旅行二日目。
朝寝坊三人が超早起きのAさんに起こされ お利口にも9時前に出立。
目指すは広隆寺、弥勒菩薩。
昨日一日もってくれたお天気も長くは続かず今日は朝から雨。訪ねる人も数えるほどの境内には新年の準備がされていた。
細く巡らした締め縄・若竹の手洗い桶・根付きの門松etcいかにも京都らしい。

そんな中、踏み石を掃く人がいた。落ち葉も終わって 特に掃かなければならない物は無いはずなのに・・・と思ってよく見ると なんと石の間に挟まった茶色い松葉を掃き出していらっしゃる。
一瞬、そんな目立たない小さな物を掃いても・・・と思ったが、本堂に向かって曲がった瞬間 その意味がわかって足が止まった。
一本の松葉も挟まない美しい石畳。凛として静か、やおろずの神々に捧げる一年の感謝が道を作っていたのだ。
思わず老齢とわかる青い雨カッパ姿を振り返えり、弥勒菩薩に導かれる人を見たと思った。
その弥勒菩薩は冬雨よりも冷え冷えとした霊宝殿に安置されていた。国宝第一号でお釈迦様に代わってすべての悩み、苦しみを救い 正しい道へと導くと言われる慈悲の仏は いつも私に美智子皇后を思い出させる。
手を合わせ、今年の感謝と来年の幸せと美智子皇后のご健康を祈った。
万葉の広隆寺を後に一路奈良へ向かう。
途中、Aさんが入社直ぐに開発を手掛けたS地を訪れた。私も何度か一緒に見学に来たが、Aさんが一生懸命プランニングしたS地は30年の時を経てしっかりと人の営み息づく街になっていた。
そして、今日最後に訪れたのは これも懐かしい秋篠寺。
Aさんと結納を交わし、婚約した日に二人で訪ねた秋篠寺はあの日と何一つ変わらない佇まいでひっそりとそこにあった。

雨空の下、参道の両側に広がる林覆うビロードのような苔が柔らかい緑の稜線を描いていた。

境内に入った私は真っ先に木蓮を探した。

あの日 白く膨らんだ蕾の下で婚約記念に頼んで撮ってもらった写真と同じ景色を追った。
木蓮は講堂と向かい合う庭の奥に立派に枝を張ってあった。29年間 どれだけ大切に手入れをされてきたかが見てとれる枝振りで、見事なまでに春待つ蕾をつけていた。
FとNに(有名な技芸天を見せてあげたい)と思っての再訪だったはずが、木蓮の木を前にした途端 涙がこみあげてきた。
私達の始まりの始まりがそこにあって この木蓮と一緒に大切に守ってくれた方がいてくれたことに気付いて胸がいっぱいになった。
嬉しかった。
幸せだった。
そして思えば私達の娘Fは来春あの日の私と同い年になる。

再会のS地、秋篠寺を後に冷たい雨を避け早目にホテルにチェックインし、お買い物大好きのFと私だけで奈良町・小町通りに繰り出した。
以前FがWithサロンのお茶菓子に買ってきてくれた和菓子があんまり可愛いかったので その小さなお店『樫舎(かしや)』を訪ねたり、
あちこち骨董屋さんを覗いたり、アルコールに弱い二人で奈良漬けの匂いにふらっときたり、稲穂を付けた鹿の土鈴を買ったりと師走の奈良を大いに楽しんだ。
From With






