チェ・シウォン。取引先の御曹司。
会って来いと言われても、何を話せばいいのかわからない。
仕事の話はしなくていいと言う。指定された場所は、とあるホテルのバー。
「俺は先に帰る。お前はちゃんと仕事してこいよ」
「仕事、って」
長い人差し指が俺の唇をつつく。
「お前次第だ。くれぐれも先方の機嫌を損ねないようにな」
眩しいほどのイケメン。さっきは同席してなかった。
本当にこの人? 手を挙げ呼ばれたからそばに行っただけ。
「シム・チャンミンくんだろ? ここ、座って」
「・・・はい」
取って食われるかと思ったけどそうでもなかった。年も近いし思ったより話も弾む。
20代男子によくありがちな会話。今までの経歴とか、仕事のこと、ゲーム、友達の話。
そして。
「ユノくんから何か聞いてない?」
目つきが妙に妖しかったが。
「機嫌を損ねないようにと」
言えばシウォンさんが笑った。
「そっか、機嫌か」
グラスを持つ俺の手にそれとなく手を重ねて。
驚く俺を見て軽く頷く。