実家での法事を終え
今、新幹線にいる。
両親、弟夫婦、叔父叔母達、従妹が集まって祖母を偲んだ。
母が数ヵ月前から段取りした仏前の粗供養品、会席膳とお茶席の準備が整ったところに 私が畑から摘んだ花梨と菊で出迎え花を生けた。

旧家はちょっとした法事でも何かとしきたりがあって難しいが、東京に嫁した私には その一つ一つが美しく思えた。
が、笑ってしまったのは床の間に掛けたお軸。筆で『南無阿弥陀仏』と書いたものだが、何となく人肌がする。ちょっと歪んでいるような、笑っているような字で表装も軽やかだ。
不思議に思って床の間係の父を見たら、なんと「わかるかっ。せや、お父ちゃんが書いたんや。」と・・・。この、掛け軸を自分で書いて作ってしまうという発想についていけず、思わず「あ、あっそう・・・。うん、まぁ、そのぉ、お婆ちゃんも喜んでるわよ。」と応えた。

御住職様の艶のあるテノールで奏でられるお経が仏間ならずも祖母が愛した家中に中庭に裏庭に畑に流れ約束通りに祖母を迎えることが出来た。


セレモニーが終わると いつもの仲良し親戚の談笑が始まる。
T叔母は若い頃から美容には目が無く、最近SK2に変えたら調子がいい、と言い それに義姉の母が50年の呼吸で「わかるわぁ~Tちゃん。やっぱり艶がちゃいますなっ!」ときっちり押さえる。
叔母も叔母で「いやぁ、ありがとう。せやけど、お姉さんは何にもせんかて綺麗やから~!」と貫禄の受け答え。
次に手芸の得意なC叔母が「N子ちゃん、クリスマスも近いから生徒さんらにあげて~。」と赤いナプキンと白いフェルトで作ったサンタクロースのお人形をどっさり(ホントにどっさり)紙袋から出した。
そして、続けとばかりに父もパンパンに張った袋を持って来て「N子~、Hちゃん(父の友人)がなぁ、N子ちゃん帰って来るんやろ~。これ持って帰ってもろてや~言うて届けてくれたんや。」と、H小父さんの染色会社で染めた たまらなく(ホントにたまらなく)綺麗な日本手拭いと それで作った ピカピカの紐を通した巾着袋を見せてくれた。
それから、母がガラリと障子を開け、「N子ちゃん!!見てみなさいや!!」と指差す。(今度は何、何、何!?)と その指の先を辿ると天を突いて咲き誇る皇帝ダリアがあった。
「あのダリア、毎日、毎日、(N子ちゃん帰って来るまで咲いててや~!!咲いててや~!!)言うてお父さんと二人で手ぇ合わせてましたんや。二日程前から最初に咲いたんがハラハラ散り始めて・・・せやけど、お父さんがな、(花びらも掃かんとおいとけ)言うのんよ。そしたら、まぁ、ようもってくれてぇ。N子ちゃん、綺麗ですやろ~~!」と、みんなのオオトリとばかりに演歌歌手さながらに披露してくれた。

翌日である今日は早朝から弟夫婦が奈良、長谷寺に紅葉狩りに連れていってくれ京都の名所に勝るとも劣らない見事な紅葉を堪能した。
そして、道中、子供達の話をし、両親の今後の話をし、いつものように私は「夫婦漫才だけど、呆れながら 宜しくね。」と頼んだ。

今、名古屋を過ぎて、気持ちは東京モードに入りつつある。
でも、窓に映る私は 大笑いをして皆で写真に収まったN子ちゃんの顔をしている。
そう思っていたら父からメールが入った。
「いまどこですか H市3どの地震がありなした かどくに連絡とつてくざさい N子はおついて 行動してくざさい」
(落ち着かなくちゃいけないのは お父さん あなた・・・なのよ・・・)
きっと、母と二人で大騒ぎしてメールをよこしたのだろう。
せっかく新幹線を降りたら東京N子さんに戻って・・・と思っていたのに、やっぱりどこにいてもN子ちゃんはN子ちゃんなのだ、と「東京は無事」のメールを打ちながら塩っぱいものを飲み込んだ私である。

(これも父の イ・タ・ズ・ラ・・・・・)
From With


