魔女とレヴィ 第2話 霜が降りる頃に
暴走した妖精が叫び、黒く歪んだ翼を広げようとした瞬間、
レヴィの風がそれを包み、静かに鎮めた。
やがて香の煙が揺れ、静寂が戻る。
片膝をついたレヴィは、荒い息を吐きながら拳を握った。
体内で渦巻く黒の残滓――それを押し殺すように、歯を食いしばる。
「……っ、くそ……。」
「それはあなたの業。――その苦痛は避けられないわ。」
高見から響く女の声。
シンシアが、杖を手に、優雅に階段を下りてきた。
その瞳には怒りも焦りもない。
ただ、“主”としての確信と、冷ややかな誇りだけが宿っている。
「下級の制御失敗なんてよくあること。
けれど――あなたがいる限り、この会は乱れない。誇りなさい、レヴィ。」
レヴィはゆっくりと立ち上がり、静かに視線を合わせた。
「誇り……? そんなもの、とっくに捨てた。」
シンシアは一歩、彼に近づく。
「いいえ。あなたは“私の”妖精。――当然でしょう?」
紅い唇がかすかに笑う。
その一言が、胸の奥に深く刺さった。
……心の奥で、別の声が微かに響く。
――“レヴィ、風が止んだわね。”
目を閉じる。
夜会のざわめきが遠のき、代わりに浮かぶのは――あの庭の光景。
月明かりに透ける銀色の髪。
ハーブティーの香。
指先に残る、やわらかな温もり。
その幻を、痛みとともに振り払う。
――妖精は、過去に縛られてはいけない。
けれど、風は嘘をつけなかった。
レヴィの指先が、微かに震えていた。
黒霧が晴れた広間には、重い沈黙が落ちていた。
暴走した下級妖精は床に膝をつき、怯えたように震えている。
周囲の魔女たちは息を呑み、誰ひとりとして近づこうとはしなかった。
レヴィはゆっくりと歩み寄る。
膝をつく小さな妖精が、恐怖に顔を上げた。
「……レ、レヴィ様……っ」
その声にも、彼は眉ひとつ動かさない。
代わりに掌をひらりと掲げると、そこに青白い光が集まり、
小さな石が現れた。表面には淡く輝くルーンが刻まれている。
“心を乱すな”
「これを持て。」
レヴィは冷ややかに言い、妖精の掌に石を置いた。
「肌身離すな。それがあれば、闇は触れない。」
「で、でも……許されていい訳が!」
震える声。
レヴィはわずかに視線を落とし、低く告げた。
「――風の加護だ。忘れるな。」
妖精は唇を噛み、深く頭を下げる。
その瞬間、ルーンの石が柔らかく脈打ち、
濁っていた瞳に、かすかな光が戻った。
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