卒業生のT君とSちゃんの就活が終わった。
「俺が第一志望落ちるなんて」とあらゆるジャンルの企業を落ちるだけ落ちて人生初の挫折を嫌というほど味わい、
「今から面接」
「あと数時間内で結果がくる。怖い。」
「何をやりたいのか もうわからん!」と吐けるだけ弱音を吐き
「友達に裏切られた!悔しい・・・」と電話をよこしたT君は
結局、ゴールデンウィーク明けに3社内定にこぎつけた。
その内 1社はいわゆるブラック企業と言われる大量採用型で 直ぐに断りを入れなければならない。
ブラックだけに厳しいリアクション覚悟なのだが、ここまで来ても「(他を断ってこちらに来ます)って言うようにN子先生に言われたからこんなことになった(笑)」と不安を転化してきた。
それでも、とにもかくにもT君の就活は終わった。
Sちゃんは準備バッチリ、容姿、やる気、全てにおいて完璧でAさんに面接練習もしてもらって早目のスタートをしたが
やる気の強さ、(多分)癖のある表情・口調が仇になってつい先週まで連敗に次ぐ連敗。
「7割近くが最終面接で落ちてます。でも、前向きに頑張ります!」とばかりいうので、見ていられなくなった私は「今日、遅くなってもいいからいらっしゃい。」と自宅に呼ぶ。
Sちゃんは玄関から顔を出した私を見るなり顔をクチャクチャにして泣いた。
私も駆け寄って「あ~、Sちゃん、辛いでしょう。毎日、毎日しんどいね。苦しいね。可哀想に。可哀想に。」と言いながら両手を握って泣いた。
そして、ひとしきり話してから早速 これから受ける最終面接の再検討をした。やっぱり 気持ちが先走り 圧迫感があっるようだったので、言葉を置き換え、小さなことを丁寧に表現するようアドバイスした。
Sちゃんが来ている、というのでAさんが早目に帰って来た。突然の大雨で全身びしょ濡れになったAさんも「Sちゃん! 大丈夫? 待ってて、小父さん今着替えてくるから。」と声をかけた。
長期戦になりそうだったので、急いでお夕飯の準備をして、Aさんに大鍋をテーブルに運んでもらうとSちゃんは両手で顔を覆って声を上げて泣き出した。
「こんなにしてもらって、友達より親切にしてもらって、私、私・・・」と言っておいおい泣いた。
二三日前Sちゃんのお母さんは「Sは大丈夫って思ってるんです。あの子はやります。今までもそうだったから。だから、私は安心して旅行にも行っちゃうんです。」と言い、
最後に「今さら 妙に寄り添うのもきまりが悪いので・・・N子先生、お願いします。」と付け加えた。
余計にSちゃんの負のスパイラルを切ってあげたい、と思った。
未体験ゾーンを傷つき傷つき、もがきながら進んで行く子に限度を超える負担を掛けるのは私には出来ない。
過保護と言われようと、試練がそれを超える価値から大きく離れるときは手を差し伸べたいと思う。
傷んだカバンの汚れを取り、詰め込み過ぎた荷物を整理して、要不要を見極め、リセットした・・・
あれから1週間。Sちゃんからは何の連絡もないまま過ぎた。Aさんも 毎日 「まだ連絡入んない?」とメールをよこす。
そんな今日、レッスン前に携帯が鳴った。Sちゃんからだった。
「N子先生、
本日、○○行のCS職から内々定頂きました!!今まで励まして下さってありがとうございました!
拘束はありますが、今残ってる□百貨店、◇コミュニティ、○銀行、△社の結果を待って終わりたいと思います。
N子先生、本当に本当にありがとうございました!
先生…この間のご飯すごく美味しかったので、また誘ってくださいっ!(笑)」
直ぐに電話を掛けた。
Sちゃんは乗っていた電車を降りて掛けなおしてくれた。
二人で黙って泣いた。
携帯を挟んで黙って泣いた。
夕方、お母さんが私用の帰りと言って立ち寄りメロンを下さった。
両手を取って「おめでとう!おめでとう!」と言う私に「ありがとうございます。Sの心の寄るべになって下さって・・・。ご相談に伺った日からSの顔が違ってました。本当に・・・。嬉しいです。」と言って肩を振るわせた。
T君とSちゃん、
今年も私の大切な生徒達は 冷たい氷河期の荒波をバシャッ!バシャッ!とかき分けて、
力強くかき分けて
それぞれの岸辺にたどり着いた。
良し!!!!!
From With
PS
Sちゃんのことで嬉し涙を流して教室に戻ったら
5年生の生徒達が心配そうに私を見た。
思わず
「あなた達の先輩がね、会社のテスト沢山不合格だったんだけど、さっき合格したって連絡あったの!!! 凄いでしょ!!!
今日はS先輩が合格した日だから、今日来てるあなた達はラッキーよ~~!!
きっと最強の運もらえるよ~~!!」と言ったら
「やり~!!」「まじっ!?凄いんだけど!!」と両手を上げておおはしゃぎ。
A君など「俺、明日 算数のテストだから 運 明日までとっとこっ!!」と言いながら辺りの空気をせっせとせっせとカバンに入れる真似をした。
無邪気にはしゃぐ子供達を見ながら
ふと、いつか
この子達が超える海を思った私だった。
