すべてを嫌いになれたら 96 | 沼から出られない

沼から出られない

元トンペン、現アニメ沼。ハイキュー!!、 東リベ、呪術、ウィンブレ他新規開拓中。
旦那22年秋に認知症診断。本人希望ありオス柴りゅーをお迎え、凶暴化により訓練出すも変わらず。23年春に胃がんステージⅣ診断、抗がん剤中断、緩和へ移行。24年4.22永眠

あのあとも、ユノの様子を伺いながら、家に連れて行って。
リリはどんどん馴染んでいった。ユノだけが、どうしても引け目を感じているようで。
それでも初めて来た日よりは自然に、ユノらしく過ごせていたと思う。

父さんとも二人で話ができるようになっていた。
目上の人に気に入られるタイプの、礼儀正しい人だから、心配はしてなかったけど。
なんだか不思議な気持ちだった。

そんな時に届いた、妹からの手紙。
母さんからもLINEが来て、ぜひ連れてきてほしいと言われた。
ユノは戸惑いつつも了承してくれた。
焦りすぎかとも思ったけど、僕は一日も早くユノと家族になりたかった。
臆することなく、ユノが僕の伴侶だと言うこと、僕がユノの伴侶だということを認められたくて。
何より、大きくて深い愛を持っているのに、心の奥底に寂しさを抱えているユノを。
僕の愛と、さらにもっと大きな愛で、包んであげたいから。

妹の結婚式は予定通り行われた。
ユノとリリは僕の隣で、親族として結婚式に参列している。
妹のご主人にも、家族としてあいさつをして。

その夜、ユノはうっすら頬を赤らめて上機嫌だった。
ご馳走を食べて、飲んで、歌って。家族との仲も一気に深まった。
「次はお前たちの番だな」
父さんが不意に、そう、言って。
僕とユノは驚いてその場で固まった。家族はみんな、笑顔で頷いてくれた。

立派な式なんかしなくていい。ただ本当に僕たちの門出を祝ってくれる人がいるなら。
ふたりきりで、教会で将来を誓った、あの瞬間を。
今度は本当に、家族の前で誓うことができるんだね、ユノ。
あなたとの、未来を。