、


「菅原さん、ソースと醤油は、全部使っていいんですよ」

と、あらかじめキャベツにかけておくことを、勧めてくれたのだった。


記録更新が目的のこの勝負、できることはすべてやるつもりだったが、

醤油もすべてかけていいとは知らなかった。


ソース類を、チャレンジ中にかければ、その分時間をロスする。


のみならず、キャベツが醤油やソースの塩分によって、脱水され、

かさを減らし、しんなりとして食べやすくもなるのである。


ミヤケトモコ、さてはプロフェッショナルだな!!


と、菅原は「フーテンの寅さん」じみて、三宅さんを見やった。


ちなみに、寅さんは「お前、さてはインテリだな!!」と、義弟を見やるのである。


菅原は、なぜか寅さん映画に40歳を過ぎてからはまったのであった。


「上を見ればきりがない、下を見たら、後がない」。


この、寅さん(だと思うが)の名言を、菅原はのちに延々ぼやき続けるのだ。


だが、それはまだまだ先の話である……。


たっぷりかけられた醤油のおかげで、しんなりしたキャベツを載せて、

菅原はご飯をとにかく食べた。キャベツが半分に減るまでは、

カツは温存しておくつもりだった。


だが、その思いが強すぎたためか、開始後、おそらく30秒ほどの地点で、

菅原に異変が起こった。


ゴホッゴホッ。


キャベツの繊維が気管に入ってしまったのだった。


ヤバいな。


菅原は迷うことなく、お茶をざあっと飲み込んだ。


チャレンジを興味深げに眺めていた、ニヒルな常連客が、

あ、だめだこいつは、という目をしたのを、

菅原は見逃さなかった。


野郎!!


ただ噎せただけなのに、そんなに簡単に見くびってもらちゃあ、

困るんだよお客さん。


あたしを誰だと思ってるんだ!!


って、誰だとも思ってないに決まっているんだが、

大食いをやっているとやたら熱くなる菅原であった。

それは今も全然変わってません…。


菅原は、口の中で、ご飯でキャベツをコーティングしながら、

慎重に、だが、相当早く、ご飯とキャベツを進めた。


口からはみ出たキャベツが、汁を垂らす。

キャベツを噛みながら、ご飯を飲み下し、キャベツを押し込む。


唇の動きに舌が連動し、その動きを奥歯が待ち構えて、舌の奥の方が、

食道へ落とそうと、うねる。

おそらく、一秒足らずの一連の動きが、菅原にはコマ落としのように思えた。


もっと! もっと早く! もっと力強く!


と、まるで演奏記号がやたらめったらあるピアノ曲を、

阿修羅像が、6本の腕をふりまわしてガンガン弾いている、

菅原の心象風景は、そういうものだった。


やがて、菅原の目標タイムだった9分になった。


あと少しだ。

逸る気持ちと、さすがに衰えてきたスピード。

三宅さんのタイム更新は、もう間違いない。

9分台は…。

9分54秒。

菅原は、9分台が遠のいたことを知った。

だが、それは思っていたほど悔しいことでもなかった。


最後まできれいさっぱり食べるだけのことよ。


「ごちそうさまでした」。


箸を置くと、店主がにっこり笑って告げた。


「10分24秒」。


常連客らしい、例の、ちょっと癖のありそうな男性が、

拍手をしてくれながら、菅原に、

「おめでとう。やったね。実は最初、すぐにお茶を飲んだでしょう、

ああ、これは失敗するなって、思ったんだけどね。凄いね」

菅原は男性の率直さが、うれしかった。


そう、それを感じたからこそ、私は燃えたんです。

とは、率直からもっとも遠い菅原は言わない。

代わりに、その男性に、にっこり笑って、頭を下げた。


戦いは終わった。


菅原は賞金三万円と、心地よい満腹感を土産に、

東京駅を後にした。


改札まで送ってくれた三宅さんは、いつまでも、

大きく大きく、腕を振っていた。


三宅さんの記録を更新したことで、

菅原はプロフェッショナル・三宅智子を先達として、

大いに頼りにするようになるのだった…。


とん陣チャレンジからほどなくして、

三宅さんから、メールが届いた。

そのメールが菅原にもたらしたものは…(つづく)。



食べている時に感じていることを、文章にするのって、

どうしてこう難しいんでしょう。


次はもっと、効果的に描きたいものです。


見ててちょ!!


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