どうしても どうしても逢いたい人がいて 土曜日、朝一番の飛行機で北海道に向かった。
飛行機苦手、方向音痴の私を心配(?)してFが付き添ってくれ、思わぬ母子旅行になったのも嬉しい。
友人とは夕方ホテルで待ち合わせの約束なので十分な時間を使って小樽に行った。
着いたら、運河観て 街並み楽しんで カフェに入って・・・と車窓の雪景色を眺めながらにわか仕立ての計画を立てた・・・が、


駅前に出るなり 顔も上げられない吹雪と雪国使用の靴でさえ油断出来ないアイスバーンの洗礼を受け、Fの先輩オススメの食堂までの道は東京人には氷爆祭りの会場としか思えない状態だった。
やっとたどり着いた「なると」という店はこんがりと黄金に揚がった鶏肉の匂いと中央市場のおじちゃん、おばちゃんの口々に披露しあう雪の凄さに満ちていた。
そんな喧騒の中、黙ってウィスキーを飲み ザンギ(←北海道では鶏の唐揚げのことをこう呼ぶ)を口に頬張っては お相手の女性にぼそりぼそりと語る男性がいた。
女性は奥様と呼ぶには若過ぎ、でも リリー フランキーを思わせる静かで温かい眼差しを持つ男性の好みは十分わかっている、といった風で不思議な優しさを持っていた。
そんなこんなの人達に囲まれ、気付くと何だか山田洋二監督の映画のロケーション現場にいるような「なると」だった。

吹雪の中 アイスバーンを歩いて運河や堺町通りに行く自信が無かったので 大通りでタクシーをつかまえ乗り込む。
あまりの吹雪に通りは観光客の「きゃ~前が見えない~!」「痛っ、もう怖くて歩けない~!!」の歓声だけが西部劇の砂ぼこりみたいに舞い上がる雪の中に響いていた。



これはもう観光は無理~!!と諦めて 私達も目当てに来たカフェ「北一ホール」に駆け込んだ。
数年前 時間が無くて入れなかった、ランプの北一硝子が経営する それは美しい灯火のカフェだ。
窓の無い店内は全て北一硝子の石油ランプで灯りがとられ、見上げる吹き抜けには何段ものランプが輪を描いて吊されている。
2テーブル離れると顔もはっきりしない程暗く私達お客も自ずと静かに語ることになる。
そして、その薄暗い店内にこもる石油ランプの匂いは 寒い朝 母がつけてくれたストーブの前で暖を取り合った弟の小さな肩を想いださせた。

札幌に戻る車窓に日本海を見た。思い立って渡道したとはいえ、さっきまでWithルームでレッスンしていた私がこんな景色を眺めている・・・つくづく人生ははっきりとした勇気で思う方に創っていけるものなんだな・・・と思った。

その「創る」の一歩を託した人は約束の夕方、言葉を涙に変えて私を迎えてくれた。

From With






